12. 謎能力増える
「それよりサミアンにやられた冒険者は無事?」
「クリチュたま。との言い方はひとぎきがわるいでちゅ!」
クリスは冒険者に近づくと、首に触れ脈を確認した。
「あ、大丈夫、生きてる」
「んっ、うん」
クリスが触れたことが刺激になったのか、冒険者は目を覚まし、キョロキョロと辺りを見回す。
グランドバジリスクの亡骸を見つけると、命の危機を脱したことを理解したのか「ホッ」と胸を撫で下ろした。
だが「ハッ」と何かを思い出すと、立ち上がり、慌ててグランドバジリスクへと駆け寄った。
「仲間がっ!! 丸飲みされたからまだ生きてるかもしれないっ」
グランドバジリスクは、毒を持つ魔物だ。仲間を思う気持ちはわかるが、生存は絶望的に思えた。
だが、それを聞いたガインは、グランドバジリスクの体を上から下へと確認すると、真ん中辺りをめがけて横一閃に切り裂いた。
本来その鱗は硬く、簡単に切れるような代物ではないのだが、ガインはいとも簡単に冒険者を救いだした。
グランドバジリスクの腹から流れ出てきた冒険者の肌は、火傷のように爛れ、服も溶けている。
とりあえず、あの消化液をなんとかせねば。
クリスは、サミアンのリュックから、大量の水を取り出し、全身に振りかけた。
(でもこのままじゃ……)
仲間の冒険者がポーションを飲ませる。だが、毒牙に触れたのか、あまり効き目がないようだ。
みんなが諦めるしかないと思ったその時、トコトコとサミアンがやってきて、爛れた肌に前足をのせた。
瀕死の冒険者は光を帯び、みるみる内に肌が再生されてゆく。
解毒までされたのか、健康な肌色に変わり、挙げ句の果てには意識を取り戻した。
その場にいた全員が唖然として、言葉を失ったが、サミアンは、それが特別なことではないかのように、冒険者に声をかけた。
「ふぅ、うんこになる前でよかったでちゅ」
(えっ!? 生還者にかける言葉それっ!?)
「……はい。ありがとうございます」
(えっ!? あなたもそれでいいのっ!?)
色々ありえないことが起こっているが、クリスは細かいことが気になるタイプだ。頭の中で問いただせずにはいられない。
だが目の前には抱き合って喜ぶ2人の冒険者がいる。
細かいことは置いといて、2人の命を救えたことを、素直に喜ぼうと気持ちを切り替えた。
それより、サミアンの治癒魔法だ。あの状態から復活させるのは、上級魔道師でも難しいのではないだろうか?
サミアンを助けた時、翌日傷が癒えていたのは、この力のおかげだろう。
(謎能力が増えていく...…)
目的地が逆方向の2人と別れると、3人になった。
そして、いつの間にかサミアンがガインに懐き、抱っこされて運ばれている。
(しかも熟睡してるし!)
「あの、ガインさん?」
「ガインでいい」
声をかけると、突然呼び捨てを許可される。
(親しみやすいキャラじゃないのに...…)
「じゃあガイン。なんで同行する気になった?」
クリスはめんどくさいので、丁寧語もやめた。
ガインは、それを全く気にする様子もなく答える。
「おまえ達といれば『白狼』を見つけられるかもしれないからだ」
「『おまえ』じゃない『クリス』だ。『白狼』ってなんだ? ガインの腕で眠っている白いソイツは、自分を『狼』だと言っているが」
「たしかに、白狼のような能力を持っているが、これは狼じゃない。狼の子が、こんなに丸いわけがない。それにおれが探しているのは成獣の白狼だ」
ガインは、真剣な顔でそう言った。ギルドで話していた時から感じていたが、率直すぎて、無自覚でデリカシーが足りないタイプなのかもしれない……
「で、この痣のことは知ってるの? どうやったら消える?」
「すまない。それはわからない。ただ、伝承に聞くものに似ているというだけで、おれ自身、本物の痣を見たことはない」
(えっ? そうなの? 意外と使えない)
クリスはガインが痣について知っていることを期待していた。
「この痣、大きくなったり、小さくなったりするんだ」
「そうか」
「大きくなりすぎたら、全身肉球みたくなるのかな?」
「そんな事例は聞いたことないが、……ないとは言えない」
(そこは「ない」と言いきるところだぞ!)
ブクマ、評価ありがとうございます。
はげみになります!




