11. グランドバジリスク
「クリチュたま。まだひとのあちおとが聞こえまちゅ」
クリスの耳には何も聞こえない。だが、サミアンは三角の耳をピンと立てると、正確な位置を探るように、ピクピクと動かした。
「こっちでちゅ!! クリチュたま!!」
(えっ!?)
サミアンの安全を考えて慎重に行動しようと思っていたクリスは、慌ててサミアンの後を追った。
生きている者を助けることはやぶさかではないが、相手にもよる。Bランクのソロ冒険者には、できることとできないことがあるのだ。
クリスの耳にも、騒音が届く距離まで来ると、大型の魔獣の姿が確認できた。
(なっ、グランドバジリスク!!)
グランドバジリスクは、邪眼と毒牙をあわせ持つAランクの魔物だ。蛇のように長い体は8メートルにもなる。
今にも喰いつかれそうな冒険者に、サミアンは体当たりをして、それを阻止した。
小さなサミアンだが、動きは速い。冒険者は、何が起こったのかわからないまま吹っ飛び、その場で気絶したように見えた。
グランドバジリスクは、捕食対象をサミアンに変え、襲いかかる。
「サミアン!!」
クリスは、2本の矢をつがえ、弓を引いた。
(当たってくれっ!)
シュンと音を放ち、クリスの矢が飛んでいく。
矢は、見事にグランドバジリスクの両目を射た。
(むしろ、目くらいしか矢が通らないっつーの!)
グランドバジリスクは、その場で暴れだす。巨体を揺らし、周囲の岩を砕いていく。
目標を失っているようだが、このままでは、近くにいる冒険者とサミアンが危険だ。
(どうしよう。短剣と弓では、あの固い体を貫けないっ!)
それでもサミアンを救おうと、走り出したその時、クリスの横を黒い影が通りすぎた。
ザンッ!!というあまり聞いたことがない音がしたかと思うと、グランドバジリスクの首が滑り落ちた。
首を失った巨体から大量の血を吹きだし、ゆっくりと倒れていく。
そしてその横には、大剣を手にしたガインが立っていた。
(なっ、Aランクの魔物を一撃!?)
クリスは大都市のレイドに参加し、他のSランク冒険者と行動を共にしたことがあるが、ここまで見事な討伐は見たことがなかった。
「ケガはないか?」
ガインがサミアンを抱き上げる。
(なんか宙吊りでプランプランしてるけど……)
「ガインたま!! かっこよかったでちゅ!!」
サミアンが興奮して余計プランプラン揺れているが、ガインはそんなサミアンを珍しい物でも見るような目で眺めている。
(なんだろう? この微妙に噛み合っていないような空気感……)
ガインはクリスの視線に気がつき、振り向くと「邪眼を潰してくれて助かった。いい腕だ」とクリスを褒めた。
クリスは、自分の頬が熱くなるのを感じた。
格上の冒険者の言葉だからだろうか?
「クリチュたま。たちゅかりまちた。いいうででちゅ」
「あ、うん」
(同じ事言ってるけど、なんか全然重みが違う)




