第一話 今までとこれから
この話は連載した灯る炎の第一話になります。
深夜の東京の小さな会社に2つ明かりが付いている。
もう、日付が変わっている、これじゃあ終点が無いな。
今日も会社泊まりか。嫌だな。いや、嫌ではないな。
なぜなら、それは俺だけじゃないからだ。
俺と一緒に残業をしている紫木姫乃も同じだ。
今日もこいつと居酒屋に行って、会社泊まりだ。
「調子はどうですかぁ?」
少し声が裏返ってしまった。恥ずかしい
「そうね、やっと今終わったところよ。」
この言いようは、もうとっくの前に終わっていた言いようだな。
「それなら帰ったら先帰っても良かったのに」
「それじゃあ、あなたが1人で帰ることになるじゃない」
姫乃はいつもこうだ、俺が残業の時はいつも俺の事をたすけてくれる。
が、優秀な姫乃は自分の仕事はもうとっくにおわっているのだ。
俺、夏目順と紫木姫乃は、小学校からの仲で家も近く、なぜか、俺と同時に東京に上京してきた。
昔から家が厳しく、いつも窮屈そうだったが、東京に来てからは何かが吹っ切れたようで、いつも楽しそうだ。
そんな姫乃を見てて俺も楽しい。
俺たちは会社から出て、真っ直ぐ居酒屋へ向かった。
途中の道で上司の悪口を死ぬほど言ってきた。
居酒屋は深夜とは思えないほど以外に人が多かった。
姫乃はお家柄、礼儀正しく食べる姿勢もとても綺麗だ。
俺たちはまた嫌な上司の話をしたり、高校生時代の話なんかもした。
「あの時は姫乃が先輩後輩関係なく、みんなから告白されていたな。一日に10人から告白されていた時もあったっけ?」
俺も少しは告白されていたが、なぜか全員1週間かそこらで、向こうから別れようと言われていた。
しかし、その女の子全員が少し怯えていたのを覚えている。
「そうだった?私は男の人は全員芋にしか見えないから。もちろん、順は入ってないよ!」
慌てて付け加えたように言った。
長くて、黒い髪がフワッと揺れた。
「わかってるよ。じゃなきゃ、俺とこうやって飲むなんて事しないだろ?」
なんてかっこいい男ムーブだろう、これでメロメロに、、、、なんてならないか。
「そういうことじゃなくて、、、、」
姫乃がモゴモゴと言った。
「?」
「もういい!飲も!?」
そう言ってお酒の入ったグラスを突き出してきた。
「そうだな。」
カーンと音をたてて、乾杯した。
そこから、夜が明けるまで飲み明かした。
俺はベロベロに酔っぱらっていたが、この後からまた仕事がある。
飲んでいた事がバレないよう、ブレスケアを飲んだり、トイレで思いっきり吐いたりして全て流したが、姫乃は酒豪なためこんなもんじゃ酔わない。
そんな、会社への帰り道。
外は夜が明けていて朝日で輝いていた。
「あー、この後からまた仕事かー。」
「しょうがないよ、まだ仕事全然終わってないんだもん。」
「それになんでうちはまだ、紙なんだよ!ペーパーレスにしろよな!?」
「それ、さっきも飲みながら言ってたよ?」
「まじか、もう認知症に入ったかなー。」
冗談交じりにそういった。
「私たちまだ、24だよ?」
懐かしいなこんなやり取り高校生の時もしてたっけ。
「もう1回高校生に戻りたいな。」
「そうだねー、、、、、」
「私は高校生に戻らなくていいから青春したいなぁ」
交差点の信号が赤になって止まった。
家が厳しすぎて、姫乃は部活も遊びもテレビでさえ、使えなかった。
が、唯一あったのが、連絡用のスマホだけだった。
それで俺たちは話せてた。
「そっか、でもまだ俺たちは24だ。楽しいことはこれからいっぱいできる。
だから、元気だせって!」
「ありがとう。ちょっと元気出たよ」
俺ができるのは今まで辛かった事を思い出させることじゃなく、これからの楽しい新しい事を考えてもらうことしかできない。
「まぁ!また、今度に見に行こう。」
「そうね、楽しかったし。私はまだまだ飲み足りないわ」
そうそう、紫木姫乃はこうでないと!
「またいつか行ける日があったら行こうね!」
「ああ、また行こう!」
交差点が赤になった。
「さぁいこ!」
そう言った瞬間だった。居眠り運転のトラックが姫乃目掛けて突っ込んできた。
「姫乃!」
俺はとっさに姫乃を突き飛ばした。
俺は車に引かれた。
意識が朦朧としていて、姫乃が見えない。
姫乃は、、、どうなった、、、俺はまだ、、、死ねない、、、姫乃と飲みに、、、いか、、ない、、と、、、。
俺の意識はそこで途切れた。




