ケモノとバケモノ6
話は少しだけ遡る。
1匹目の獣に肩を喰いちぎられる姿を見た時、ピエリスは加勢するべきかと剣に手を伸ばす。
しかし、ヴィルトが大罪系スキルを使用すると、そんな気は消え失せる。
普段のふざけた様子からは想像できない姿、いや、およそ人の戦い方にも見えなかった。
「なッ!?」
ピエリスは驚き、ユーリオンは悲痛そうな面持ちで静かに見守る。
「……なんなんですか、アレは? モンスターよりも、よほどバケモノじゃないですか」
「EXスキルで、大罪系スキル〝憤怒〟
限界を超える程に怒りを感じた場合に使用可能となり、その相手を殺せるだけの〝力〟を得る。
腕力や脚力といった身体能力はもちろん、魔力や回復力なんかも本人の資質や限界を超えて上がる。
理論上はレベル1でも、レベル100を殺す事だって可能なはずだよ」
ピエリスは、『有り得ない』の言葉が喉元まで出かかったが、目の前の光景を見て言えなくなる。
「レベル100でも…」
「あくまでも、殺すスキルじゃなくて、殺せるようになる為の力を得るスキルだけどね」
「それでも、かなり有用なスキルですよね?」
「そう、かもしれないけど、代償だってある」
「生命…寿命ですか」
ヴィルトの詠唱から、ある程度は察したのだろう。
「うん、不足している分だけ、生命を燃やす。
それに理性を無くして狂暴化するから、周囲の被害を考えたりできない。
対象に逃げられても、自分の意思では解除できず、落ち着くまで暴れるしかない」
2人が話している間に、1匹目の獣が死ぬ。
街を壊して住人も殺した敵ではあったが、その死に様には、2人とも同情してしまう。
2匹が同時に襲い掛かっても、ヴィルトが圧倒的だった。
逃げるのを邪魔したくらいで、ヴィルトの宣言通り、1人で終わらせる結果となった。
血や肉の欠片、かつて生物であっただろう物が散乱するコロシアム内。
荒れ狂っていたヴィルトの身体から、水蒸気のような煙が天に昇っていく。
すると、筋肉が膨れ上がり、熱気で赤くなっていたのが、徐々に元の姿へと戻っていく。
疲れ果てたのか、意識が朦朧としたまま、前のめりに倒れる。
心配したユーリオンが、駆けつけようとするのをピエリスが押さえる。
「待ってください、まだ危険かもしれません」
「でも」
「俺が確認してきます」
もう、スキルは解除されているように見えるが、念の為、ゆっくりと近づいて行く。
「おい、意識はあるか?」
「………」
意識が無いのか、喋る気力が無いのか、うつ伏せ状態では、判断に困る。
(……もしも、あの力をユーリオン様に使われたなら……あまりにも危険だ。
例え、嫌悪されようと、暇を出される事になろうと、ここで殺すべき…か)
1人で戦ってくれた事で、ユーリオンを危険な目に逢わさずに済んだ事に対する感謝。
そんな相手が弱っている時を狙おうとする事に対する自己嫌悪。
ピエリスの中で、様々な感情がせめぎ合い、思考がぐちゃぐちゃになっていく。
(……いや、やめよう。
そんな事をしてもユーリオン様は喜ばないし、悲しむだけだ。
強くなろう、暴走した此奴からも護れるよう)
「ユーリオン様、ヴィルトは気を失っているようです」
「わかった。重いだろうから、僕が土魔法で移動させるよ」
降りて来たユーリオンが、ヴィルトを比較的汚れてない方まで運び、休ませる。
その間に、ピエリスが討伐の証となるような部位を、3匹分集める。
風魔法で臭いを出来るだけ遠ざけつつ、ヴィルトが目覚めるのを待つのだった。
賞の結果って、自分で見に行かないと分からない事を知りました。
試しに1次審査を見てみたら、名前が載ってました。
ブクマや評価を付けて総評価を上げてくれている皆様のおかげですね。
ありがとうございます!




