できる事、やるべき事
昨日のピザは、大好評で終わった。
母様がピザ窯を残して良いと言ってくれたので、今度改良したい。
全員で食べる量を考えると、やっぱり今のままでは少し小さい。
もっと一度に焼ける量を増やせるようにしよう。
後2日でここを離れ、再びフェニックス領へと向かう。
前回の顔見せの時と違い、しばらくは向こうで暮らす事になる。
本格的に領主として働くのは、もっと先、数年後の予定だった。
だけど、実際に訪れて領民に係わったり、ドルガさん達を領地へと勧誘した。
貴族や領主としての振る舞いなど、まだまだ学ぶべき段階ではある。
それでも今の自分にできる事があるなら、やるべきだと思ったのだ。
母様には反対されるかもと思っていたが、意外にもすんなり許可をもらえた。
前回が特例であり、父様に嫁いでいる母様は本来ここから離れられない。
なので、母様とはしばらくの間、離れて暮らす事になる。
正直に言ってしまうと少し寂しいし、何かあったらと母様の事が心配ではある。
王都とフェニックス領は離れているので、陸路で行けば数日はかかる。
いざという時には、ニクスにお願いして飛んで駆けつけるつもりだ。
アイリスとアコが母様の側にいてくれるので、よほどの事が無い限りは安全だと思うのだが……。
今回行くのは、ニクスにハクア、ジャックは当然だが、エレナとピエリス、それにヴィルトだ。
最初ニクス達を除けば、エレナとヴィルトだけを連れて行くつもりだった。
母様達の方に1人くらい男手があった方が良いと思っていたからだ。
しかし、ピエリスが自ら志願し、母様もピエリスに頼んだ。
こちらには大人組がいなかったので、そこを心配されたのかもしれない。
子ども扱いは気恥しくもあるが、愛情なのでありがたく思おう。
荷物の整理と確認も一通り済んだので、お茶の時間にしようかな。
部屋を出て廊下を歩いていると、ヴィルトに声をかけられる。
「なあ、あのチャッキーみたいなの貸してくれ」
「チャッキー?……ジャックの事?」
名前も見た目も全然似てないだろ……。
「あぁ、そうそう、そのジャッキーを貸してくれ」
名前が混じって、香港のアクションスターになってる。
「だからジャックだよ……何をさせるつもり?」
「あいつ鎧に憑依できるだろ?」
「そうだね」
「最近人型と戦ってないし、ちょっと模擬戦でもやろっかなって」
庭は広いので、模擬戦くらいなら可能だろう。
しかし、ヴィルトの戦い方的に庭が滅茶苦茶にされる可能性が高い。
「うーん、ジャックに聞いてみるけど、やるなら庭じゃなく、壁の外でやってもらうよ」
「えー、広い庭があるんだから、良いじゃねーか」
「じゃあ、終わった後に庭を元通りにするって約束するなら良いよ」
「……外行くわ」
確認してみると、ジャックも乗り気だったので、預かってる鎧と武器一式を取り出す。
2人を見送り、お茶の用意に戻るのであった。




