ピザ2
「お待たせしました」
注文した料理が運ばれてきた。
見た目も匂いも美味しそうだけど、安全確認しなければ。
……鑑定の結果に安堵する。
使われていた魚はタラやアジだった。
「当店秘伝のソースに付けて食べてくださいね。それではごゆっくりどうぞ」
ソースはタルタルソースのように見えるが、色が赤っぽい。
気になったのでソースだけ舐めてみると、ほんのりピリ辛だ。
うん、美味しい。
これなら揚げ物にも合うだろう。
何が使われているのかなぁと、つい出来心で鑑定を使ってしまった。
まさか、何をどのくらい入れるのかの細かい情報まで見れるとは思わなかったんです。
秘伝のレシピを知ってしまった……ごめんなさい、悪用はしないので許してください。
「美味しいですね」
「ソースが絶品ですし、パンにも合います」
フライの方も、やや油っぽいものの、古い油は使っていないようだ。
サクッとした衣に柔らかい白身、そこにピリッとしたソースが加わり十分に美味しい。
「このソース良いですね…ウチで再現できないでしょうか?」
……エレナ、再現出来てしまうよ。
「お客さん、ソースを褒めてもらえるのは嬉しいが、そう簡単には教えられないねェ」
「そうだな、それを知られちゃ商売あがったりだよ、はっはっは」
ほんとごめんなさい、既に知っちゃってます。
このソースをそのまま再現はしません。
納得できるまで改良し、オリジナルだと言えるようになってから使います。
3人とも食べ終わったので、会計をお願いする。
ピエリスがこういう時用の財布からお金を取り出す。
「お客さん、お金がちょっと多いよ」
「美味しかったので、チップだそうです」
「? そうかい、そういうことなら遠慮なく。また来てくれた時にちょっとサービスしたげるよ」
秘伝のレシピを知ってしまったので、チップを渡す事で罪悪感を減らさせてもらう。
飲食店で無闇に鑑定スキルを使うのは止めよう。
いや、でも安全確認は必要だしなぁ。
知りたい情報だけ知れるように今度練習してみようかな。
お土産を購入する為、教えてもらったピザ屋に向かう。
「すみません、売れ行きが好調すぎて、ただいま準備中なんです」
「どのくらい待ちそうですか?」
「もう厨房のスタッフも休憩に入ってるんで、次は夜の部になりますかねぇ」
うーん、もう少しで3時になるし、来た時間帯も悪かったかぁ。
仕方ない、今回は諦めよう。
売り切れるほどのピザ、食べてみたかったなぁ。
「残念ですけど、仕方ないですね」
エレナがとても残念そうな顔をする。
可哀そうだし、エレナにピザを食べさせて笑顔にしたい。
「よし、材料を買って帰ろう」
「ユーリオン様、ウチにピザ窯はありませんよ?」
「ピエリス、無いなら作れば良いんだよ」
この時間なら、帰ってから作り始めても、夕食には間に合うはずだ。
「え? 今日これからピザ窯を作るんですか?」
「大丈夫、そんなに複雑なものでも無いから」
「庭に作るんですか?」
「そうだね、流石に厨房に手を加えるのは時間が掛かっちゃうし」
「アメリア様が大事にしている庭の景観を損ねませんか?」
「うっ…いや、たぶん大丈夫…もし、駄目そうなら、今日使い終わったら壊すよ」
「まぁ、そこまで言うなら」
「よし、善は急げだ、材料を買って急いで帰ろう」
「……善…ですかね?」
急ぐので、ピエリスの疑問はスルーだ。
まずはレンガなんかを取り扱っている店に向かう。
頻繁に売れるような物でも無いので、案の定購入できた。
ピザに使う材料も多めに購入して屋敷へと戻る。
「何か手伝う事はありますか?」
「エレナはアコかアイリスと生地作りをお願い…余っても大丈夫だし、少し多めでも良いから」
「わかりました」
ピエリスに組み立てを手伝ってもらいながら作っていく。
並べたり重ねたりしていると、形が若干不揃いな物が出てくる。
そういう物は錬金術のスキルで加工していく。
なので変に斜めったり、微妙な隙間が出来たりもしない。
1時間ほどで見た目は奇麗に出来上がる。
後は実際に使ってみないと、完成しているのか分からない。
手を洗ってから厨房へと向かう。
厨房で先ずはシンプルにと、マルゲリータを用意する。
上手く行きますようにと願いを込めつつ、早速焼いてみる。
時間が経つにつれ、だんだんと良い匂いが漂ってくる。
今の所問題は無さそうだし、これならいけるか?
10分ほど経過したので、取り出してみる。
多少黒く焦げている部分はあるが、全体的に焼けているようだ。
これなら及第点かな。
「美味しそうですね」
「食欲をそそる良い香りが」
様子を見に来ていたエレナとアコが興味津々だ。
「これ、どうやって食べるんですか?」
「1人1枚そのまま食べるのでしょうか?」
「……あ」
ピザ窯とピザの事だけ考えていて、ピザカッターの事を忘れていた。
今から用意すれば、せっかくのピザが冷めてしまう。
こういう使い方をするのは非常に不本意なのだが、今回ばかりは目を瞑ろう。
空中に小さな結界を作り、そこにピザを乗せる。
そして魔糸で4等分に切断し、それを皿に乗せる。
結界の方はともかく、魔糸をこんな風に使うなんて。
……しかし、結界を台にするのと、魔糸で切断するのは洗い物を増やさないし、便利だなぁ。
いやいや、糸を使うのはカッコいいイメージなのに、こんな便利グッズのように使うのは駄目だ。
……味を占めないように気をつけよう。
「食べて良いのですか?」
「うん、とりあえずここにいる4人で試食って事で」
「持つとかなり熱いですね」
「熱いうちが美味しいけれど、手や口を火傷しないようにね」
「美味しいです!」
「これ、かなりいけますね!」
皆美味しいと笑顔を見せてくれる。
うん、作ってよかった。




