ピザ
頂いた食材は、早速今日の夕食に使わせてもらおう。
シチュー、チーズ入りのオムレツ、デザートにはプリンやアイスなんかも良い。
色々と思いつくが、まだ昼だし、街で追加の食材を見てから決めても遅くはないか。
「昼食は街で済ませちゃおうか」
「そうですね、何か食べたいものはありますか?」
「うーん、僕は特に無いけど、エレナとピエリスは?」
「俺も特には」
「私もですね」
「じゃあ、見て回りながら決めようか」
街まで戻ると、飲食店のある方へと足をのばす。
時刻は昼の2時で、やや昼食時を過ぎているものの、食欲を誘う良い匂いが漂ってくる。
匂いを嗅いでいると、余計にお腹が空いてきちゃった。
もうどこでも良いから適当な店に入ろうかな。
「お、そこのカッコいいお兄さん、食事ならウチにしときなよ」
15、6歳くらいの女の子がピエリスに声をかけてきた。
時間帯的に暇になってきたので、看板娘が客引きに出てきたのかな。
「おススメはなんですか?」
「ウチは揚げ物がおススメだよ、金に余裕があんなら、今日は海の魚も少し入って来てるよ」
……揚げ物かぁ。
誤解の無いように言っておくと、別に揚げ物が嫌いなわけでは無い。
ただ、この世界だと油の質がちょっと悪い。
更には一般家庭で気軽に使えない程度には、値段もそこそこする。
その為、飲食店などでは油をギリギリまで何度も使い回す事が多いのだ。
もちろん店によっては品質を保つため、油に気を遣っているだろう。
しかし、初見の店を選ぶにしては警戒してしまう。
僕がピエリスの方を見上げると、同じくピエリスも僕の方に顔を向けてきた。
その表情からは『どうします?』と問いかけているのが分かる。
エレナの方に顔を向けると、そわそわしているので、おそらく食べたいのだろう。
特に決めてなかったし、ここで良いかな。
「じゃあ、せっかくなので」
「3名様ご来店でーす」
中に入ると、他の客は見当たらなかった。
混雑していると落ち着かないので、ちょうど良いかな。
案内してくれた子は、また客引きの為か外に出て行く。
代わりにおばさんが注文を取りに来てくれる。
厨房におじさんが見えるので、親子で経営しているのかな。
「いらっしゃい、なんにしますか?」
「海の魚があるって聞いたんですけど、なんて魚ですか?」
「おーいアンタ、今日仕入れた魚、なんて名前だっけ?」
「はっはっは、なんだったかな?」
……おい、飲食店、なんだか分からないものを客に出しているのか。
「まぁまぁ、お客さん安心しな、揚げれば大抵の物は安全に美味しく頂けるさ」
「流石アンタ、良い事言うねェ!」
「だろ? はっはっは。俺らの仲も常に揚げたて熱々だぜ」
「やだよぅ、アンタったらもぅ……今晩は酒の肴を1品増やしてあげる」
「はっはっは、流石は自慢の嫁さんだぜ」
夫婦仲が良いのは素晴らしいが、客を不安にさせないでほしい。
もう店内だし、諦めて注文しよう。
出された物を鑑定して駄目そうなら、食べずに別の店に行こう。
「…僕は海魚のフライ定食で」
「じゃあ、同じ物を」
「私もそれで」
「はいよ、少し待っててくださいね」
5分くらい雑談しながら待っていると、客引きの女の子が戻ってきた。
「かーちゃん、もうお客さん来なそう」
「そうかい、なら今のうちにあんたも休んどきな」
「はーい、最近は近くに出来たピザ屋のせいで客足減っちゃったねェ」
「こら、お客さんのいる時に愚痴るんじゃないよッ!」
「ごめんごめん、じゃ、奥にいるから何かあったら呼んで」
近くにピザ屋が出来たのか。
こっちに来てからは1度も食べてないので、少し食べたいかも。
「ユーリオン様、ピザってなんですか?」
「エレナ、ピザはね、丸く伸ばした生地の上に色々な具材を乗せて竈で焼いたものだよ」
「パンに近い感じですか?」
「そうだね、少し似ているかも……帰りにお土産で買って行こうか」
「どんな料理なのか楽しみです」




