アルムとアンアルム5
アルムさんとの話し合いを終えた後、牛や山羊との触れ合い体験をさせてもらった。
やっぱり動物は良いなぁ、ますます家の側に牧場が欲しくなった。
領地の管理を代理してくれているジェードには申し訳ないが、完全に事後承諾となってしまう。
領地が落ち着いたら、お詫びと労いを兼ねた温泉旅行辺りをプレゼントしたい。
「……うぅ……やぎ…嫌いです」
ちょっぴり悲しそうなエレナが側にやって来る。
悪戯好きな山羊が1匹いて、その子にエレナが気に入られてしまったのだ。
その結果、スカートを引っ張られたり、追いかけまわされたりした為、苦手意識を持ってしまったようだ。
危なそうなら当然助けようと思っていた。
しかし、山羊がちゃんと加減していたので、微妙に助けづらかった。
エレナが疲れたようだし、名残惜しいが帰ろうかな。
「アルムさん、ありがとうございました」
「そうですか、それではこちらをお持ちください」
そう言って持ってきたのは、鶏の卵やチーズ、牛乳と山羊乳まである。
「こんなに…では、料金を支払います」
「いえいえ、気にせず持って帰ってください」
「そういうわけには」
「いえいえ」
アルムさんが、頑として支払う事を許してくれない。
気持ちはありがたいが、本当の意味で助けられなかったのに、無料では受け取れない。
しかし、せっかくのご厚意を受け取らないのも失礼だ。
なんとか料金を受け取って欲しい。
こっそりお金を置いて行く?
いや、もう玄関にいるのだし、それは難しい。
そうだ、言い方を変えよう!
「わかりました、では、こちらはありがたく頂戴いたします」
「はい、是非そうしてください」
「それとは別に」
「?」
「こちらを引っ越し代金の足しにしてください」
「それは……貴方も頑固ですね…ふふ」
これから離れた土地に引っ越すのだ。
本当なら、少しでもお金が欲しいはずだ。
「わかりました、こちらもありがたく頂戴いたします」
「はい、それではまた」
side:アルム
「おじいちゃん、なんだか嬉しそう」
家畜小屋の掃除から戻った孫娘がそんな事を言う。
どうやら顔に出ていたらしい。
「そうじゃな、少しばかり希望が持てたからね」
「ここを出て行かなくて良いの?」
「いいや」
「……じゃあ、みんなも連れて行けるの?」
「いいや、家畜たちは連れてはいけないよ」
「……それのどこに希望があるの?」
「新しい土地に可能性を見出せるなら、十分に希望はあるさ」
「……よくわかんない…」
子や孫の未来を奪われずに済むのならば、賭ける価値は十分だ。
「もうすぐ引っ越す事になるから、必要な荷物の整理をしなさい」
「全員は駄目でも、ちょっとだけ連れて行けないの?」
「あの子たちは財産として、権利を取り上げられているからね、連れて行けば罪になる」
「……わかった…」
儂が愚かだったばかりに、アンには可哀そうな事をしてしまった。
じゃがきっと、新しい土地ではまた笑顔で暮らせるはずじゃ。




