アルムとアン2
話を一通り聞けたので、まとめてみる。
まず2人の名前、おじいさんが〝アルム〟で、その孫娘が〝アン〟だ。
王都に住むアルデーヌ男爵家の2つ前の当主の頃から契約を結んでおり、定期的に品物を運んでいる。
先代当主の頃までは問題無かったのだが、現当主に代わってから様子が変わった。
値下げや無茶な量を要求してきたり、当日になってから急に買わないと言われたり。
それでもアルムさんが契約を破棄しなかったのは、先々代の当主に恩義を感じていたからだそうだ。
嫌がらせのようなものを受けつつも、これまでは何とかやってきた。
しかし、悪い意味で転機が訪れる。
いつものようにアルデーヌ男爵家に品物を届けた日の事だった。
特別な歓待の席を設ける事になったので、品物を届けて欲しいと現当主から直々に依頼される。
品物はもちろん、期限や金額にも不審な点は無かったので、アルムさんは依頼を受けた。
よほど大事な席なのか、値下げ要求するセコイ当主が、護衛する冒険者を派遣してくれたらしい。
当日、約束通り冒険者が3人来てくれて、道中に襲ってきたモンスターは追い払ってくれた。
しかし、運が悪く10人を超える盗賊が襲撃してきて、大事な品物が駄目にされてしまった。
その結果、歓待の席は予定通りにいかず、アルデーヌ男爵家の顔に泥を塗る事になった。
アルムさんは誠心誠意謝ったが、理由が有ったとはいえ怒り狂った当主はおさまらなかった。
大事な取引が失敗した分の損害を賠償するように命じてきた。
だが、金銭だけでは到底払いきれず、家畜や家、土地まで奪われる事になったそうだ。
後、7日以内に出て行かなければならないらしい。
今日も交渉に来ていたのだが、会う事すらできなかったそうだ。
話し終えたアルムさんは、再度自分達の置かれた状況を確認し、悲壮感が漂っている。
アンちゃんも、ジュースとお菓子を口にした時は笑顔だったのに、また泣きそうな表情だ。
もちろん、どちらか片方の話だけを聞いて判断するのは良くない。
しかし、警察も探偵も不要なほどに、アルデーヌ男爵家の現当主が怪しすぎないだろうか?
貴族と一口に言っても数が多いので、僕自身はアルデーヌ家当主と面識は無い。
会った事も無い人間に対し、関係の無い第3者が悪印象を覚えるのはどうかとも思うが……。
派遣された冒険者までグルかまでは不明だが、盗賊達は雇われていたように思える。
10人を超える盗賊が商人の馬車ではなく、卵や乳製品を運ぶ者達を狙うだろうか?
アルデーヌ家は怪しいのだが、証拠も無いし、なにより状況がまずい。
仮に盗賊達を捕まえて、その口から依頼主の名前が聞けたとしても、駄目だろうなぁ。
盗賊の言葉には信憑性が無いし、男爵家ならば誤魔化す方法はいくらでもあるだろう。
話を聞いたからには力になりたいのだが……これは難しい。




