くま
川で釣りを始めてから1時間……いまだ小魚1匹すらも釣れていない。
こうしていると、前世の事を思い出す。
前世でも川釣りに行った事があるのだが、その時も全然釣れなかった。
結果を言ってしまうと、釣りよりも罠を使った方が捕まえられたという悲しい思い出だ。
釣りのコツを知識では知っているのだが……センスの問題なのだろうか。
気持ちよさそうに泳いでいる魚は見えているんだけどなぁ……。
「……あっ…」
いつの間にか、エサだけ食べられている。
新たにエサを付け直し、再度チャレンジする。
魚が沢山いそうだったので、始めた時はお土産ができるかな、なんて甘い事を考えていた。
もう今は、1匹で良いから釣りたいという気持ちでいっぱいだ。
いや、こうした釣りたいという気持ちが強すぎて駄目なのかもしれない。
池の鯉にエサをあげるくらいの気持ちでいけば釣れるかも。
そうしていると、対岸の下流の方に大きなクマがやってきた。
全身は黒いのだが、首周りと、胸の辺りに丸い模様が有り、そこだけは白い。
大きな鈴の付いた首輪をしているようにも見えるので、怖さよりも可愛さが勝っている。
チラッとこちらを見た後、魚が欲しいのか川に入る。
距離があるし、下流にいるので、釣りの邪魔にはならないし、そこまで警戒しなくても良いだろう。
それから時折、クマが魚を取る為に川を切り裂く、バシャッて音が聞こえる。
成功したようで、1匹の魚が陸に上げられる。
後から来たクマに、先に魚を捕られた悔しさは多少あるが、貴重なシーンを生で見られて良かった。
クマは1度川から上がると、魚を銜え、自慢気に見せつけてくる。
〝ドヤァ〟と言いたげな表情だ。
……いや、きっと気のせいだ。
あまりにも釣れなさ過ぎて、少しネガティブになり、被害妄想をしているのだろう。
クマはその1匹を食べ終えると、当然1匹で満足する事なく、川に再び入る。
それから数分、相変わらず僕の方は釣れないが、クマは2匹目を捕る。
また自慢してくるが、ムシだムシ。
クマは対岸のままだが、こちらの正面にまで近づいてきた。
そして見せつけるかのように、美味しそうに食べ始める。
いや、〝見せつける〟なんて感じてしまうのは、僕の心が卑しいからだ。
きっと、たまたま上流に上がって来て、たまたま僕の正面で食べ始めただけだ。
1匹目は丸ごと食べていたのに、なぜか2匹目は胴体だけ食べる。
少し不思議に思っていると、胴体だけ食べられた魚の食い残しをこちらに投げてきた。
それは、狙ったのか偶然か、残念ながら未だ水だけのバケツにポチャンと入り、水しぶきをあげる。
クマが両手を叩いてはしゃぐ。
目が合うと、『オレの奢りだ、食いねェ』とでも言いたげに、フフンっと鼻を鳴らす。
……キレそう……。
全身黄色に染めてやろうか。
釣りの時間は終わりだ。
魔糸で即席の網を作る。
結界のスキルで川の中に壁を作り、仕掛けた網の方に誘導する。
本気を出して3分、魚以外も混ざっているが一度に10匹以上を捕まえる。
クマが大口を開けてポカーンとしている。
フッ、虚しい勝利だ。
高評価が伴わない作品には意味が無い
作者は時間の犠牲無しには、何も書く事が出来ないのだから
しかし、その痛みに耐え、ブクマと評価を貰えた時
作者は何ものにも負けない強靭な心を手に入れる




