冒険者ギルドへ
どうせならと、最初に冒険者ギルドへやってきた。
一定期間依頼を受けないと、ランクが下がったり、登録が抹消されるからだ。
今回はヴィルトと2人で来ていて、まずは依頼の貼られている掲示板の方に移動する。
受ける依頼は、近場で狩猟系なら何でも良いかな。
「こんな所に魔族とは珍しいな」
「モンスターと間違えて狩っちまいそうだ」
「ちげぇねえ…ふっひゃひゃはッ」
昼間っから酔っているのか、顔を赤くした中年の冒険者2人にヴィルトが絡まれる。
今日のヴィルトの機嫌は最悪なので、止めようと思ったのだが…遅かった。
2人の頭を左右の手で持ち上げると、頭と頭を勢い良くぶつける。
ゴッと鈍い音がし、哀れな2人は崩れ落ちる。
「喧嘩売るんなら相手を選びな」
ヴィルトが『文句ある奴はいるか』とでも言いたげな目線で、周囲を睨むように見渡す。
関わり合いはごめんだと、誰もが視線を逸らす。
……次の被害者が出る前に、さっさと依頼を受けて出よう。
報酬よりも達成のし易さで依頼を選び、カウンターに持って行く。
こういう事は日常茶飯事なのか、ギルド側の人間は気にしておらず、特に注意も受けない。
まあ、過剰防衛な気はするが、絡んできた2人も悪いので、関与しないのかな?
城壁の外に出ると、数十分ほど質の悪い馬車で揺られる。
モンスターも馬鹿では無いので、城壁の近くにはほとんど近づかない。
なので、狩るならダンジョンへ行くか、人の少ない場所へ移動するしかない。
「じゃ、二手に別れようか 僕が依頼を達成しとくから、ヴィルトは自由に行動してて」
「ああ」
「夕方までには帰りたいから、その前にここで合流ね」
ヴィルトが闘志を燃やしながら離れていくのを見送る。
ストレス発散になってくれれば良いのだけど。
……とりあえず、馬車のせいでお尻が痛いから、少し木陰で休んでから行動しよう。
感知系スキルをONにし、目を閉じてまったり過ごしていると、何かが近づいて来たのが分かる。
額から角の生えた兎、ホーンラビットが2mくらいの位置まで寄ってきた。
お互いに目が会うが、それ以上は近づいてこない。
確かオスだと角が1本、メスだと2本なので、2本あるこの子はメスなのだろう。
ホーンラビットは草食なので、縄張りに入ったり、怒らせなければ人を襲う事は無い。
ジッとこちらを見つめ、逃げる事もしないので、こちらに興味があるのかな?
言語スキルをONにし、呼びかけてみる。
「おいで」
一瞬ビクッてすると、警戒心を刺激してしまったのか、少し離れられる。
言葉は伝わっても、気持ちが伝わらなかったようだ。
ストレージから兎が好みそうな野菜を探す。
うーん、キャベツは駄目な場合があったはずだし、定番だけど、やっぱりニンジンかな?
「食べていいよ」
ニンジンを見せると、1mくらいの距離まで近づいて来る。
だけど、食べたそうな気配はあるのだが、それ以上は寄って来ない。
あ、兎は野菜だけでなく、リンゴも好物だったはず。
リンゴを取り出して皮を剥き、食べやすいサイズにカットする。
もう触れられそうな距離まで寄ってきた。
触りたくなるのを我慢し、安心させるためにリンゴを食べて見せる。
「一緒に食べよ」
「食べていいの?」
「どうぞ」
最初はゆっくりと、美味しかったのか徐々にペースを上げて食べる。
「美味しい」
「もっと食べる?」
「ちょーだい」
「うん」
食べ終わった後は撫でさせてもらった。
ふわっふわで撫で心地が大変素晴らしい。
このまま連れ帰りたいけど、家族がいるらしいので、非常に残念だけど諦める。
お土産用にリンゴを2つ布に包んで、身体に背負わせてあげる。
「バイバーイ」
何度かこちらに振り返りつつ去って行く。
よし、モフモフで回復したし、そろそろ依頼をこなそうかな。
どれ一つ取ったって誰かの大切な評価だからな
貰えなくていい評価なんて無いんだ




