商人のフライア3
side:フライア
ユーリオン殿下を見送った後、自分用の仕事部屋へと戻る。
「本当に出店するおつもりですか?」
「ええ、あなたは反対?」
「……間違いなく赤字続きになりますよ」
「でしょうね」
声をかけてきたのは、ずっと私を支えてくれているニーアムだ。
私は少々感情を優先する傾向があるので、理知的な彼女が居る事でバランスが取れている。
「私達を利用する為、耳障りの良い言葉を並べている可能性だってあるのでは?」
「その可能性は低いわね」
「何故ですか?」
「利用するつもりなら、出店なんてまわりくどい誘い方はしないでしょう。
それこそ、権利なんかをチラつかせて金を要求した方が速いわ」
彼女の為に論理的に説明したが、彼の人柄を信じたいというのが本音だ。
彼の目指す場所は私が望む場所と一致している。
世の中には〝男〟と〝女〟の2種類が居るというのに、残念ながら不公平だ。
女の社会的立場は低く、弱い。
男と同じように仕事をこなしていても、女というだけで給金が少ない。
結果を出しても、女のくせにと、身体を使ったのだと、酷い中傷を受ける事だって多々ある。
田舎から出稼ぎに来た女性を雇い、立場を利用して関係を迫る事だって珍しくも無い。
家族を養う為、そんな脅迫めいた行いに同意せざる得ない事だってある。
無理矢理犯せば罪になるが、こちらは同意の上とみなされ、罪にならない事がほとんどだ。
私は、そんな社会的弱者である女性を少しでも守りたいと考えている。
だから私の商会では女性ばかりを雇っている。
もっとも、そんな私を面白くないと思う者達だっている。
彼らからすれば、私が女性ばかり雇うのは女を武器にする為だそうだ。
平民である私にできる限界は、商人として金を稼ぎ、雇う事までだ。
だけど、ユーリオン殿下が目指してくれるならば、守れる範囲は広がる。
ユーリオン殿下には、まだまだ時間が残されている。
例え私の代で叶わなくても、次の代かその次の代で叶うのなら十分やる価値はある。
「赤字を覚悟し、それでも信じるというのなら、もう私から言う事はありません」
「怒ってる?」
「怒ってはいません」
「そ、なら私は頑張って他の娘達を説得しますか」
「お付き合いしますよ」
「反対なんじゃ?」
「私は1度も反対だとは言ってませんよ。私だって信じたい気持ちはありますもの」
「どんなに努力しても ブクマと評価を貰えないんじゃないかって
怖くて怖くて堪らないんです 僕は…どうしたら……」
「読者を信じない作家なんかに努力する価値は無い」




