表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪音の連鎖 ―写真が八枚になったらもう終わり―  作者:
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/92

33.保科 勇気5

 玲奈との電話を切り、薄暗い廊下で深く息を吐き出した。


 壁に寄りかかったまま、冷たいコンクリートの感触を背中に感じる。


 手がかりがなさすぎる。


 それに有紀ちゃんのことをどうしようか。


 田中のおじさんとの約束破ってることになるよな。


 でも、それを報告する?


 いや、恐ろしすぎる。


 あの子は、もう絶対に関わらせない。


 うん、それで大丈夫なはずだ。


 乾いた喉を鳴らして唾を飲み込み、リビングへと戻った。


「ちょっと聞きたいんだが。この不思議な呪いについて、詳しくね」


 ソファに座っていた父が、穏やかな声で俺を迎え入れた。


 父の片手にあるスマホの液晶画面が、部屋の中で青白く光っている。


 父はニコニコと笑いながら、その画面をこちらへ向けた。


 そこには、新しく増えた顔のない男の写真がはっきりと写し出されていた。


 すでに父も呪いの当事者だ。


 俺は重い足取りで向かいの椅子に腰を下ろし、これまでに知り得た呪いのルールや経緯をすべて話した。


 父は時折うんうんと深く頷きながら、俺の話にじっと耳を傾けていた。


 まるで、出来のいい推理小説でも読み解くかのように、淡々と考察を始める。


「最初に落ちていた携帯を拾って感染した時、勇気の携帯には呪いの写真があったのかな?」


「え、どうだったかな」


 記憶の糸を必死に手繰り寄せる。


「なかった気もするけど……あの時は意識してなくて、よく覚えてないな」


「死んだ人の携帯から、写真は移っていたのかな」


「いや。花音の携帯から風花さんが感染したはずだけど、花音の携帯には八枚の写真が残ったままだった」


「前は八枚で死ぬと言っていたね」


 父は顎に手を当てて、虚空を見つめた。


「とするなら、死んだ人の携帯から感染した場合、写真は移動していない。それなら最初は写真はない可能性が高いね」


「そう……なのかな」


「この呪い……まあ、それがあるとして」


 父の眼鏡の奥の目が、鋭く光った。


「明確なルールがある。いじめの再現だね。指名が一度に二人までというのも、そういうことだろう」


 いじめの再現。


「勇気が全ての携帯を壊すというのは、確かに一つの手だけど。今壊してはだめなのかな」


「それはもう試したんだ。新しい携帯を買ったら、すぐにそこに写真が現れた」


 俺はテーブルの上に置いた、自分のスマホを指差した。


「そのせいで急いで買う羽目になって、この金色のダサいケースしかなくて……まあ、そんなことはいいんだけど」


「それもなかなかかっこいいと思うよ」


 父はふふっと笑い、すぐに真顔に戻った。


「そうか。それで全ての携帯を集めて、同時に壊すわけか」


「どう思う?」


 すがるような気持ちで問いかける。


「可能性はあるだろうけどね」


 父の声は、命の危機に瀕しているとは思えないほど冷静だった。


「同じくらい、だめな可能性もあると思うよ」


 容赦のない客観的な意見に、俺は深く肩を落とした。


「ただ、その元凶の……橋田だったね。

その人の携帯は、他の携帯とは違う機能がある。それを壊すのはどうだろう」


「アドレス帳に、感染した持ち主の名前が出るんだ。それを先に壊すと、誰が感染したか分からなくなって携帯が集められなくなる」


「だから全部まとめて壊すということだね」


 父は楽しげに指先でテーブルを叩いた。


「もしかしたら、その橋田という人間が何を望み、何を嫌がるのか。そこが鍵になるかもしれないね」


「そうはいっても、これ以上の情報は俺には……」


「よし、探偵を雇おう」


 父はポンと手を叩き、顔をほころばせた。


「ちょっと、楽しくなってきたね」


 我が子に死の呪いが迫り、自らの余命も削られているというのに……


「こういうところはよく似た親子よね」


 ため息交じりに放たれた母の言葉を理解できなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ