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拾ったスマホ ―写真が八枚になったらもう終わり―  作者:
第二部

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31.保科 勇気4

「保科勇気です。今、写真は二枚ですか?」


 スマホの向こうの微かな息遣いに耳を澄ませる。


「いえ、四枚になってます……」


 押し殺したような震え声が、鼓膜にへばりついてきた。


「どうしようもなかったんです」


 四枚。


 背筋を冷たい汗が這い下りる。


 呪いの進行が早すぎる。


「わかった。落ち着いて。今は家?」


「もうすぐ帰り着きます」


 彼女の背後で、車のタイヤがアスファルトを擦る低い音が聞こえる。


「とりあえず電話は、このままで」


 俺は立ち上がり、両親のいるリビングから少し離れて薄暗い廊下の壁に背中を預けた。


「そのまま家に入って。周りに気をつけて」


「……わかりました」


 通話を繋いだまま、目を閉じて向こう側の気配を探る。


 靴底が地面を擦る音。


 カバンが服に擦れる音。


 ガチャリ、と金属の鍵が回る音が響いた。


「……帰り着きました」


 重いドアが閉まり、外の雑音が完全に遮断されたのがわかる。


「それなら、まず家からはもう出ないで」


「ずっとですか?」


 少女のすがるような声が、細く震えている。


「うん。解決するまではそうしたほうが安全だ」


 俺は無意識に、空いている方の手で自分の首元を強く掴んでいた。


「あと二枚で、君は死ぬんだよ」


「死ぬって……」


 息を呑む気配が伝わってくる。


「キツい言葉だけど、これは甘く考えて欲しくないんだ」


 喉の奥がカラカラに乾いていた。


 だが、ここで少しでも気を抜かせれば、この子は間違いなく死ぬ。


「あと、親は理解してる?」


「呪いですか? ……話していません」


「説明して、家の中でのカメラの起動は禁止して」


「それは……」


 電話の向こうで、痛いほどの沈黙が流れる。


「説明が難しいなら、俺がするよ」


「いえ……わかりました。話してみます」


「あとは、そのうち携帯を貸してもらいに行くと思う」


「何をするんですか?」


「全ての携帯を、一度に破壊する」


 廊下の壁の一点を見つめながら、低く答えた。


「それで呪いが解決するということですか?」


「ごめん、そこまではわからないんだ」


 暗闇の中で手探りしているような焦燥感が、口の中に苦く広がる。


「でも、それしか思いつかなかった」


 再び、重苦しい静寂が落ちた。


「ちょっと……考えさせてください」


「それでいいよ。俺も、まだ携帯を全部見つけられてないから」


 頭の中に、名前が浮かぶ。


「一つ聞きたいんだけど。小林真希、黒田健太。この名前に知り合いはいない?」


「いえ、いません」


 やはりそう簡単には繋がらない。


「わかった。とにかくどうにかできるようにがんばるから」


 壁から背中を離し、自分自身を奮い立たせるように力を込めた。


 止まれない理由は、増え続けているのだから。






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