22.北島 玲奈6
八月十六日。
洗面所の蛇口を捻り、冷たい水で顔を洗う。
タオルで顔を拭きながら鏡を見ると、日焼けした自分の顔がぼんやりと映っていた。
明日からサッカー部の練習が再開する。
でも、ここから家に帰るのは明日の予定だから、部活に参加できるのは明後日になるかな。
この前、三年生にとって最後の大会である夏のお別れサッカーが終わったばかりだ。
三年生がどんどん引退していけば、私たちにもレギュラーのチャンスが大きく広がるはず。
碧には、絶対に負けられないぞ。
そんなことを考えながら朝食を済ませ、自室に戻ってベッドに放り投げていたスマホを手に取った。
画面を点灯させると、メッセージアプリに通知が来ている。
あ、碧からだ。
開いて、画面に並んだ文字に目を落とす。
『ごめん、でも玲奈はいいよね』
『玲奈、ごめん。今までありがとう』
なにこれ……。
送信時間は、夜中の二時を過ぎていた。
意味のわからないメッセージの羅列に、心臓がドクンと嫌な跳ね方をした。
背筋に冷たいものが走る。
昨日の夜に送った他愛のない部活の話に対する返信じゃない。
まるで、遺書みたいな。
嫌な予感がして、急いで通話ボタンをタップした。
耳に当てたスピーカーから、無機質な機械音が流れ出す。
『おかけになった電話は電波の……』
電源が入ってない?
スマホを耳から離し、画面を見つめる。
こんな時間に電源を切っているなんて、普段の碧ならありえない。
何かあったとしか思えなかった。
私は階段を駆け降り、リビングでテレビを見ていた母に声をかけた。
「お母さん、碧の家の電話番号知ってる?」
「急にどうしたの。ちょっと待ってね」
母は不思議そうな顔をしながらも、自分のスマホを取り出して操作し始めた。
「あったわ、かけようか?」
「番号送って。私がかける」
すぐに私のスマホが短く震え、母から固定電話の番号が送られてきた。
タップして発信する。
トゥルルルル。
トゥルルルル。
長く、単調なコール音が響く。
誰も出ない。
お盆休み中だ。祖父母の家にいるのだろう。
トゥルルルル。
その規則正しい音が、もぬけの殻になった家の中で空虚に鳴り響いているように感じた。
やっぱりいない。
電話を切る。
その後も、自分の部屋に戻って何度か碧の携帯にかけ直してみた。
結果は同じだった。
呪いのせい?
いや、そんな。
唇を噛み締め、震える指でブラウザを開く。
私は、あのサイトの管理者に宛ててメールの作成画面を立ち上げた。
『呪いにかかった友人と連絡が取れなくなりました。どうしたらいいでしょうか』
すがるような思いで、送信ボタンを押した。




