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拾ったスマホ ―写真が八枚になったらもう終わり―  作者:
第二部

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21.保科 勇気2

 どうなっているんだ。


 暗い部屋の中で、手元の黒い携帯の液晶画面だけが不気味な青白い光を放っていた。


 急に名前が増えた。


 新たに刻まれた石川姓の四人は、間違いなく石川碧の家族だろう。


 気がつくのが遅れた。


 家の場所をしっかりと聞き出していなかった自分の甘さが、ひどく悔やまれる。


 とにかく、今はもう深夜だ。


 石川碧にSNSでメッセージを送ったが、一向に既読になる気配がない。


 明日の朝、すぐに電話をするしかないか。


 クソっ、と暗闇に向かって毒づく。


 それにしても、一気に四人も増えるとはどういうことだ。


 田中のおじさんの話では、一度に呪いを移せる人数は二人までのはずだった。


 それが事実なら、石川碧は少なくとも二度、あの忌まわしい着信音を鳴らしたことになる。


 俺は呪いを移す方法なんて、一言も教えていないのに。


 どう対応するべきか。


 思考が泥沼にはまっていくのを感じながら、液晶画面の奥にいるはずの存在を睨みつけた。


 橋田、お前なんだろ。


 いつまでこんな悪趣味なことを続けるんだ。 


 翌朝。


 淀んだ空気のまま夜が明け、俺は嫌な予感とともに再び橋田の携帯を確認した。


 血の気が引いた。


 石川碧をはじめ、昨夜増えたばかりの石川姓の名前が、画面から全て消え去っていた。


 まさか。


 いくらなんでも早すぎるだろ。


 一晩の間に、一体何が起きたというんだ。


 震える指で自分のスマホを掴み、石川碧の番号に電話をかける。


『おかけになった電話は電波の……』


 スピーカーから流れる無機質なアナウンスが、冷酷な現実を突きつけてきた。


 ここから名前が消えたということは、そういうことだ。


 死んでいるだろう。


 一家全員が。


 五台の汚染された携帯が、どこかに転がっているはずだ。


 誰かが汚染される前に、早く見つけ出して破壊しないといけない。


 完全に後手に回りすぎている。


 急がないと、被害は際限なく広がっていく。


 この呪いは、必ず俺が終わらせる。


 ギリッと奥歯を噛み締めたその時、不意に手元のスマホが震え出した。


 着信画面に表示された名前に、嫌な汗が背中を伝う。


 翔太。


 よからぬ想像を頭から振り払い、通話ボタンを押した。


「もしもし、翔太。どうした?」


『済まねえが、もう手伝えねえ』


 電話の向こうから聞こえる声は、ひどく掠れて底知れない疲労が滲んでいた。


「どうした?」


『四枚に増えた』


 その一言で、状況の切迫度が痛いほど伝わってくる。


「そうか。それなら、もう動くな」


 俺は努めて冷静な声を出し、受話器越しに語りかけた。


「あとは俺が動く。これまで助かったよ。しばらく我慢しててくれ。必ず解決する」


『……ああ、頼むぜ』


 力なく通話が切れ、部屋に再び重苦しい静寂が戻った。


 俺はデスクの引き出しを乱暴に開け、一番奥にしまってある茶封筒を取り出した。


 中を覗き込むと、残りの札束が心許ない厚さになっていた。


 金の方もそろそろヤバいな。


 田中のおじさんから「有紀にはもう関わらないでほしい」と言い渡された時に受け取った手切れ金だ。


 元々、有紀ちゃんをこんな危険な呪いの渦中に引き込むつもりなんてなかった。


 だが、この呪いを追いかけるために仕事を辞めた今、この活動資金は皮肉にもありがたく使わせてもらっていた。


 急がないと、金も時間も尽きる。


 橋田の携帯アドレスに表示されている、まだ所在不明の名前に視線を落とす。


『北島玲奈』

『小林真希』

『黒田健太』


 残りの三人を、一刻も早く見つけ出さなければならない。



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