14.駒田 紬2
橋田は、凍りついたクラスをゆっくりと見回した。
「俺は、これから仕返しをする」
低く、地を這うような声だった。
「いじめた奴も、ただ見ていた奴もだ」
「もし邪魔をする奴がいたら、就職も、結婚も、全部邪魔してやる」
「俺が生きている限り、永遠にな」
唖然とするクラスメイトの中で、誰も声を出すことはできなかった。
息をすることすら忘れるほどの、圧倒的な威圧感。
その中で、西本君だけが強い視線で真っ直ぐに橋田を睨み返していた。
私はといえば、ただガタガタと震え、怯えた目でその光景を見つめることしかできなかった。
それから、橋田の異常な復讐が始まった。
最初の標的は川路だった。
最初は川路も激しく抵抗していた。
だが、橋田は異常なほどに強かった。
今までどうして無抵抗でいじめられていたのか、不思議に思えるほどに。
抵抗する川路を、橋田は執拗に痛めつけた。
やがて、川路の心は完全に折れた。
虚ろな目をして、何をされても全く逆らわなくなった。
すると、橋田はまるで壊れたおもちゃに興味をなくしたように、あっさりと標的を変えた。
次は、吉田君だった。
吉田君へのいじめは、それほど長くは続かなかった。
飽きた橋田は、悪魔のようなゲームを思いついた。
吉田君自身に、次のターゲットを決めさせたのだ。
追い詰められた吉田君が震える声で選んだのは、三井花音さんだった。
理由は単純で、以前から彼女に馬鹿にされていたから。
そして標的となっていじめられた花音さんは、さらに残酷な条件を突きつけられた。
二人、次の生贄を指名しろ、と。
ただし、指名する相手に直接、自分の口で伝えに行くこと。
花音さんが指名した一人は、田中悠聖君。
彼はいじめられていた最中に、逃げるように遠くへ引っ越していった。
そして、もう一人は。
私はそこで言葉を切り、目の前に座る親友の顔を見た。
自分の膝を見つめていた彼女が、ゆっくりと顔を上げる。
当時の旧姓は、川端。
「……その先は、私が話すよ」
穂香ちゃんが、青ざめた唇を微かに震わせながら、静かに口を開いた。




