3.北島 玲奈3
いても立ってもいられず、私は震える指で碧に電話をかけた。
耳元で鳴る無機質なコール音が、やけに長く不気味に響く。
「……もしもし」
電話に出た碧の声は、普段の明るさが嘘のように沈み込んでいた。
「碧、大丈夫?」
「玲奈……これ、なんかヤバイやつかも」
「どういうこと?」
「クラスの噂好きの子に聞いたんだけどさ。……写真が増えて、死ぬ呪いの話」
呪い。その非現実的な単語に、私の背筋に冷たいものが走った。
「本気で言ってるの!?」
「変な写真が増えてるって言い出して、そのうち学校に来なくなって……急に死んだって」
「さすがに都市伝説的なやつでしょ」
私は努めて明るく振る舞おうとしたが、顔の筋肉が引きつってうまく笑えなかった。
「私もそう思ってた。でも……去年、うちの学校で実際にあった話みたい」
「うそ……」
「あの変なDM、『写真が増えたら』って書いてあったでしょ。……連絡してみようかな」
電話越しの碧の息遣いが、恐怖で荒くなっているのがわかる。
「碧、あのね」
私は、心臓の嫌な鼓動を感じながら、ゆっくりと口を開いた。
「私の携帯にも、変な写真ある」
「え……どんなやつ?」
「多分、男の人。髪はなくて、のっぺらぼうみたいな感じの……」
「私のと同じだ。……玲奈は、何枚あるの?」
「え、何枚って……一枚だよ」
「そっか。私は、三枚」
碧の声が、かすかに震えた。
「顔のない男が二枚。二枚目は男の人……燃えてた」
「嘘でしょ」
「そしてあと一枚は……撮った覚えのない、私の写真」
私は、返す言葉が出なかった。
誰かが碧を隠し撮りしたということなのか、それとも、もっと恐ろしい何かなのか。
「やっぱり、あの人に連絡してみる」
「私も……調べてみるよ」
電話を切り、薄暗い客間で一人、携帯の画面を見つめる。
恐怖よりも、ひどく現実感がなかった。
それでも何か手がかりがないかと、私は必死にネットの海を検索し始めた。
そして、一つの奇妙なページを見つけた。
『見覚えのない中学生の写真が増えた人は、必ず見てください』
私の携帯にあるのは、中学生ではない。顔のない不気味な男だ。
でも、強烈な胸のざわめきが私を画面に釘付けにした。
ページを開くと、真っ暗な画面の中央に『ここをクリック』とだけ書かれている。
こういうのって、押すとまずいんだっけ。
どうしよう。
ためらう私の指を、碧の切羽詰まった言葉が突き動かした。
私は、意を決して画面をタップした。
『……ピ……ピピ、ピー……』
静まり返った部屋に、スマホのスピーカーから、唐突に変な電子音が流れ出した。
あ、これ聞いたことある。
あの朝、道の端に落ちていた携帯の音だ。
でも、あの時の音とは、少し違う気もする。
そう思っていると、画面が切り替わり、不気味な一文が浮かび上がった。
『この音を聞いたことのある人は、ここにメールを』




