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呪音の連鎖 ―写真が八枚になったらもう終わり―  作者:
第一部

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51.田中 有紀16

 勇気君は、食い入るようにスマホの画面を見つめていた。


「花音って……」


「風花さんの妹だ。……なんでだ」


 すると、画面の中のその花音の写真も、スッと音もなく消えていった。


 どうなっているんだろう。


 次に画面に現れたのは――。


「これは……さっきの花音に似ている?」


「これ、若い時の風花さんかも……。梨花にも似てる」


 しかし、その写真もすぐにフッと消え去った。


 その後、大人や子供、何人もの見知らぬ顔が次々と浮かんでは消えていく。


 そして、最後に残ったのは、のっぺらぼうのような『顔のない人間』の姿だった。


「なに、これ……」


「わかんねえ。だけど……」


 勇気君は、無言で手元の携帯を操作した。


「よし……消えてる」


「どうなってるの?」


「俺にも、詳しいことはわからない。だけど……有紀ちゃんは、もう帰ってくれ」


「え……」


「おじさんたちの呪いは、消えているはずだ」


「なんで、わかるの?」


 勇気君は、私の問いには答えなかった。


「もう、この呪いには関わるな。あとは、俺がやる」


 そう言って、彼は私に背を向けて立ち去ろうとする。


「待って! 何がなんだか、全然分からないよ!」


「西本君は……自殺じゃなかったんだ」


「自殺じゃないなら……」


「有紀ちゃん。生きていたいなら、もう関わるな」


 それだけを鋭く言い残し、勇気君は走り出した。


 彼が私を振り返ることは、二度となかった。


 勇気君の背中が闇に消えた後。


 どうしようもなくその場にへたり込みそうになる私を、奏さんが静かに見下ろしていた。


「……うちに、泊まりますか?」


 すでに終電の時間は過ぎていたらしく、私は彼女の好意に甘えるしかなかった。


 暗い和室で、勇気君について何か知らないかと奏さんに尋ねた。


「急に家にやって来て、『お兄さんは自殺じゃなかった、はっきりと確認した』って……」


 奏さんは、戸惑うように目を伏せた。


「『君の言う通り、彼はとても強い人だった。それを妹の君が知っていてくれれば、西本君もこの呪いから解き放たれるかもしれない』って。そう言って、半ば無理矢理お墓に連れてこられたんです」


 無茶苦茶だ。


 でも……勇気君は、一体何を『確認した』というのだろう。


 翌日。


 重い足取りで自宅に帰った私は、すぐにお父さんたちの携帯画面を確認した。


 勇気君の言った通りだった。


 あの不気味な呪いの写真は、誰の画面からも完全に消え去っていた。


 午後になると、父方の祖父と祖母が家にやってきた。


「有紀ちゃん……本当に、良かった……!」


 涙を流して私をきつく抱きしめる祖母の体は、ひどく震えていた。


 すでに母方の祖父母も到着していて、リビングは安堵の涙と喜びに包まれていた。


 呪いの恐怖から解放された、温かい家族の輪。


 けれど。


 その輪の中に入ることなく、私を見る穏やかな父の笑みが怖かった。


 

       第一部 西本祐希編 完


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