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呪音の連鎖 ―写真が八枚になったらもう終わり―  作者:
第一部

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42/74

42.田中 悠聖7

 駅前のロータリーで、ホームレスの中から二人の男を見つけ出した。


 過去に家族に迷惑をかけたから、最後くらいまとまったお金を送りたい。そうこぼしていた男たちだ。


 私は彼らに、今度頼みたい仕事があると話を持ちかけた。


 大金と引き換えに、命の危険があることだということも包み隠さず説明してある。


 これで、準備は整った。


 あとは、いつ実行するかだ。


 有紀の呪いの写真は、今のところ五枚。


 もしこれからさらに増えてしまえば、また新たに人間を探さなければならない。


 私が死ねばまとまった生命保険金も下りるだろうが、死ぬまでは金銭管理も必要だ。


 二人の男への報酬は問題なく支払える。だが、これ以上人数が増えたら、家の貯金の底が尽きるかもしれない。


 そして、妻の美奈には、なんと言って説得するか。


 有紀のためにこの世に残ること自体は承諾するだろうが、両親や私を差し置いて、自分だけが生き残ることに強く抵抗するかもしれないな。


 そんな計算を頭の中で繰り返しながら帰宅すると、玄関の物音を聞きつけた有紀が、二階から駆け下りてきた。


 私の、愛しい娘。


 その怯えた顔を見た瞬間、私の中で自然と熱い涙が溢れてきた。


 仕事などにかまけず、もっと一緒に過ごすべきだったな。


「……お父さん。写真が、減っていた」


 有紀が、血の気を失った顔で呟いた。


「良かったじゃないか」


 私は努めて優しく、微笑みかけた。


「誰に……誰に呪いを移したの……!」


「そうか。……知ってしまったか」


 私は小さく息を吐き出した。


「お前は何も気にしなくていい。父さんが、勝手にやったことだ」


「そんなこと……そんなふうに思えるわけ、ないよ……!」


「有紀。お前の人生はまだ長いんだ」


 私は、泣き崩れそうな娘の両肩を力強く掴んだ。


「これからもっと楽しいこと、素晴らしいことがたくさんあるんだ。お前には、生きて欲しいんだよ」


「お父さん……私は、誰かを犠牲にして幸せになれるとは思わない……!」


 有紀の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。


「それに、お父さんもお母さんもいなくなるなんて、絶対に嫌だ……!」


 ふと視線を感じて顔を上げると、リビングの入り口の暗がりで、美奈も涙を浮かべて立ち尽くしていた。


「大丈夫だ。母さんには、残ってもらう」


「……え?」


 美奈が、驚愕に目を見開いた。


「お前が、一人じゃ淋しいだろう。だから、母さんは死なせない」


 これで、美奈を説得する手間も省けるかもしれない。私は頭の片隅で、ひどく冷ややかにそう計算していた。


「じゃあ……それじゃ、足りない一人は……どうするつもりなの……?」


「大丈夫だ。すべて、父さんに任せておきなさい」


 有紀は震える唇を噛み締め、それ以上、何も言葉を続けることができなかった。


 娘の瞳に映る私が、一体どんな風に見えているのか。


 今の私には、もはやどうでもいいことだった。





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