表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪音の連鎖 ―写真が八枚になったらもう終わり―  作者:
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/63

36.田中 有紀10

 電話口で保科勇気が残した、「墓参り」という言葉。


 一体、なんのことだろう。


 彼がどこで何をしているのか、少し気にはなった。


 けれど、今の私の心を黒く塗り潰しているのは、そんなことではない。


 ……お父さん。


 私の携帯を持ち出したお父さんは、一体誰にあの『音』を聞かせたというの。


 どうしたらいいのかわからず、私は暗い部屋の中で膝を抱えていた。


 梨花のお母さん……橘風花さんが電話で語った言葉が、頭の中で何度もリフレインしている。


『両親を殺して生き延びた人生は、最悪だったわ』


『幸せになればなるほど、いつか呪いが返ってくるんじゃないかって不安になったの』


『やがて娘の梨花とも会話がなくなり……そして、あの子は死んだ』


『私の人生は、完全に終わったのよ』


 電話の向こうから聞こえてきたのは、血を吐くような後悔の声だった。


『くふふ……でも、よかったわね。あなたもこれから、私と同じ地獄が味わえるわよ』


 私に向けられたその声は、悪魔の呪詛そのものだった。


 ひどい話だった。


 でも、私は通話を切られる前に、どうしても一つだけ聞いておきたかった。


 あの不気味な着信音は、一体何なのかと。


『……あれはね』


 風花さんは、ひどく冷たい声で教えてくれた。


『いじめの主犯だった橋田が、妹の花音に命じて作らせたものなのよ』


 花音。三井、花音。


 過去のいじめに加担し、謎の事故死を遂げたという女の子。


『当時、まだ中学生だった花音から頼まれてね。私がパソコンで、ある音声を電子音に変換して作ってあげたの』


『ある、音声……?』


『いじめられていた西本君が、「指名させてください」と、涙ながらに懇願した声よ』


 全身の血が凍りついた。


 いじめのターゲットを次へ移すための、悪魔の『指名』。


 あの耳にこびりつく不気味なメロディの正体は、業火に焼かれて死んだ西本君の、絶望と屈辱に塗れた命乞いの声だったのだ。


『そんなものを作るのは気持ち悪かったけれど……花音が、あれがないと自分がいじめられると泣くから、仕方なく作ってしまったのよ』


 どれだけ凄惨で、狂ったいじめだったのだろう。


話していると、彼女はまだ何か知っていそうだった。


『……もう少し、あなたが不幸になったら話しましょう。くふふ、あはははは!』


 完全に狂ってしまった風花さんの笑い声と共に、電話は一方的に切られた。


 そう、狂っている。


 あの過去のいじめも、今起きている呪いも、すべてが狂っている。


 ……お父さん。


 お父さんは、あの音を誰に聞かせたの?


 お母さん? それとも、おじいちゃんやおばあちゃん?


 私は、お父さんに聞かないとだめだ。


 真実を暴いて、止めなければ。もうこれ以上、私のせいで犠牲者を増やすわけにはいかない。


 でも。


 もし、身代わりを誰も立てられなかったら。


 ……死にたくない。


 暗闇の中で、自分の醜く身勝手なエゴに引き裂かれそうになりながら、私はただ声も出さずに泣き続けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ