31.田中 有紀9
翌日、お父さんは「夕方には帰る」と言って、どこかへ出かけていった。
私には、家で一人、することが何もない。
また、暗い部屋でパソコンの画面と向かい合うしかなかった。
勇気君の連絡先、お父さんに聞いておけば良かったな。
お父さんが帰ってきたら、絶対に教えてもらおう。
あ……そうだ、橘風花さんに電話してみようかな。
家の電話番号なら、お葬式の記憶や過去の連絡網を探せばわかるはずだし。
でも……やっぱり、ちょっと怖い。
なんでだろう。
なんで私、こんなにウジウジしているんだろう。
このまま私、一生この暗い部屋で、何かに怯えながら生きていくのかな。
そう思った瞬間、止めどなく涙が溢れてきた。
ボロボロと涙が止まらなくなり、結局、電話どころではなくなってしまった。
その夜。
コンコン、とドアをノックして、お父さんが私の部屋に入ってきた。
「有紀。今晩、お前の携帯を貸してくれないか?」
「え……いいけど、何に使うの?」
「あの西本の写真を、少し詳しく調べたいんだ」
「いいけど……でも……」
私は言い淀んだ。
「ああ、そうだったな。心配しなくていい」
お父さんは、ひどく穏やかな、優しい声で言った。
「西本の写真しか見ない。絶対にだ。誓うよ」
「……絶対だよ」
私は渋々、自分のスマホをお父さんに手渡した。
翌朝。
昨日たくさん泣いたせいか、目覚めた時の私の頭は、嘘みたいにスッキリとしていた。
よし、今日こそ電話をしよう。
机の上を見ると、お父さんが返しにきたのか、私のスマホが静かに置かれていた。
それを手に取り、大きく深呼吸をする。
緊張で指を震わせながら、私は橘の家へとダイヤルした。
プルルル、プルルル。
『……はい』
電話に出たのは、梨花のお母さんだった。
そこで私は、彼女の口から信じられないことを聞いた。
通話を終わらせると、そのままスマホをみつめた。
……まさか。
私は背筋を凍らせながら、写真フォルダを開いた。
息が、止まりそうになった。
六枚あったはずの写真が、五枚に。
間違いなく、一枚減っていた。
お父さんは昨日の夜、私の携帯を使って……誰に。




