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呪音の連鎖 ―写真が八枚になったらもう終わり―  作者:
第一部

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28/50

29.田中 有紀7

 私は一人、電気を消した暗い自室で、パソコンの青白いモニター画面と向かい合っていた。


 検索窓にお父さんが昔通っていたという中学校の名前を打ち込み、手当たり次第に過去の事件を漁っている。


 何も見つからない。


 でも、何かしていないと怖くて仕方がなかった。


 少しでも気を抜くと、私のスマホの中の写真がフラッシュバックする。


 死にたくない。


 梨花も、電話をかけてきた時、こんな絶望的な気持ちだったのだろうか。


 ふと、梨花の携帯のことを思い出した。


 お父さん、あの携帯を持って帰ってきてくれないかな。


 呪いの手がかりとして、どうしても中身を確認しておきたい。


 あの保科勇気という能天気な男は、あの中身を見たのだろうか。


 直接聞いてみようかと思ったが、連絡先すら交換していなかったことに気づく。


 ……え?


 もし、中身を隅々まで見たのだとしたら。


 梨花の裸の写真も全部見られたということ?


 許せない。あいつ、絶対に許さない。


 恐怖で擦り切れた私の感情は、どこか焦点のずれたドロドロとした怒りとなって、会ったばかりの男へと向けられていた。


 ギリッと奥歯を噛み締めた、その時だった。


 画面をスクロールしていたマウスポインタが、あるマイナーなオカルト系まとめブログのリンクでピタリと止まった。


『〇〇中学校・衝撃の焼身自殺! 実は呪いだった!?』


 悪趣味なタイトルに嫌悪感を抱きながらも、すがるような思いでクリックする。


 ページの中央には、『当時三年生だったA氏へのインタビュー音声』という文字と共に、文字起こしされたテキストが羅列されていた。


『ではインタビューを始めますね。よろしくお願いします。まずは、あの事件のことを』


『あのことはよく覚えていますよ。その時の僕は、グラウンドで部活をやっていたんです。人数ギリギリの弱小野球部だったんですが……その時に、消防車のサイレンが近づいてきて、警察やら救急車やらもなだれ込んできて、学校中が大騒ぎになりました』


『何があったんですか?』


『校舎の裏で、人が燃えたって。すでに警察がバリケードを張って封鎖していたんで、遠くからしか見えませんでしたが……焼け跡の周辺が、真っ黒に焦げ付いていましたよ』


『なぜ、そんなことに?』


『橋田って二年生が、かなりエグいいじめをしてるってのは、僕ら三年生の間でも噂になってましたから。それが原因ですね』


『なるほど。それで……他には何もなかったんですか?』


『……いや、その少し後に、三井花音さんって女の子が死んだんです。これ、名前出して大丈夫なんですかね?』


『その辺は後で修整しますので。その子はクラスメイトか何かですか?』


『同じクラスメイトで、橋田のいじめに加担してたって……あくまで噂ですけど』


『それで?』


『焼け死んだ子の怨念が、復讐したって話で持ちきりでしたよ』


『なるほど、恐ろしいですね。他には何か?』


『……橋田って奴のいじめのやり方が、えげつなかったんです』


『えげつない?』


『あいつ、『指名』させていたみたいなんですよ』


『……指名?』


『ええ。いじめている相手に、次は誰をいじめたらいいか、ターゲットを指名させていたんです』


『それは……ひどいですね』


『それで、その死んだ子の呪いが……今もその『指名』のルールで続いているとか、そんな気味の悪い噂が立ってましたね』


『それは恐ろしいですね。恐怖の、呪い指名……。信じるか信じないかは、あなた次第です!』


 記事は、そこで終わっていた。


 いかにも三流のオカルトライターが書いたような、ありがちで馬鹿馬鹿しい締めくくり。


 読者の恐怖を煽るだけの、チープな都市伝説の記事だ。


 ……なのに。


 パソコンの画面を見つめる私の全身の震えは、どうやっても止まらなかった。


 ――なんだこれ。『指名』?


 いじめられ、焼き殺されたあの少年の怨念?そんなことあるわけない。


 あるわけないと、信じたかった。





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