表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
写真を八枚にしてはいけない  作者:
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/50

23.田中 悠聖3

 私はメモ帳を片手に、震えそうになる指を抑えながら、まずは駒田さんの実家へと電話をかけた。


 数回のコールの後、「はい、駒田です」と年配の女性が普通に出た。


 私がかつてのクラスメイトだと名乗り、少し話を聞きたいと告げると、「今は仕事で不在なので、帰ったら本人からかけ直させます」と事務的に伝えられ、通話はあっけなく終わった。


 次に、吉田の家にかける。


 正直、少し気が進まなかった。当時の記憶がうっすらと蘇るが、あまり良い思い出はない。しかし、背に腹は代えられない。


 意を決してダイヤルしたが、電話に出た親は「息子はもう何年も前に家を出ていて、連絡先も知らない」と冷たく言い放った。


 親子の縁が完全に切れているような口ぶりだった。何も掴めないまま、受話器を置く。


 残るは、西本の実家だ。


 スマホを持つ手が、じっとりと汗ばんでいた。息を止めるようにして番号を押し、耳に当てる。


 プルルル、という無機質な音がやけに重々しく響いた。


『……はい。西本ですが』


 出たのは、若い女性の声だった。


「あ、突然申し訳ありません。私、田中悠聖と申します。ご家族の方でしょうか」


 「妹ですが」


 声が上ずってしまった。どう切り出せばいいのか、頭が真っ白になる。


「あの、何と言うか……お兄さんのことで、少し聞きたいことがありまして」


『……何の嫌がらせですか?』


 声の温度が、一瞬にして氷点下まで下がった。


「い、いや、私は昔のクラスメイトだった男です。その……ひどいことがあったと、ごく最近になって耳にしましてね」


『興味本位ですか?』


 鋭い拒絶の言葉に、私は完全に言葉に詰まってしまった。しどろもどろになる私を見かねて、隣で震えていた有紀が、強引にスマホを奪い取った。


「すみません! 私、田中悠聖の娘で、有紀といいます!」


『は?』


「あなたのお兄さんの写真が、私の携帯に勝手に現れているんです!私の友達は、多分それが原因で昨日死にました!お願いです、呪いを解く方法を、何でもいいから教えてください!」


 悲鳴のような有紀の訴えに、電話の向こうの妹は、底冷えするような声で吐き捨てた。


『何の冗談ですか? 人の死をからかうような、ふざけたことはやめてください』


「ふざけてなんかいない!」


 有紀の目から、大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちた。


「ふざけてない! 私、死にたくないの! こんな変な、わけのわからない呪いみたいなもので殺されたくない!」


『……大丈夫ですか? 一度、精神科に行かれたほうがいいかと思います。私から話すことは何もありませんので』


 ガチャリ。


 無慈悲な切断音が、リビングに響き渡った。


 有紀はスマホを両手で握りしめたままその場に崩れ落ち、絶望感から声を上げて泣き始めた。


 重苦しい空気が部屋を支配する。誰もかける言葉が見つからない中、


 後ろで立っていた保科勇気が、ひどく場違いな、軽い口調で言った。


「まあ、なんとかなるって。そんな、くよくよするなよ」


 その能天気な慰めが、極限状態にまで張り詰めていた有紀の何かをプツリと切った。


「うるさい!ばか、死ね!!」


 有紀は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、保科に向かって絶叫した。


 呪いで死の淵に立たされている娘の、痛切すぎる怒りの爆発だった。


「有紀、言い過ぎだぞ」


 私は慌てて娘をたしなめた。彼だって、悪気があって言ったわけではないのだから。


「でも……! でも……ッ!」


 有紀が子供のように泣きじゃくった、その時だった。


 ――プルルルルルッ!


 不意に、私の手の中のスマホが甲高い着信音を鳴らした。


 ビクッと肩を揺らし、画面を見る。見知らぬ番号だ。


 私は唾を飲み込み、通話ボタンを押して耳に当てた。


「……もしもし」


『……田中、悠聖君?』


 電話の主は、ハキハキとした女の声だった。


『駒田です』




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ