15.田中 有紀3
私は、自分の部屋から一歩も出られず、ただ震えながら何もできないでいた。
お母さんには、すべてを話した。
気味の悪い写真が増えていくこと。梨花が死んだこと。次は私の番かもしれないということ。
頭がおかしいと思われても構わなかった。とにかく、誰かに助けてほしかったのだ。
お母さんが私の話を完全に信じてくれたとは思えない。
それでも、怯えきる私を見て、優しく背中を撫でてくれた。
「もうすぐお父さんが帰ってくるから、それからまたゆっくり話しましょう。学校は、しばらくお休みすればいいわ」
慰めの言葉をもらっても、私の心は晴れなかった。
まるで光の届かない、深く冷たい海の底に沈んでいるような気分だ。
部屋に引きこもる私にとって、ネットだけが唯一の拠り所だった。
何か情報はないだろうか。この理不尽な呪いのような現象を解く方法は。
ベッドの中でスマホの画面を見つめ、必死に検索を繰り返す。しかし、家から一歩も出られない今の私にできることは、あまりにも少なかった。
藁にもすがる思いで、梨花の携帯を拾ったという『あの人』に再度連絡を取ろうとしてみたが、電話は繋がらなかった。
あのネットの書き込みの主に送ったメールにも、一切の返信がない。
完全に、八方塞がりだ。
どうしたらいいんだろう。このまま、暗い部屋の中で死を待つしかないのだろうか。
そんな絶望に押しつぶされそうになっていた夜、ようやくお父さんが帰ってきた。
コンコン、と控えめなノックの音がして、暗い部屋のドアがゆっくりと開く。
お母さんからある程度の事情を聞いたのだろう。スーツ姿のままのお父さんが、心配そうな顔で部屋に入ってきた。
「有紀……」
その顔を見た瞬間、なんだか無性に涙が止まらなくなった。
ずっと気を張っていた糸が切れたみたいに、ポロポロと涙が溢れてくる。
久しぶりに見るお父さんは少し頼もしくて、どうしても助けてほしくて、私は子供のように泣きじゃくった。
「大丈夫だ。ゆっくりでいいから、お父さんに話してみて」
ベッドの端に腰掛けたお父さんが、静かな声で促す。
私はしゃくり上げながら、梨花の身に起きたこと、そして今、私のスマホに起きている異常な現象について、すべてを打ち明けた。
そして、震える手で自分のスマホを差し出した。
削除できないフォルダ。そこに収められた、あの中学生の男の子や、私の姿が写った気味の悪い写真たちをお父さんに見せるために。
画面を覗き込んだお父さんの表情が、ピタリと止まった。
最初は、娘の不可解な話に戸惑うような顔だった。
しかし、画面の中の『笑顔の中学生の男の子』の顔を見た瞬間、その顔からスッと血の気が引き、信じられないほどの恐怖に歪んでいった。
スマホを持つお父さんの手が、かすかに震え始める。
「お父さん……?」
私が恐る恐る声をかけると、お父さんは画面から目を離さないまま、うわ言のように呟いた。
「西本……」




