11.保科 勇気4
「……この写真が増えるのは、なんなんだ」
さすがに、ちょっと気味が悪いぞ。
俺は自分のスマホを睨みつけた。
あの中学生の笑顔が、画面の中で増殖している。削除ボタンを押しても、やはり消えない。
ちょっと調べてみるか。
検索窓に『携帯 写真 増える 削除できない』と打ち込んでみる。
うーん、色々な解説ページや知恵袋が出てくるが、どれも容量不足だの同期エラーだの、なんか違う。
しらみ潰しにサイトを回るが、解決策は見つからない。
と、ある一つのSNSの書き込みが目に止まった。
『見覚えのない中学生の写真が増えた人は、必ず見てください』
おー、これだ。やっぱり、そういうタチの悪いウイルスが出回っているのか。
スレッドを開くと、短い文章と共に『ここをクリック』というリンクが貼られていた。
迷わずタップする。
次の瞬間。
『……ピ……ピピ、ピー……』
スマホのスピーカーから、唐突に変な電子音が流れ出した。
背中がびくっと跳ねる。
あ、これ、聞いたことあるな
あの薄暗い道で、落ちていた携帯を拾い上げた時に鳴った、あの不気味な着信音だ。
いや、少し違う気もするな。
音が止むと、画面の中央に一文だけが表示された。
『この音を聞いたことのある人は、ここにメールを』
……なーんか、怪しいけど。
どうするかなー。これを送ったら、変な架空請求とか来ないよな?
少し迷ったが、どうせ使っていない捨てメールアドレスがある。それで送ってみるか。
俺はアドレスから、『中学生の写真が増えてます。この音聞いたことあります』とだけ打ち込んで送信した。
さて、どうなるか。
――ピロン。
「えっ? もう返信来たの?」
早すぎる。自動返信か?
受信トレイを開くと、そこにはたった一言、『ここに電話をしてください』というメッセージと、見知らぬ電話番号だけが記載されていた。
「うわ、絶対怪しいやつじゃん」
俺は鼻で笑った。
高額請求待ったなしの手口だ。あー、危ない危ない。うっかり騙されるところだった。
さて、気を取り直して飲むか。
スマホをテーブルに放り投げ、冷蔵庫から二本目のビールを取り出す。
プシュッ、と小気味良い音を立てて一口飲んだところで、またスマホが鳴った。
『電話が無理なら、そちらの電話番号を送ってください。こちらからかけます』
画面を覗き込み、俺は眉をひそめた。
おー、心が読まれてる? こっちが警戒して電話しないことを見透かしているような文面だ。
でも、見ず知らずの相手に電話番号なんか教えるわけないだろ。
無視してビールを飲んでいると、数分後、三通目のメールが届いた。
熱心だな。よっぽどいいカモだと思われたか?
半ば呆れながら、俺は通知画面を開いた。
『私は、田中有紀という名前の高校生です』
『もし、その写真が増えているなら、あなたの身にとんでもない危険が迫っています』
『お願いです。どうか連絡をしてください』
……田中有紀?
誰だっけ? よくある名前か。
田中は日本一多いとかっていうしな。
「うん、怪しい」
俺は迷うことなくそのアドレスを受信拒否に設定し、きれいさっぱりブロックした。
これでよし。せっかくの休みに、詐欺師なんかに付き合ってられるか。
俺は中学生の写真を気に留めることもなく、ビールの缶を傾けた。
その時拾った電話が鳴った。




