10.保科 勇気3
目が覚めた。
いやー、もう十一時だ。よく寝た。
さて、休日の始まりだ。棚の上の携帯に目が行くが、まだ出かける気分じゃないな。
とりあえずメールでもチェックして。
あー、そういえば昨日飲んだちょっといいビールの写真、SNSにあげておくか。良い休日を過ごしてますよっとね。
俺は自分のスマホを手に取り、写真フォルダを開いた。
「……あれ、なんだこの写真」
思わず声が出た。
ビールの写真のすぐ横に、見覚えのない画像が保存されていた。
これ、昨日の拾った携帯に入っていた中学生じゃないか?
急いで拾った携帯を開き、画面を見比べる。
まったく同じだ。学生服を着た男の子が、画面の向こうから満面の笑みを浮かべている。
すごい笑顔だな。……じゃなくて。
「なんか、Wi-Fi経由で感染するウイルスか?」
うーん、そういう小難しいことはよくわからん。
とりあえず削除しとくか。ウイルス対策アプリ、しっかり働けよー。
……あれ。消せない。消せないぞ。
なんかヤバそうだな。なんだこの性格の悪いウイルスは。
困ったな。とりあえず、感染源らしきこの危険な拾い物の携帯は、電源を落としておくか。
仕方ない。面倒だが、早く警察に持っていきましようかね。
携帯をどうするか考えながらテクテク歩いていくと、駅前の交番に着いた。
……閉まっていた。
「え、交番って閉まるの?」
窓口には無情にもブラインドが下りており、『御用の方はこちらの電話で』という案内書きがある。
とはいえ、「携帯拾いました」程度の用事で、わざわざお巡りさんを呼び出すか?
うーん、明日にするか。
仕事に行くときの朝の時間帯なら、いつも誰かしら立っているもんな。
あー、何だよ。せっかくここまで来たのに。
ため息をつきながら帰り道を歩いていると、道端に猫がいた。
ブロック塀の上で、気持ちよさそうに丸くなって寝ている。
これはシャッターチャンス。
俺は画面も見ずにスマホを構え、瞬間的にシャッターを切った。こういう早撃ちは得意なのさ。
パシャリ。
上手く撮れたか確認するために画面を見る。
……インカメラになっていた。
画面いっぱいに、間抜けな自分の顔がドアップで写っていた。
気を取り直してカメラを切り替えようとしたが、物音に気づいた猫はあっさりと逃げてしまった。
良くない。今日はなんだか、良くない一日だ。
しかし、俺は過去は気にしない。未来に進む男なんだ。
帰宅して、ソファでのんびりとくつろぐ。
気を取り直してSNSを開こうと、ふたたび自分のスマホの画面を見た。
写真のフォルダが目に入り、俺の親指がピタリと止まった。
あの写真が、また増えていた。
あれ?




