エピローグ2
灰色の雲が、重く空を覆っていた。
線香の燻る匂いが、冷たい風に乗って流れていく。
長介は、真新しい墓石の前に一人で立っていた。
ヨレヨレのコートのポケットに手を突っ込んだまま、くわえタバコで短く息を吐き出す。
「康介、頼まれてた調査の続きだ」
長介の低い声が、静寂の墓地に吸い込まれていく。
「あの橋田ってガキの昔のこと、少し洗ってみたんだよ」
冷たい墓石は当然、何も答えない。
「あいつ、元からいじめられっ子だったわけじゃねえみたいだぞ」
「前の町にいた頃は、むしろいじめの主犯格だった」
「動物の虐待とか、かなりエグいことも平気でやってたらしい」
長介はタバコの煙を吸い込み、忌々しそうに目を細めた。
「両親は、火事で死んでる」
「それで親戚に引き取られて、この〇〇町に越してきたんだとよ」
火事。
炎の中で狂ったように笑っていたという、無表情な少年の姿が長介の脳裏をよぎる。
両親の死すら、ただの偶然だったのかどうか。
最初から、あいつは人間じゃなかったのかもしれない。
「今更こんなことがわかっても、もう意味はねえかもしれんな」
長介はタバコの火を携帯灰皿でもみ消し、短く鼻を鳴らした。
「でもよ、お前はこういうの、どうしても知りたいタイプだろうと思ってな」
長介は踵を返し、ゆっくりと歩き出した。
「代金は、つけとくぜ」
乾いた足音が、冷たい石の立ち並ぶ道を遠ざかっていく。




