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大会5


 私は自分の席へと、腰を落ち着けた。

 周囲を見渡すが、自分の卓には知り合いは運良く誰もいない。フール、ガルダとハゲの三人の実力は知っているから、正直当たりたくない。

「よぉ、旅人の嬢ちゃん」

 隣の席に座った、体のいい男が私に話しかける。

「何よ?」

「何だ、愛想悪いな。いやーよぉ、旅人が決勝に来るなんて珍しい事もあるんだなとよ。あんた、どんなトリックを使ったんだ?」

 私が適当にあしらったにも関わらず、彼はグイグイと会話に足を突っ込んできた。

 正直、苦手なタイプ。

「別に何でもいいでしょ?それに、私は不正なんてしてないわよ」

「そうかよ。だがな、この卓では俺が勝つぞ」

 彼の言葉に、私の逆サイドが反応した。

「おいおい、それは聞き捨てならないな。勝つのはこの僕だ」

 眼鏡をかけ、髪の毛を綺麗にまとめている。横の筋肉とは正反対なイメージが強い。

「何だと?お前なん、この筋肉で叩きのめす」

「ふっ。頭の筋肉弱そうですがね」

 私を挟んで睨み会うのは、本当にやめてほしい。


 そんな事がありつつも、試合は始まった。

 初戦。私の手札はかなり良好だ。これなら、かなりよい勝負に持ち込むことが出来る。

 私が呑気にそんな事を思いながら、よこの机をチラッとみた。

 そこには黒1枚が置かれていた。

 黒1枚?そんな数字を1回でかけるの?

 逆サイドを見ると、同じように黒1枚が置かれていた。筋肉とメガネだけでなく、私以外が黒1枚、多い人で黒2枚をかけている。

 一方の私は緑が1枚。

「なぁ、旅人の嬢ちゃんよ。そんなはした金で勝てるのか?」

 隣の筋肉が私の顔を見ながら、ニヤニヤと口角を緩ませていた。

 私はそいつを睨めつけながら、

「ダブルで」

 といって掛け金を2倍にする。 

 第一セットは、手札が良かったこともあり勝つことが出来た。


 順々にディーラーは変わっていく。当たり前だけれど、ディーラーによって破産する人が周囲では後をたたなかった。自分の持ち金以上の人にブラックジャックでも出されれば、瞬時に破産するのだ。

 私は掛け金が少ないこともあり、破産にはなりそうもなかった。一方で、ディーラーの番が回ってくる。


「旅人の嬢ちゃん。ギブアップするなら早い方がいいぞ?」

 そう煽りをする筋肉は、黒2枚を賭けている。その上でダブルもして黒4枚をも賭けていた。

 一方で私の手持ちは黒1枚ほど…。

 他の人も黒1枚以上を賭けているし、今のところ私の卓では脱落者が一人もいない。

 私は、望遠時計を見るために、視線を落としている。

 やばい、という雰囲気を出しながら視線を落とすことで、これを自然に行うのだ。

 筋肉は計20。確かに、調子に乗ってもいい数字だ。眼鏡はカメラの角度が悪くて見えないが、残りは16とバースト。あせる数字ではない。

 カードを引いていくと、運悪く16まで数字がきた。

 しかし、これでは筋肉に黒4枚持っていかれるので、-黒2で破産になってしまう。

 えぇい。引くわ。

 汗でカードが手にへばりつくが、それも気にならないぐらいの緊張をしていたのかもしれない。

 机に手を打ち付ける勢いで、カード引いた。

「21…」

 神様は私に味方をした…。

「ちっ。やられたか」

「よく勝負をしたな。あんた、実は結構金銭あるんじゃないか?」

「ふんっ。やられました」

 彼らは口々に呟くが、私は何かを言い返すほどの気力が残っていない。

 この賭けにより、私は黒8枚を得ることに成功した。


 ぐるぐると順番が回転していく。私は、相変わらず勝負を避け続け、ディーラーでも手持ちが増えたことで勝負をする必要はなくなっていた。

 そして…人は消えていく。


「なぁ、終わりにしようぜ?そろそろ、ちまちま行くのにも飽きたんだんわ」

 そういい始めたのは筋肉だ。

 ディーラー眼鏡で、この卓で残っていたのは、この3人だった。

「いいですよ。お互いに掛け金を最大できれば、僕を潰せるでしょう。失敗すれば、僕の一人勝ちですけど」

 眼鏡も乗り気だったがが…私は違和感を覚えていた。

 あまりにこの2人が、仲良くなさそうであったことにだ。

 喧嘩を吹っ掛けたのは眼鏡であった。しかし、そこ突っかかるほど馬鹿なように、筋肉には見えない。何せ、ここまで勝ってきているのだ。

「そうね…」

 私も手持ちの黒15枚を場に出した。

そのあとで、私は台に肘を置くとニヤリと微笑む。

「ねぇ、残念ね。私の勝ちよ。この3人になった時点で、2対1になっているんだもの」

 ハッタリをかける。

 もし、彼らが共闘しているなら、どっちかが裏切ったと思させればいい。そうでなければ、相手を紛らわす事として使わせてもらう。

 私の発言に、眼鏡と筋肉の視線が合致した。

 どうやら、正解だったらしい。これで、今後2人が協力し合う事は無い。

 私の手札は16だった。正直、少し危ない数字ではある。

 人数が減ったことで、望遠レンズは眼鏡の手札をも映していた。しかし、眼鏡は私と筋肉が共闘していると思っている、そうすると、片方ではなく両方に勝たなくてはいけない。

「…つ」

 眼鏡の手札は16になる。引くかまよっているようだ。

「どうしたの?ま、私の手札にはかなわないと思うけど」

 目の前にあるカードをいたずらに叩いて見せた。

 しぶしぶとカードを引いた眼鏡は

「っ」 

 と言葉を発して、手札を投げた。


 彼はバーストしたのだ。これで、筋肉との一騎打ち。






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