大会6
「なぁ、旅人の嬢ちゃん?お前、俺らの関係を割いたな?」
眼鏡がバーストしたことで、筋肉は気が付いたようだ。眉をしかめて、私の事をじっと睨みつけていた。
しかし、私は彼に笑顔を返した。
「さて、勿論。最後の勝負って事でいいわよね?」
ディーラーは筋肉。私の手持ちを全てかければ、彼を破産に追い込むことが出来るはずだ。
「ちっ。厄介な嬢ちゃんだぜ。いいぜ、乗るしかないけどな。だが残念だな。あんたのチップは黒30枚あるがな、俺は40枚持っているんだ。一発では俺を倒せんぞ?」
彼の言葉も一理ある。私は彼に2回連続で勝たなくてはいけない。しかも、私は一回負ければそれまでで再起不能だ。
黒30枚を台の上に置いて、カードを受け取った。
数字は9。
この数字なら、どんな数を引いても21を超す事は無い。勝負。
「ダブル」
私は掛け金を2倍にする宣言をした。
その言葉に、筋肉ではなく審判が止める。
「アイリ様。チップを台の上に乗せてください。なければ、ダブルは認められません」
私はゆっくりと無言で席を立ち上がる。
審判の横を通り過ぎて、司会の真下まで来た。
そして、彼に向って、
「ねぇ、そこの拡声器を持ってうるさい貴方?それ、貸してくれない?」
と大声で尋ねる。
するとそいつは、とびっきりの笑顔で音量をマックスにした拡声機で叫ぶ。
「きけえぇえええ。旅人プレイヤーから何か言いたいことがあるそうだぞ!!命乞いか!?」
私の耳に、大きすぎて処理できないほどの音量が頭を駆け巡る。
心の中で小さく舌打ちをした。
「ほいよ。受け取れ」
上から降ってきた拡声器を、私は両手で丁寧に受け止めた。
こ、これが拡声器。綺麗な曲線に白いフォルム。見たことはあったけど、実際に触るのは初めてにある。この三角形を模した形が、何とも言えない。
と、オーパーツに浸っている暇は無いんだった。
息を大きく吸い込み、私は目をかっと張り上げる。
「私に投資しろ!勝てば上乗せして返してやる!!!!!」
私の叫び声は、音から電気信号になり、それが何倍にも拡張されてスピーカーから外へと飛び出していく。
会場をこだまし、観客の耳へと、いや会場にいるすべての人へと声が届いた。
その後、一瞬の静寂に周囲が包まれた。
しかし、コンマ数秒開けてだ、私の頭に何か固いものがこつんとぶつかった。
「いたっ」
頭を押さえながら地面を見ると、そこには緑1枚が転がっていた。
降ってきた位置から上を見上げると、誰とも知らない人ピースサインをしている。
そして、
「面白いな。でもな、上乗せはいらねぇ。優勝しろ」
と叫んだ。
それが起点になった。空からは、安いが大量のチップが降ってきた。
恵みの雨だ。だが、痛い。
自分が思っていた以上に、私の卓を見ている人は多かった様だ。それとも、旅人である私がそれほど珍しいのか。
「おいあんた。優勝しろよ」
「優勝したら、俺らの願いを叶えてくれ」
「あんたならいける」
口々に叫ぶ観客の言葉は、まるで、私以外の人に優勝してほしくないないような言葉で溢れていた。
そういえば…何も聞いていなかったけど…
優勝したら何が貰えるのかしら?
「満足したか?」
筋肉は、相変わらず顔をしかめていた。
「ええ」
私はかき集めたチップを台の上に置いた。黒60枚が私の前にそびえ立つ。
もちろん、勝たなければ意味がない。
カードを引く、計15…どうするか。
私の不正は、プレイヤーの数が多くないと使えない技だ。相手の手札を見ることしかできない。だから、ディーラーの時に、負けが多いか勝ちが多いかで、勝負するかしないかを決める。
だから、こういう時にはどうすることも出来ない。かといって、大口をたたいて負けるわけにもいかないのだ。ここは勝負をする…か…。
カードを握る手が汗で濡れていく、こうしている間にも、相手に感情を読み取られていく感覚がする。
丁度その時、私の視界にフールの姿が映った。
彼は勝ったらしく、余裕そうな顔して私の様子を見ていた。
「…さぁ、どうしますか?アイリ様?」
審判が私を催促する。
分かっている。危険すぎる。ほぼ半分の確率で負けるのだ。
悩む私に、再びフールが視界に映った。
違う、彼は私の視界に映る様に場所を移動しているのだ。何かを伝えたいのか、手でジェスチャーを施している。
カードを、引け?
「…1枚」
私はカードを引いた。
敵だと言った、彼の言葉を丸々と飲み込んだで、その結果、
私は決勝進出を決めた。
報告とお知らせと謝罪
お久しぶり。ゆーうにです。
諸事情により、本作品は第2部までとさせていただきます。書けなくなったというよりは、作品において致命的な問題があるためです。修正も考えましたが、それは別作品になってしまいます。
自作、猫耳少女と未来人でお会いしましょう。
※もう少し続きます。




