背水
ラピスが去っていった後、私はベッドの上に腰を掛ける。
「…敵か味方か…よね」
私は、器用に人差し指で記録の書物を回転させながら考えた。
もし、フール達が敵だとするなら、協力してくれた理由がわからない。それに、ラピスが怯えていた理由もだ。
何度も、昼間から何度も考えては答えが出なかった理由。それに、意味はあるのか。
夜が深くなっていった。思考と共に私は夢の中へと落ちていく。
翌日。
考えることを放棄した私は、大会会場に足を踏み入れた。
もう、どうにでもなれ。勝てばいい。
「ではでは、本戦出場者のご紹介をいたしますと~予選最速トッパ果たした~」
拡声器を使って、大きな声をあげる司会者を私は睨み付ける。
耳をつんざめくような大きな音に、機械的なノイズが私の耳を刺激するのだ。普通に聞いていてイライラする。死んでしまえばいいのに。
「そして、20人目は、旅人のアイリ!この国外部の人間が本線に出場をしたのは、過去にも例が無い。これは期待だ!」
その言葉に、昨日のラピスが言っていた事が事実に近いと再認識した。
話を聞く私の肩を、誰かが叩いた。
「アイリさん」
振り返ると、フールが立っていた。
「フールさん…」
「おや、何だか浮かない顔をしていますね?もしかして、予選のことをまだ気にしていますか?」
私は表情を、フールに読み取られたらしかった。
「…フールさん…」
私は意を決して、言葉を続けた。
「あなたは何者なんですか?」
フールは目を細目、ニヤリと微笑んだ。
「大会で優勝したら、教えてあげますよ」
フールの言葉に、私は少しだけ安堵した。それは、彼が何者かであったからだ。
「…分かりました。本線戦では敵ということですね」
「そうです。僕も含めて、ガルダもハゲも、皆が敵です」
私は、フールの言葉をそのまま呑み込んだ。
別に構わない。私が勝ってみせる。私には、記録の書物と望遠時計がある。これをうまく使えば、彼らにもきっと勝つことが出来る。
決意を表した私の耳に、再びあのうるさい声が入ってくる。
「では、本戦のルールだ。25名が5組に分かれる。戦い合い、破産するまで戦い合うデスマッチだ。最後に残った1人が、決勝戦進出だぁあ」
歓声が上がる会場。
今まではうざかったそいつの雑音は、私には聞き捨てない言葉へと変貌した。
「…え?破産するまでにデスマッチ?」
「あれ?アイリさん、知らなかったんですか?この大会、優勝者以外は、全員が破産して借金を負う事になるんですよ」
相変わらず、フールは笑顔だった。
…そうか。これ、負けたら強制労働所に絶対に連れていかれるんだ。
私は、記録の書物を他人から見られないように設置する。
設置するところを他の人に見られてはいけないし、設置してあるのを見つかってもいけない。そんな絶妙な位置で、なおかつ相手の手札が良く見える場所に置かなくてはダメなのだ。
本戦なだけあって、人の往来もかなりある。その全てに、注意を向けることは難しい。
たった一人にでも見られた時点で、不正だとばれる可能性があるからだ。
「ここなら…」
その場所は、拡声器と繋がっているスピーカーの上。
記録の書物がの色と合い、近付かない限り分からない。それに、高さも丁度良く、私の席の反対側にあたるため、位置も完璧だ。
これは勝機が高い。
話のきりがよいため区切ります




