大会4
大会は、川の流れのように進んでいった。
そんな川の流れに、私は完全に飲まれる形になる。
ちょっとの小さな選択ミスや勝負が、大きな失敗へと繋がっていくのだ。そういった意味では、私のその言葉の意味そのままを感じ取っていた。
初戦のディーラーで、私はバーストを起こしてほし8個を失った。実際にはフールの分は入れなくていいから、星6枚を失った私は、見事に破産スレスレを起こす。
そのまま勝負は終わり、私はマイナスで終わった。
しかし、フールが合計10枚を得たことで、プラスマイナスゼロといった結果で終わる。
「ごめんなさい」
戦いが終わった後、私は素直にフールへと頭を下げた。
「頭を上げてください。貴方が初心者なのは、分かっていた事です」
フールは慌てたように、私の肩を叩いて慰めてくれる。
しかし、私な不思議に思った。なら、なぜ彼は私なんかを仲間にしたのだろうかと。
私は馬鹿ではない。昔のような教育を受けていたわけではないが、長年の旅での経験が彼の行動に警告音を鳴らしているのだ。
利害関係の一致以外で、相手のリスクを負うのはおかしい。
「…私、邪魔よね?抜けた方が…」
私はフールの目を真っすぐと見つめながら、彼にそう尋ねた。
そんな私の視線をすり抜け、
「いえ。大丈夫です。それでは、僕のパートナーがいなくなってしまいますよ」
とフールは笑顔で言った。
周囲では、既に勝ち抜けた人が出てきたようだ。ガッツポーズをしながら、会場から出ていく人の姿がいくつか見受けられた。
その中に、光り輝く頭を見る。
「ハゲ?」
私の呟きが聞こえたのか、光り輝く頭は、こちらへと向かってきた。ハゲの横には、同じように光り輝く筋肉の姿も見えた。
近づいてくる、ハゲとガルダに、
「もしかして。彼らは初戦で勝ち抜けたのでしょうか?」
とフールが私に尋ねる。
フールの疑問に私が返事をする前に、ハゲが少し離れたところから大きな声でこちらに声をかけてきた。
「わっはっは。聞けよ、2人とも。ここに、40個の星がある」
ハゲがガルダの肩を叩き、ガルダはその大きな手のひらを広げる。彼の手の中には、溢れんばかりの星がきらめていた。それこそ、本当に40個ある様に見る。
それをみたフールを、腕を組むと口元が緩んだ。
「ほー。もしかして、初戦から相当な数をかけた卓でしたか」
フールの口ぶりは、まるで勝つのが当たり前のように感じられた。
「そうだ。俺らの、2人勝ちよ。ほれ。お前さんら受け取れ」
ガルダはそう言いながら、私に星10個を押し付ける。
「ねぇ…私って何もしてないのよ?貰っていいの?」
「いいって事よ。なぁ、フール?」
ガルダの言葉に、フールは笑顔で頷いた。
こうして、何もしないまま予選は終わりを迎えた。
突破出来たのは、25名。思ったよりも、数が少なかった。というよりは、ほとんど最初の戦いて本線への出場者が決まったらしかった。上手い人は、一回で全てを得るものなのだろうか。
そのあとは、フール達を避けるようにして、私は宿に戻った。
勿論、彼らには感謝をしている。しかし、この世界に置いて、親切では言い表してはいけないことも多く存在するのだ。
ベッドの上に寝っ転がりながら、私は考えた。
すると、勝手に部屋の入り口に誰かがいる気配を感じ取る。
そっと扉を開くと、そこの立っていたのは、ラピスだ。
「ラピスさん?どうしたんですか?」
「…アイリさん。お話を良いですか?」
何だか神妙そうな顔をしているラピスを、私は部屋へと迎え入れた。
「何ですか?急に」
ラピスは何かを言おうと口を開く。けど、また閉じる。視線を下に向けたり、何だか落ち着かない様子を見せた後で、彼女は心の決めたのか、こう言った。
「大会を辞退した方が良いですよ」
彼女の言葉に、私は困惑した。
「…何でですか?」
「聞きましたよ。失ったオーパーツの服を取り返すために大会に出たんですよね?」
ラピスはシュルーナの友達だから、聞いていたもおかしくない内容だ。
「そうよ。それが?」
「なら、辞退するべきです。シュルーナは私の友達ですが、彼女は石油採掘所のオーナーの一人なんですよ」
彼女の言葉に、私は目を細めた。
私の口の中にたまっていた唾が何処かに消え去り、乾燥していく。
「どういうことなの?」
「簡単な事です。相手を口車に乗せて大会に参加させて、借金をさせます。借金が返せない人は、石油採掘所送りになり、一生をそこで働かされて終るんです」
私は、ラピスが嘘を言っているようには見えなかった。
「…それが本当だとして、何でそれを私に?」
「シュルーナは、友達です。でも、貴方はフールさんと組んだ。だから、私は黙っているのが怖くなったのです。貴方に話しておかないと、彼に何をされるか分からないのですから…」
彼女の言葉の意味を、私は理解できなかった。シュルーナが、私を強制労働所に送らせるように企てていたのは分かる。素人に、この大会はレベルが高すぎる。予選を勝つために借金をして星を大量に買ってしまうというのが、狙いなのだろう。
しかし、フールとは…彼はただギャンブルが強いだけではないのか?
私はラピスの顔スレスレにまで、鼻を近づけた。そして、睨む。
「ねぇ。フールって何者?」
私の質問に、ラピスは答えなかった。
その代りに、ラピスは小刻みに震えていた。この前に見た、元気で可愛い彼女の姿は、何処にも見られなかった。まるで、猫に睨まれ鼠だ。
「かっかれ…わたっ…ごめんなさい」
ラピスは限界を迎えたようで、逃げるように外へと出ていってしまった。
お詫び
ギャンブルを書いてみたい。それが狙いで、この章が始まりました。しかし、思ったよりそれを表現するのは難しく、退屈な内容になっていると思います。
今後の試合シーンは大幅にカットし、読みやすさを重視します。




