教会の中(旅人の過去)
(旅人の過去)
とつけたものは、アイリの昔話が始まります
本編には直接関係ないですが、読むと謎が解きやすくなります
私がまだ旅を初めてから日が浅かったころ。そのときはまだ記録の書物も持ってなく、バイクさえなかった。
何で私は旅をしているのかと、教会から出たばかりの私はずっと考えていた。
「旅をしなさい。それが貴方が生まれた義務よ」
と教会を出る直前に言われた、その言葉が雄一の記憶だ。
感覚からして女の人だった気がする。けれど、それ以上思い出すことは出来なかった。
砂の丘がうねるように何処までも続き、地平線へと消えていく。終わりのない干からびた大地は、毎日が同じ景色で退屈だった。
その日もまた、日が頭の上に来ないうちに、
「あーつまらないよ」
と砂の上で大の字に倒れ込んでいた。
視界が白くなるまで太陽をじっと見つめる、何てことで遊んでいた私は実に能天気だった。
なにせ、教会出たときにぶら下げていたレーションと水は、朝御飯で食べたのを最後に無くなってしまっていた。
普通なら早く街を見付けなくてはいけないが、このまま砂漠の砂になってもいいかなと思っていた。
ゆっくりと目を閉じて、砂に溶け込むように目を閉じる。
「あーアイリ!まだこんな所にいたの?」
何もない砂漠で、1つの声が私の耳へと入ってくる。
振り向くと、一緒に教会を出た友達が立っていた。教会を出たときに着ていた白く簡素な布の服から、少しだけ色のついた服へと着替えている。
「?リー、先に行ったんじゃ?」
リーに手を引っ張られ、私は重い腰を起こしながら立ち上がった。砂をパンパンと払い落とすと、リーと向き合った。その時、彼女の後ろにも何人か人がいるのに気が付いた。
「戻ってきたのよ」
「戻ってきた?何でまた?」
「教会に帰るの。後ろの人もその仲間」
私より1つ上か、同じ年齢の子だろう。一緒に教会をでた子以外にも、知らない人も多かった。その数は10名ほど。
リーの言葉に私は首をかしげ、
「何でまた、その様子じゃ街は見付かったんでしょ?」
と尋ねた。
教会に戻ってはならない。そんな気がしている。というよりは、本能がそう叫んでいる。
「えぇ、街ならここから1日の距離よ。貴方も街に行けばその理由が分かるはず」
「…そうなの?」
「そうよ。じゃぁ、私達は行くから」
と数日ぶりの再会を足早にリーは立ち去ろうとした。
離れていくリーの手を、慌てて掴み、
「ちょっと待って」
と呼び掛ける。
リーがこちらを振り向くのに合わせて。
「えっと、水と食料…1日分くれない?」
「え?あ、うん。いいよ」
こうして難をしのいだ私は、ゴールも知ったことで、少しだけ元気という名前のやる気が湧いてきた。足を大きく開いてリズムよく歩き、その日の夕方には遠くに街を見ることが出来た。
「街…ね」
期待していたのとは違い、簡素な建物が並んでいるだけだった。人口はおおよそ100人程で、話によると周囲には3つの教会があるらしかった。
そして、その街についた私を、歓迎する人はいなかった。別に歓迎が欲しかった分けではない。ただ、ゴールしたという実感が欲しかっただけなのだ。
一方で街の人はとても親切だ。私の家を作るために、わざわざ数名の大きな男の人が岩を運んで組み立ててくれた。
こうして、私の生活が始まった。
朝起きて、水を組んで、レーションを食べて、寝る。それだけ。時々湧いてきたレーションを探すために家から出るが、それ以上は何もしなかった。
それが、たったの3日。
3日しか経っていないのにも関わらず、私は2畳しかない固い岩の家でゴロゴロと転がりながら、頭を抱えていた。
「まさか、外の世界がこんなに退屈だったなんて…」
転がる度に、硬い岩が私の身体痛め付ける。でも、こうしていないと、今生きていると思えなくなりそうな気がしてならない。
今日100回目となる、家の中での転がりを終えたところで、リーの事を思い出した。
(まさか、リーは教会に面白い物でもあると思って行ったのかな)
そう思った瞬間から、頭に中は教会の中の事で一杯になる。思い返せば、教会の中はどうなっていたのだろうか?何で私は覚えていないのだろう?
気が付くと私は旅の準備をしていた。蔦で編んだ水筒を4つほど腰かけ、背中にはこれでもかとレーションを背負う。
誰に別れの挨拶をするわけ出もなく、街から砂漠へと足向けた。数日前に歩いた砂漠は、私が歩いてきた足跡を吹き消している。道なんて物はなく、ただ真っ直ぐと進んで歩いた。
何度目かの朝、透き通るような早朝の空気を吸いながら歩いていると、教会が見えてきた。
三角の屋根には十字架が付いている。また窓には綺麗な色付きガラスがはめ込まれており、茶色の世界に雄一の色を添えていた。
私は砂に埋もれる足を動かし、だらだらと建物に近付いた。
「リーとかはたどり着いたのだろうか」
呟きながら、教会のドアをノックした。
が、反応はない。
もう一度叩いたが、それも反応がなかった。留守…とは考えにくかったので、その扉に手をかけようしした、がその時後ろから誰かに肩を捕まれた。
「アイリ…貴方も来たのね」
との声に振り向くと、そこにはリーが足っていた。ただ、脇腹からは血が流れ出た後が見られ、赤く染まっていた。
「リー!?どうして、何があったの?」
私は驚き、どうしたらいいか分からなくなった。顔から血の気が引いていくのが分かる。
「私はもうダメよ。最後に貴方の会えて良かった」
「何を言っているの?リー大丈夫、ほら教会の中で…」
と言いながら私が教会の扉を開こうとした。
それをリーが、
「ダメ、絶対に開けちゃだめ」
と肩を再び掴んで止めに入る。
「何でよ」
「その扉を開いたら 、中から攻撃されたの。大きな音と共に、私以外皆死んだわ、ほらこっち」
リーに案内されて、教会の裏手に回り込んだ。彼女は重そうに足を一歩引きずるように歩き、その度に脇を痛そうに押さえた。
私はリーの身体を支える。
「これ、私の体力じゃ無理だから、埋めてくれない?」
「…」
そこには、9人の死体が転がっていた。どうやったら、こんな死に方をするのか。全身の至るところに穴が開き、そこから血が流れた跡がある。頭に穴がある人は、もう顔の原型をとどめていない。
「分かった、リーは…そのケガは?」
「もうだめ。既に視界が眩んでるの」
リーは地面に座り込み、何もない虚空を眺めているように感じた。手が微かに痙攣し、顔も青白くなっている。
「リー…」
「ごめんね。教会から出たあと置いていっちゃって」
「いいのよ」
「あのときは、外の世界が素晴らしいって信じてた。はやく行きたかった。砂漠の向こうにある街が、どんなに楽しいか…でもそうじゃかった」
「リー。もう喋らないで」
私は瞼をゆっくりと下ろしていくリーに駆け寄り、肩を掴むと前後に揺すった。手にかかる力が、段々と重くなっていく。
「ねぇ、アイリ。私の代わりに探してよ。素晴らしい…この…せか…」
「リー!!」
目を閉じたリーは、二度と目を覚ますことは無かった。冷たくなっていくリーを抱き締めながら、私は教会の建物を見つめた。
それから…
一週間ほどお休みします




