3つの鍵
私の答えに、
「まぁ、確かにそうかもしれない」
とフールは同意をした。
けれど、その表情は何処か納得がいっていなく、私は彼の欲しかった解答をあげられなかったのかもしれない。
「僕はね、今の世界について考える事は趣味なんだよ。この世界の謎を解き明かしてやろう…てね」
この世界の…謎ね。
私はこの言葉で、フールが何をしようとしていて、何を目指しているのかを理解した。
この世界は魔法もなく、超科学技術も発展しなかく、ただ砂に多い尽くされているだけである。
けど、実際は少しだけ違う。私の旅の知識でも理解できない事がいくつか存在する。
勿論、この前のりんごの木、ゾンビやワームについてもそう言えるかもしれない。けど、あり得ない事ではない。
私は口を開き、
「この世界の謎って…3つの鍵?」
とフールに問いかける。
彼は腕を机にのせ、体重を預けると、私の方へと身体を寄せた。
「はい」
そして、こう続ける。
「レーション、子供、2つの月」
この3つを、3つの鍵と言った。
私達の会話に、横からガルダが割り込んでくる。
「レーションは何処から流れてくるのか。生殖機能を失った人類が、どうして教会から子供産み出せるのか。昔は1つだった月が、何故2つあるのか。だろ?」
続けて横にいるハゲが口を開くと、
「俺達、フール、ガルダと俺はその3つの鍵を解明しようとしてる」
と言った。
私はポケットからレーションを取り出すと、机の上に置いた。銀色の包み紙に包まれている。袋を破ると、中からは茶色をしたブロック上の食べ物が顔を見せる。
味はしない。
ただ、栄養価だけはある、それゆえ人類は生きていけている。
材料、製造者、製作過程と流通ルートまでが一切謎であるレーションは、私も一度は軌跡を辿ったことがある。しかし、必ず途中で糸が切れたように分からなくなるのだ。
彼らの話を聞いたあとで、レーションを口に入れると、
「食べれれば何でもいいと思うけど」
と私は言った。
それに対してフールは、
「それが普通の人だ」
とぼやいた。
フールだけでなく、ガルダとハゲも残念そうな様子を見せていた。
私は不思議で仕方がない。何でそんな事を気にするのか、この世界で不思議を解決した所で何が起きるのか。もちろん、趣味だというのならば、それまでだけど。
私は彼らに、
「何処まで分かったの?」
と尋ねる。
その言葉を待っていましたと、フールはポケットから1枚の紙を取り出し、目の前に広げる。そこには、見た感じではこの街の地図であるようだ。そして、多くの線が引かれていた。
「この線は?」
「レーションの来るルートを極限まで積めていった線です。これは僕の担当でして、結果は…まぁなんといいましょうか」
地図にかかれた倉庫から、1本の線を辿っていった。その先にあったのは井戸だった。
他の線も辿ると、次には教会の前。そして次は砂漠の中。またまた次は誰かの家。
一致する線はほとんどなかった。100はある線は、その統一性を一切示せていない。
「…ま、そうよね。だってレーションは、人が集まっている地面から不定期に湧いてくるっていうのが通説…」
「えぇ…これが僕の限界でした」
じゃぁ次は俺だな、といった雰囲気でガルダも1枚の紙を机の上に置いた。今度はこの街の地図ではなく、この周辺のある教会の位置らしい。
地図の隅には、数字がかかれた表グラフが見える。
「この数字はな、教会から出てきた子供の人数だ。そしてそれをグラフにしたもの。約5年分しかないけどな」
私はその数字に違和感を感じた。というのも、あまりに機械的な数字をしていたからだ。
「この教会が年20人で、こっちも20人?それも毎年全く同じ人数なのね」
「あぁ、しかも毎年必ず春に出てくる」
「教会の中には?」
「教会の中に入って、出てこれたやつの事を聞いたことがあるか?そりゃ、俺も子供の頃はあそこにいたさ。だが、記憶がない」
それもそうだと、私は言葉をつまらせた。教会の中に入っていった人は何人も聞いたことがあるし、見たこともある。けど、出てきた人はいなかった。
私も教会で生まれ、外の世界へと出てきた。しかし、中の様子や出来事に関しては記憶が曖昧である。黒い煙に包まれ、思い出そうとしても、それが出来ない。
「そうね…子供の生まれ方は私も気になるけど、それよりも死んだらどうなるかの方が私は気になるわ」
「…まぁ、旅人さん。普通の人はそうだよな」
最後は俺だな、とハゲが月の様に光る頭を輝かせながら、私の方を見る。
「2つの月だが…正直何もまだ分かってない」
ハゲの言葉は、短く寂しいものだった。
しかし、月と言うのは宇宙にあるもので、そう簡単に調べれるものではない。
「ただし、昔からある月がどっちかは分かる」
ハゲはそういうと立ち上がっると、窓に近づいていった。
後に続いて、私も窓の方へと近づく。
真っ黒な夜に、2つの月が仲良く並んでいた。片方は満月に近く、もう片方は三日月をしている。片方は黄色で…もう片方は青色をしていた。
「満月の黄色い月が、昔からある月だ」
自信満々にいうハゲだったが、残念ながら私はそれについて知っていた。
だから短く、
「えぇ、そうね」
とだけ答える。
後からきた2人も合わさり、4人で月を見つめた。
誰の手にも届かない月は、私達をあざ笑うかのように微笑んでいるように見えた。特に青い月は、望遠鏡で覗き込んでも青しか映らない。その不思議な月に、再び人類は行ける日がくるのだろうか?そんなことを思いながら、昔事を私は思い出していた。




