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初めての旅 10日目

閲覧、ブクマ、いいね!、評価ありがとうございます!


それでは、どうぞー!

旅を初めて10日目。

予定通り、ちょっと大きな街に着いた。


ここで、旅の仲間が一人離れた。 

あんまり話さなかったけど、その人は元々、この街までの契約だったらしい。


だから、この街でまた、旅の仲間を募集するみたいだ。

サヨナラした人は近距離戦が得意な人だったから、また近距離戦が得意な人が来てくれるといいな、と思ってる。

イクスさんは、いつもどおり。

ぶっちゃけて言えば、この商隊の護衛くらい、イクスさん一人で十分なのだ。

だから、イクスさんにとっては誰が入っても関係ないんだと思う。

イクスさんが、程々に手を抜いているのも知っている。目立たない程度で、それでいて、ちゃんと実力もあるとわかる程度。


リーアは、変態じゃないといいな、と思ってる。

そう言えば、変態はあれ以来リーアに話しかけてこなくなった。むしろ、リーアと目が合うと、青褪めるくらい。

きっと、イクスさんが何かしてくれた。

もしも次に何かあったら、潰していいってイクスさんには言われてる。

比喩なのか、物理的になのかはわからないけど。


そんなこんなで、街に着いた翌日。

新しいメンバーが決まったとかで、出発前に顔合わせをすることになった。



「私はリズ。よろしくね!」



そういう声は野太くて、目の前にいる人はすごく筋肉質で大きな体を持った男性だ。



「あら!すごく可愛い子が一緒なのね!」



そう言って、リーアに近づいてくるその人を見て、悟った。


(この人アレだ。前に師匠が言ってた、身体は男性だけど心は乙女な人だ)



「はじめまして、オネエさん。リーアです」



リーアが挨拶すると、その人は目をキラキラさせた。



「うんっ!はじめまして!」



そう言って、こちらに近づいてこようとしたリズさんが、後ろに引っ張られた。



「おい、筋肉ダルマ」


「いきなりの悪口?!」


「うるさい。リーにそれ以上近づくな。触れるな」



イクスさんが、ズリズリとリズさんをリーアから引き離す。



「なによっ!……あら、いい男」


「オネエさん。バルさんから離れてください」



イクスさんは確かにいい男だけど、他の人が言い寄るのは面白くない。



「あら?あらら?あー、二人って、そういう?」



言いたいことが良くわからなくて首を傾げたが、イクスはリーアをギュッと抱きしめた。



「そう。そういう関係」



イクスさんの言葉で、なんの話かわかった。

「そういう関係」とはっきり言われて、少し顔が熱くなる。

リーアはまだ、初潮を迎えたとはいえ子供だけど、イクスにはっきり関係を示されるのは、やっぱり嬉しい。

それに、イクスさんが言う前に、リズさんが自分たちをそういう関係だと思ってくれたのも嬉しかった。

だって、10も、歳が離れてるから。

少し身体が丸みを帯びてきたとはいえ、リーアはまだ子供から抜け出していないし、反対にイクスはどんどんカッコイイ男の人になっていってるから。

リズさんと違って、イクスの筋肉は無駄がなく靭やかなものだ。

ぱっと見では細身にすら見える。

でも、脱いだらすごいし、触ってみたらわかるし、わかる人なら、服の上から見ただけでもわかると思う。



「そうなのねぇ。お似合いじゃない、美男美女で」


「ほんとに、そう思う……?」



嬉しくて、ちょっとリズさんに聞き返したら、イクスにしっかりと抱き直された。



「リー。何簡単に心許してるの」


「え、でも……」


「リーアちゃん。チョロいって言われない?」



(え、私ってそんなにチョロいのかな)


イクスの顔を見上げると、うん、と頷かれた。

ちょっとだけショックを受ける。 



「可愛くていいじゃない。ま、とりあえずよろしくね。私の得意な武器はコレよ」



リズさんがボックスから取り出したのは、ハンマー。

しかも、ものすごく大きな。


(うん。ある意味、すごく似合ってる)



「近距離だよな?」


「もちろんよぉ」



他の人に聞かれて、リズさんが答えている。


旅の途中で、リズがハンマーをぶん回して、敵をバッタバッタと吹っ飛ばすのを見るのは、まだ少し先の話。



「それにしても、やっぱり二人はそういう関係だったのか」



リズさんとのやり取りを聞いていたみたいで、他のメンバーが話しかけてくる。



「兄妹じゃないって言ってたけど、すごく距離が近いし、シュバルツの独占欲がすごいから、もしかしてそうなのかとは思ってたけど」


「うるさいよ。俺達のことは放っておいて。あぁ、リー。駄目だよ、そんなにかわいい顔、他のヤツに見せちゃ」



そう言って、イクスさんは私を胸の中に抱き込む。

他の人から顔が見えないように。

たぶん今、自分の顔は、だらしなく緩んでると思う。

だって、すごくうれしい。



「お仕置きされたい?」



コソッと、イクスさんが耳元で囁いた。

たぶん、いやきっと他の人には聞こえてないと思うけれど、また顔が熱くなる。



「まー!熱い熱い。ここだけ常夏ね!」



リズさんの言葉に、みんなが笑った。







「じゃ、出発するか」



変態の言葉で、一行は動き出した。

フォーメーションは、いつもと同じで、イクスとリーアが馭者台。他のメンバーは荷台だ……と思っていたのだけれど。



「やっぱり、依頼主のそばにはちゃあんと護衛がいないとねぇ」



依頼主(変態)の乗る馬車の中から聞こえてくるのは、リズの声だ。

荷台に乗るのが嫌だったんだろう、とイクスは言っていたけれど、本当のところはどうなのかわからない。


依頼主(変態)の太った見た目は、どう考えてもリズの好みではないと思うし、馭者台の乗り心地は荷台とそれほど変わらないので、そう考えると、やはり乗り心地を優先したのだとも考えられるけれど。


最終目的地である、南の端の街まで、あと数日。

それまでは街には寄らない。

ずっと野営だ。


この旅の終わりが、見えてきた。

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