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隠密騎士は反撃する

いつもお読みいただきありがとうございます!

ブクマ、いいね、評価してくださっている方、

ありがとうございます!

これからもがんばります!


※イクス視点です


では、どうぞー!

翌朝、イクスはいつもどおりの時間に目が覚めた。

睡眠時間は3時間といったところか。

それでも、季節に関わりなく日の出より前に目が覚めるのは、長年培ってきた経験ゆえだろう。



「リー。リー、起きて」


「ん……イクスさん」



リーアは、目を覚ましてイクスの顔を確認すると、すぐに動ける体勢をとった。

たぶん、いつ襲撃者が来てもいいように、緊張していたのだろう。

ここまで来る間の隠れ家でもそうだった。



「慌てなくて大丈夫。朝の鍛錬の時間だよー」


「あ、そっか」



リーアが起き上がって、顔を洗ってくると、俺は寝室を出る。


(ぽーんと俺の前で裸になってたのがなんか懐かしいなぁ)


扉の向こうでゴソゴソと音がして、すぐにリーアが顔を出した。



「おまたせ。いつでも始められるよ」


「じゃ、外に出ようか」



リーアはいつもの動きやすいワンピース。

動きやすさを重視していると言うより、ただ単に庶民のワンピースは動きやすいものが多いというだけだ。


まずは、筋トレ。

リーアにも、イクス程じゃないけど、そこそこ筋肉に負荷がかかるような動きをさせる。


それが終われば、今度は基礎的な体捌き。

入念に、何度も、体に覚え込ませるように繰り返す。

次は、イクス一人なら素振りなんだけど、リーアはナイフを持っての動き方。

素振りをしながら、横目でリーアの動きにおかしな癖がついていないか、確認する。



そんなことをお互い真剣にやっているうちに、夜が明け始めた。

この時間、普段ならリーアは素材の採取だ。

途中の隠れ家では、やっていなかったけど、もう、対策は考えたから、イクスの不可侵魔法がかかっている範囲内で、イクスが後ろをついて歩きながら、リーアはこの時間にしか採れないような素材や、森でしか採れない素材をいくつも採取していく。



「ねぇ、リー。手紙を開いた瞬間に、吸い込んじゃうような割と即効性のある毒がほしいんだけど、そういうの、作れる?」


「その手紙は、他の人が開く可能性もある?」


「いんや。ターゲットしか開けないようにするよ」


「じゃあ、皮膚に触れるだけで効くような毒がいいかな。死ぬまで、どれくらいがいい?」


「そうだな、五分かなー」


「わかった、すぐ作るね。お昼には出来上がると思う」


「俺のリーは優秀だねぇ」



褒めると、リーアは頬を染めた。


リーアは、気が付いているだろうか。

自分が、普通の庶民に比べて、歪んでいることを。

イクスがそうなるように仕向けた、というのもあるし、アンナの元で修行したせいでもあるだろう。


人に対して、毒物を使うことに、躊躇いがない。

それに、獣の捌き方を教えたときもそうだ。

いくら薬師とはいえ、動物の解体は、見ていて気分のいいものではなかったはず。

ベテランの冒険者ならともかく、リーアくらいの年齢なら、吐き気を催してもおかしくはない、

それなのに、解体の仕方を教えると、リーアは迷うことなく、自分も一体解体してみせた。

多少、皮をはぐのに苦労していたけれど、それだけだ。

それでも、「こちら側」に堕ちて来てくれたリーアは、すごく、イクス好みだ。

「こちら側」に来なかったとしても、それはそれで良かったのだけど、イクスの仕事に忌避感を覚えなければそれでよかった。

まぁ、そうなると自然に「こちら側」に来ることになるのだけど。



リーアの採取が終わって、二人で朝飯を作って食べ終わると、食器を片付けて、二人でそれぞれ自分の時間をとった。


イクスは、武器のメンテナンス。

リーアは、毒の作成だ。

アンナに貰った道具で、さくさくと作っていく。

割と細かい条件をつけたのに、リーアには全然なんともないようだ。

薬師として、何かを作っているのを見ることは、ほとんどなかったから、リーアがそれぞれ素材の重さを測ったり、量を加減したりしながら、薬研ですり潰したり、水で伸ばしたりしているのを、横目で見る。

真剣な顔は、やはりもう一人前の薬師の顔だ。



「イクスさん、出来たよ」


「ん、ありがとう。どうやって使うの?」


「この液体を、手紙の表面に塗るんだよ。そうすると、皮膚に触れただけで、毒が回るの。だから、塗るのは、最後に手紙を閉じる直前かな。間違っても触らないように、ピンセットで閉じるといいよ」


「おっけい!わかった」



イクスは、その場でサラサラと陛下への血の契約書と、契約しなければ五分で死に至ることを認めた手紙を用意する。

そこに、インクが乾いたのを確認して、リーアが毒を刷毛で塗布する。

最後に、ピンセットで手紙を閉じて、陛下以外には開けられない魔法を付与したら出来上がり。


リーアと二人で手を洗って、念の為とリーアが言うから、解毒薬を飲んで、それから二人で昼飯にした。


(うん。やっぱり俺のリーは優秀)


旅をしている間は、指名依頼が来ても受けられないことは伝えてあるけれど、それでも、「レッド・アイ」に渡りをつけたいと思うやつはそれなりにいるみたいだ。

中には、闇ギルドで断られて、直接リーアに頼もうとしているやつもいるらしい。

ヤバそうな仕事だから、これに関しては断っても構わないと、リーアには伝えてある。

闇ギルドが断るなんて、相当だ。


ちなみに、闇ギルドといっても、見た目は普通の商会だ。

1階は普通に、商会として機能していて、そこで闇ギルドに用があるという旨の合言葉を言うと、何回か安全確認をしたあとで、3階にあるギルドの受付に通される。

ちなみに、ギルド長の執務室は地下。

ギルドの受付の様子はいつでもわかるようになっていて、客や依頼内容によって、特別室でギルド長が直接相手をする。

アンナやリーアが薬や毒を卸す時は、ギルド長が相手をしている。




それはともかく。




昼飯を食い終わって、簡単な柔軟を終え、日が翳ってきた頃、俺は最後の任務に出かけた。

もちろん、陛下への手紙も持っている。

これは、隠密騎士団長直通の転移魔法陣で送るので、任務が終わった報告と同時に送ればいいだろう。

あとは、任務遂行後に襲ってくるだろう隠密騎士たちを、フルボッコにして、ちょうど王宮に戻った頃に効果が出るであろう毒を無理矢理飲ませるだけだ。


陛下がちゃんと血の契約をしてくれれば、帰り道は襲撃者が現れることもなく、穏やかな帰途になるはずだ。

契約違反になるけれど、仮に、隠密騎士団長あたりが闇ギルドにイクスの暗殺を依頼したとしても、ギルドが受けることはないだろう。

成功率が低すぎる。

何もわかってないやつなら、仮に闇ギルドがその仕事を受けたとして、名乗りを上げることもあるかも知れないけれど、そんな奴はそもそも依頼を達成できない。

たぶん、イクスの居場所すら把握できないだろう。


イクスは、リーアと旅に出るときには「シュバルツ」の名前で闇ギルドに登録して、その名前で依頼を受けながら旅をするつもりだ。

ギルドは横のつながりが強いので、別の地域や国へ行っても、情報は共有される。

仕事には困らないだろう。

完全に狙われなくなる、というのは難しいかもしれないけれど、国がイクスの首にかけた懸賞は取り消されるから、少しは減るはずだ。


(もう少しゆっくり腰を落ち着けて、いくつか闇ギルドの依頼を熟したあとで、旅にでてもいいかなぁ)


独立派の最後の一人を葬って、転移魔法陣で任務完了通知と、陛下への「お手紙」を送りながら、イクスはご機嫌でこれからのことを考えていた。


その片手間に、追手の隠密騎士たちに毒を含ませて追い払うことも忘れない。


毒をその身に取り込んでしまった追手たちは、慌てて逃げていった。


追手の始末が終わった頃、陛下が血の契約を交わしたことが分かった。

予め用意しておいた解毒薬を転移魔法陣で送る。

これで、国とはつながりが消えた。


スッキリ爽快である。


イクスは鼻歌を歌いながら、リーアの待つ隠れ家へと帰っていった。





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