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とある転生者の宇宙放浪記  作者: 結城明日嘩
王国編

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王国相手の想定戦

「王国の軍は海賊上がりの者も多いと聞いています。ドヴェルグに来て実感しましたが、近隣の国々の海賊を支援して、そこから有望な者を召し上げているようですね」


 王国内では海賊が現れなくなっている。それだと兵士は減っていくのではないかと思っていたが、近隣の海賊へと兵器をばらまくのは相手の国力を下げる狙いの他に、スカウトの場としても利用しているだろうという事だ。

 コボルト星系では宇宙生物を命懸けで倒させる中で、有能な者をピックアップしていた。海賊という命のやりとりが当たり前の連中からスカウトするのは意外でもなかった。


 兵器を撒くついでに正規軍というよりは、海賊上がりで軍に取り立てられた者を派遣して、戦い方を教えつつその能力を測るというのは効率的なのかもしれない。被害者がいなければの話だが。

 海賊という粗末な武装で格上の装備であろう護衛部隊と戦わせ、その中で生き残れる者を回収する。非人道的な徴兵活動だ。


 王国内で増えていく宇宙生物に対抗するためとはいえ、他国へと負担を強いるやり方は褒められたものではない。

 歌姫は長年亡国の兵を集めてテロ活動を行っていた記憶を持つので、そうした少数で多数を相手にする手腕が染み付いている。国を弱らせる方法も分かっているのだろう。実に厄介な存在だ。


「なので王国が攻めてくる場合、相手にするのは海賊上がりの兵士だろうと予想されます」

「はい、それはこちらも想定しており、シミュレーターには実戦を経験した傭兵からのデータ提供も受けています」


 海賊討伐は傭兵ギルドに割り振られている仕事だ。星系軍の仕事は鉱山やステーションといった拠点の防衛が主なものとなっている。

 海賊の拠点を襲撃するくらいはやっても良さそうだが、傭兵にとって護衛任務は報酬が安く、拠点を襲う集団任務の時こそ稼ぎ時となるので、それを軍が奪うわけにもいかないのだ。


「海賊の戦法としては、孤立させた個を集団で囲む戦い方でしょう」

「一般的な輸送船を襲う場合は護衛部隊より多い数で囲むのが定番ですね」


 軍の参謀による分析に頷く。


「なのでシミュレーターでも陣形を崩さず、遠距離からの砲撃で数を減らし、こちらの優位を保つ戦い方で片がつきます」

「まあ、そうなりますよね……」


 王国の手引きで海賊が軍の規模で襲って来たと仮定すれば、それに対抗するには軍艦を並べた一斉射で防御の薄い海賊船を蹴散らす戦い方となりそうだ。


「しかし、単なる海賊と仮にも王国軍となれば統率が変わってくるでしょう。1つ戦争遊戯ウォーゲームをしてみましょうか」


 軍の参謀と戦略シミュレーションをやって見せる事にした。研究所時代に歌姫から挑戦を受けてきた俺は、図らずも歌姫の手管を知っている。王国軍を歌姫が統率しているかまでは知らないが、国を滅ぼされた経験を持つ彼女は国を守ることに知恵を出すのは惜しまないだろう。

 彼女が前世で培った戦術を王国が使ってくる可能性は高かった。ただ彼女の前世は中世ヨーロッパくらいの文明度に魔法が追加された世界、俺が持っていたのは第二次世界大戦を越えて近代に至るまでの戦術、戦略の知識だったので、研究所時代は俺の方が有利だった。


 研究所から出て15年ほどが経過し、王国に流れ着いてからどれだけ経っているか分からないが、この世界の現代の知識が加わっているとするとその戦術の幅は広がっていると思われた。

 特に彼女の知識は実戦に基づいているしな。

 過去の戦争を知識で知っているだけの俺とは根本的な経験値が違っている。特に人の命に関する部分でその差は大きいだろう。


「それではこちらが海賊部隊を動かすので、そちらはドヴェルグ星系軍を使ってください。兵力はとりあえず五分五分で」




 初戦は俺の圧勝で終わってしまった。王国が帝国に仕掛けられた小惑星を盾に部隊を近づける戦術を使用しただけだが、本来なら遠距離で数の優位を稼ぐ戦い方ができなかっただけで懐に飛び込まれ、機動力に優れた海賊船を同士討ちの懸念が高い中で攻撃する事ができなかったのだ。


 次は海賊ユニットに呪歌で超反応ブーストを掛けて戦った。ドヴェルグ星系軍の射撃練度は高い。元々長距離で殲滅する戦法を訓練していたので、一点集中も面制圧も熟していく。しかし、呪歌で集中力を高められた兵は、撃つ瞬間を見て取って避ける。

 射撃精度が高い分、撃つ瞬間に移動すると避けられてしまうらしい。避ける方向を見越して偏差射撃を行っても、見て避けている奴には当たらない。

 超反応は長時間維持できないので時間を稼げれば、自滅していくのだがこちらが提出したデータを読み解けていないのか接近を許して撃破されていった。


 3戦目は主力部隊と違った角度から慣性移動するコンテナに、宇宙生物を詰め込んで放った。これも王国が使ってきた戦法だったが、対応が遅れてコンテナの接近を許した状態でコンテナを破壊。中に詰められていた宇宙イナゴの群れに対応できずに撃沈されていった。




「こんな卑怯な戦法ばかり……」

「先日渡したデータの通り、過去の戦争で王国が使ってきた戦法ですよ。王国は正々堂々と戦うことはしません」

「ぐぬっ」


 ドヴェルグ星系軍の参謀は実戦経験が乏しく、シミュレーターでしか戦って来なかったのだろう。正面切っての戦闘であれば、敵の弱いポイントを叩いたり、味方の弱った箇所へ増援で補強したりといった戦況に合わせた用兵術は優秀だった。

 しかし、相手が工夫する、想定外の戦法を使われると対応が後手に回り、混乱する事態となっていく。

 先日渡したデータはまだ解析が終わっておらず、今回のシミュレーター戦には活かせなかったらしい。


「渡したデータも過去のものです。王国が同じ戦法を使ってくるとは思い込まないでください」

「じゃあ、どうすれば良いというのですか!」

「敵の狙いを読み解く練習をしていかないとですね」


 小惑星を盾にしようとすれば、それを調達して動かすためのブースターを付けなければならない。侵攻してきたはずなのに、速攻を掛けずに妙に時間を掛けているとなれば、何かを企んでいると考えるべきた。

 しかし、星系軍の参謀は待ちに徹して探索プローブを飛ばすだけだった。それだと迎撃されたり、ジャミングされたり、偽の動きを掴まされたりと対策が取りやすい。


 威力偵察部隊を派遣するなど揺さぶりを掛けたり、判断するのに必要な情報を現場で取捨選択、不足を補える様に動いてもらうなど、やるべきことはある。

 防衛戦だから相手が仕掛けてくるまで待つというのは愚策だと気づいてもらう必要があった。


「王国は様々な国を攻め落として来ています。実戦経験は豊富だし、その国々から情報、戦法をかき集めている可能性もある。更には宇宙生物を取り入れるなど、変幻自在です」


 歌姫とのシミュレーションでは、同じ手は通用しなかった。じゃあそれを逆手に誘導しようとした事もあったが、それは見切られた。学習能力は高く、作戦の応用についても検討をする発想力も持ち合わせている。

 知識の差で圧勝できたのは最初の方だけで、徐々に差は縮められていた。


 特に味方に犠牲を強いる戦法も迷わずに使ってくる。囮などもそうだが、呪歌ブーストの様に兵士を使い捨てる様な戦法も躊躇わない。兵士を駒と考えられる王族ならではの達観がある。

 俺はその辺が苦手で被害を減らそうと考えて無人機などを積極的に使っていたが、それを見透かされてAIの機械的な反応を利用して盤面をひっくり返された事もあった。

 単純にゲーム相手としては面白かったが、実際に敵に回すとなると厄介極まりない相手なのだ。


「対人戦に万全は無いんですよ。一見悪手に見えても、それが布石の場合もあれば、単なるミスの場合もある。作戦立案には柔軟な発想やイレギュラーに崩されない汎用性が求められるんですよ」

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