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とある転生者の宇宙放浪記  作者: 結城明日嘩
王国編

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201/203

魔導騎士のメンテ

 ステーションの役人に捕らえた海賊を引き渡し、海賊船についてもドヴェルグ軍へと引き渡した。耐G用のシステムらしき水の術式についてはコピーだけしておいて、解析は後回しにしている。

 海賊船の性能としては索敵と加速、最高速に寄った性能で武装はほぼなし。魔力炉も普通で防御結界を犠牲に出力を出している形で、高価な部分はなかった。


 ただ地図情報に関しては暗号化されていて、拠点を示すものがわからなかった。この辺を復号して割り出せるのか、海賊の口を割らせることができるのか、そこら辺はドヴェルグ政府に任せるしかない。

 拠点が分かれば集団任務が発令される事だろう。


「それまでは待機かなぁ」

「食べ歩き!」

「他に金策方法がないか探してからだな。まあリリアはアイネに合流しててくれていいぞ」

「わかった」


 今回の海賊船拿捕の報奨は安くないと思うが、それで開拓船の内装を改めるほどの費用が出せるとも思わない。拠点が分かって集団任務で稼げればという算段もあるが、前回ほど稼げるかも分からない。

 やはり何らかの金策は必要だろう。


 ドヴェルグ星系は鉱石が豊富な星系なのだが、長年の採掘でステーションに近い小惑星は閉山状態。より遠い小惑星帯で採掘して運搬しなければならないので、海賊に狙われる状況だ。

 そのため輸送船の護衛任務などもなくはないのだが基本給は割安だ。襲って来たのを返り討ちにすればボーナスは出るが、そんなに頻繁に襲われてては経済が立ち行かないので実際に襲われる現場に遭遇するのは稀。


 襲われている所に急行する部隊募集などもあるが、海賊に襲われて救難に駆けつけたとしても、既に逃げた後というのはざらで、海賊を撃破できなければ待機時間で払われる報酬は安い。

 開拓船という家のリフォームに必要な金をアルバイトで稼ぐようなもので、何年かかるか分からない。


「大人しく待ちの時間なのかね」




 傭兵ギルドを出て向かった先はニクルムの工房だ。魔剣鍛冶師という前世を持つ彼は、今世でも魔導騎士が使う武器を鍛えている。

 前世の記憶と今世の技術を合わせる術式は独特なもので、出来上がったものを見たり、加工の現場を見たりしていたら時間はあっという間に過ぎてしまう。


 ニクルム自身は職人気質で理論を説明するような事はなく、見て盗めというタイプ。本人もどこまで仕組みを理解しているかは不明だ。

 5mほどの魔導騎士の持つ白兵武器は、人間が持つ武器の3倍以上のサイズ。鍛えるのも一苦労の様で、何度もハンマーで叩きながら全体を見て調整していっている。


 普通の武器は工場での量産品だが、ニクルムの打つ武器は術式を込められていて魔剣化されていて質が圧倒的。また芸術品としての側面からも高評価で高値が付いているらしい。

 実際刀身に刻まれた術式が魔力を流すと淡く光り、複雑な紋様として浮かび上がる姿は美しいと思わせた。


「艦砲からの光術式でも切り裂ける」


 というのがニクルムの話。確かに刀身に収束される魔力は、それだけの力を秘めていそうだ。問題は光速の砲弾に当てられるのかって部分だが。


「艦橋付近で待機してたら、勝手に飛んでくるだろう?」


 それがどれだけ難しい事なのかは分かってない節がある。使い手の事を考えられるのが優れた職人だろうと思わなくもないが、技術を突き詰める人間というのは我道を行くタイプでないとダメなのかもしれない。


「何にしても俺が求めるのは1本の名剣よりも扱いやすい機体なんだがなぁ」

「それは俺の専門外だ。そういや魔導騎士も持ってるんだっけか。ならそっちの専門家を紹介してやろう」




 ニクルムの紹介で魔導騎士を扱う工房へとやってきた。魔導騎士が数機並ぶといっぱいになりそうな小さな工房だ。

 そのハンガーには魔導騎士の姿はない。


「戦争でもありゃあ、ウチみたいな零細にも仕事は回ってくるが、平時はパワードスーツのメンテが主だな」


 3m程度の作業用パワードスーツをバラしてメンテしているところらしい。鉱山小惑星で作業するための機体だな。パワードスーツ自体で掘るというよりは、自走型のドリルを設置して回るのに使うため、腕部の補強よりも推進装置スラスター部分が主となっている。


「魔導騎士の整備はできるのか?」

「当たり前だ。ただちぃっと値ははるぞ、機材を借りてこないといけんからな」


 普段使わない魔導騎士用の工具は、その都度借りて作業するらしい。


「かなり古いタイプで色々とガタがきてるんだが……」

「見てみないと判断はできんが、ウチのデータバンクにゃあ、過去から蓄積されたもんがたんとある」


 かえって最新の工房に持っていくよりも、ノウハウが残っているらしい。何にせよ見せないことには始まらないので、俺はコボルト星系で貰った魔導騎士を運んでくる事にした。




「現在は出力も半減していて、制御機構もバランスが悪くなってる」

「継ぎ接ぎだらけでアライメントも狂いまくりだな。よくこんなの乗って来られたな……」


 工房の専用ハッチから魔導騎士をステーション内へと運び込み、ハンガーへと固定した。やたらと加速性能に特化した機体は、魔導騎士のOSだけだとバランスが崩れているのでまっすぐ飛ばすのも難しい。

 魔術師である俺は独自に術式を構築して、直接推進機を制御する事で何とか動かしているものの、余分な魔力と術式制御が必要なので機体性能の半分以下しか使えてないだろう。


「ただパーツ自体はライブラリーにあるもんだ。壊れてる箇所も分析できそうだ」

「まともになりそうか?」

「機体コンセプトなりにはできるだろうさ。それがまともかは知らんが」


 普通の魔導騎士は汎用的な性能で、戦闘機よりも機動力は劣るが、分厚い防御結界に守られていて戦闘機の火力では撃破が困難。そのため戦艦の護衛などを任される。

 戦艦の砲撃が直撃しても一発で墜ちる事はない魔導騎士を撃破するには、魔導騎士の持つ白兵武器で殴るのが最も有効。

 ニクルムの作る魔剣が重宝されるのは、実用面でも有効だからだ。


 しかし、この機体は加速性能がやたらと高い。しかも背面に推進機が揃っているので機動性はかなり低めの直線番長となっている。

 騎士男爵ナイトバロンと命名されている機体のメインウエポンは突撃槍ランスで、一撃離脱に特化していた。


「この加速力だと体勢が崩れて加速したら、手足がもげるな」

「ただこの加速力なら戦闘機にも追随できる」

「直線ならな。俺が戦闘機乗りなら横に逃げるさ」

「そうだよなぁ」


 コックピットに残っていた交戦データを見ても、単騎運用というよりは隊列を組んで突撃をかける形で、護衛騎士を弾き飛ばしながら戦艦を屠る戦いに使われていたようだ。

 騎馬ユニットという感じだろうか。

 傭兵に下げ渡されてからの戦歴だと、宇宙クジラの様な大型宇宙生物戦で打撃が必要な場合に使われた程度。


 コボルト星系での戦闘は、より機動力の劣るヨロイが相手で出力を絞りながら戦えた。装甲よりも機動力を優先している海賊船相手だと使えるかどうか。


「何にせよ、機体性能の半分以下の戦力に落ちてる部分をまずは直してくれ。細かいチューニングは、その性能を見てから考える」

「あいよ」


 開拓船に比べたら修理費用は安いが、それでも今回の海賊船拿捕の報酬分くらいは掛かりそうだ。やはり金が足りない。


「何かどばっと稼げそうな話はないもんかね……」

「そんな話があったら他の誰かが既にやってるだろうさ。何事も地道にやるのが一番だ」


 工房の親父は手に職を付けた職人らしいアドバイスをくれた。

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