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とある転生者の宇宙放浪記  作者: 結城明日嘩
王国編

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改装費用のために金策

 ニクルムの知人だというドヴェルグ人の職人達を受け入れる事となった。彼らは移乗する開拓船のメンテナンスを引き受けてくれる。

 海賊船の解体で得られた報酬をそのまま修理費用として使用してもらう。ただ開拓船の損傷は思ったよりも深刻で直すだけでもかなり費用がかかる。

 折角だから内装をバージョンアップさせようと思うと、まだまだ稼がないといけない。


 幸いというとアレだが、前回の集団任務で大手の傭兵団が痛手を受けた為に、それらが請け負っていた哨戒任務などに空きが出ていた。

 機動性があり、隠密行動もできる小型宇宙船はそれらの任務に最適なのでこの辺を請け負っていくつもりだ。


 大きく稼ぐには集団任務で金星あげるとかが必要だが、そのためにも海賊の拠点を見つけないといけなかった。


「兄ちゃん、俺も行くぜ」

「ダメ」


 テッドも哨戒任務への同行を望んだが、アイネの修行が優先事項となっていたのでドヴェルグ星へと置いていく事にした。

 リリアはその観察力が哨戒任務に向いているので連れて行く。なにげに2人で移動は珍しいな。

 まあ料理の話を始めると話し込むことも多いので、2人きりで気まずくなる事はない。




 ドヴェルグ星系は鉱山惑星を有するだけあって、周辺の宙域も小惑星が多い。そのために海賊が隠れ潜む場所に事欠かなかった。

 無人プロープを放って監視を試みているが、大抵は海賊に見つかって破壊されるのがオチだ。海賊から逃げられる有人船で探索するのが確実となる。


「過去に採掘してた跡とかもあるから紛らわしいな」

「放出魔力量でフィルターをかけてみたけど、廃坑か拠点を隠してるのかの区別はつかないみたい」


 含有量の多い鉱石を掘り出して廃坑となった小惑星でも、採掘に使った施設を全て壊して去る訳じゃない。老朽化していて移築するほどではないとなれば、放置されてしまう。

 そうした建物の中には小型魔力炉などを残したままにして、航路の補助をする灯台みたいな使い方をしていた。

 更に星系の外縁部の小惑星へ向かうための道標にするなどだ。

 灯台のレーダーには周辺に怪しい船を捉えたら通報するシステムがあるはずだが、もちろん海賊側も分かっているので妨害するだろう。

 その機能がかえって海賊の拠点と紛らわしくなってしまうのだから皮肉だな。


「ひとます灯台と通信して情報を拾ってくれ」

「了解〜」


 哨戒任務を行っていると証拠を残すためにも灯台とのアクセスログを取得する必要がある。そうやって一定の宙域を探査した証明とするのだ。

 幾ら単独飛行している宇宙船とはいえ、哨戒任務にあたっている船だと分かれば海賊船も仕掛けてはこないだろう。貨物船でもないのに襲ってもうまみはないし、救難信号を出されたらその辺をなわばりにしているとバレるからな。


 哨戒任務で海賊の拠点を見つけるなんてのは稀だ。大抵は貨物船を襲撃に来た海賊を返り討ちにして、その機体から情報を抜き出して拠点の場所を割り出す。

 哨戒任務の役割とはこの辺は見張ってるから拠点を作るなという示威の意味合いが強い。


「そう思っていたんだがなぁ」

「これ、多分そうだよ」


 リリアの目は小惑星の影に回り込もうとする海賊船のスラスター光を拾っていた。背景の星が小惑星に隠れて見えなくなるのとどうやって区別しているのか分からん。

 この距離だと魔力感知なんて到底届かないしな。


「単独の小型船だな。海賊側の哨戒機ってところか」


 海賊としては鉱山とステーションを行き来する貨物船を狙っていた。鉱山に向かう船は生活物資を積んでるし、帰りは鉱石を積んでいる。

 王国が乗り込んできているのは分かっているので、貨物船には護衛がついていたがそれでも襲うのが王国の海賊なのだ。


「捕まえて拠点のデータを貰うとするか」


 テッドがいないので射撃での撃破は難しいが、一対一ならやってやれないこともない。


「操船が荒くなるからリリアはシートから動くなよ」

「わかった」


 俺は海賊船に向けて移動を開始した。




 海賊船は上手く隠れたと思っているのだろう。小惑星の影で息を潜めている。こちらも気づいていないフリで明確に舵は切らずに、少しだけルートを変えてじわっと近づくラインをとった。

 最接近ポイントまで待つと減速しないといけなくなるので、少し手前から最大限のGを掛けながら急旋回。


「ぐうっ」


 リリアがうめき声を上げるが我慢してもらうしかない。こちらが急に向きを変えたことに、海賊船も即座に反応した。


「単独偵察に出るだけあって腕はいいな」


 稼ぎに直結する偵察任務。それを任されるというのは海賊内でも認められている証だ。迷いなく逃走に加速する。ある程度の速度を持って迫るこちらに対して、最短距離を加速して距離を空けようとしていた。


「あの加速に耐えられるとか魔術師か?」


 身体強化があれば多少の無茶は耐えられるが、コックピットに施されている耐G装備だけだと限界がある。

 俺もリリアに配慮して最大加速は控えているのだが、それに劣らぬギリギリの加速を見せていた。


「スーツにもフルで耐G性能を付けてるのか。そんな高級装備を使えるのは王国軍の正規兵?」


 一瞬当たりを引いてしまったかと思えたが、実際は直線的に加速しているだけ。こちらが撃墜を狙って射撃していたら当たってる可能性の高い動きだ。


「ブラックアウト覚悟の急発進だったか。それはそれで度胸があるが……」


 急加速のGで怖いのは骨折などの身体的ダメージよりも、血の巡りが偏る事で起こる失神だ。意識を失えばこちらの動きに反応できなくなるのでまさに致命的。回避機動ができなければ光術式を当て放題になる。

 こちらがデータを抜き取るために捕獲を狙っていなければ、撃墜できていただろう。


「まさかそれを狙っての無茶か?」


 咄嗟に撃墜できると引き金を引いてデータごと破壊させる事を狙っていたとしたら、命を捨てる覚悟があるということ。単なる海賊がそこまでの判断をできるか?

 まあ海賊が捕らえられるというのは過酷な罰を与えられる可能性も高い。効果の怪しい術式の実験台にされるくらいなら潔く死んだ方がマシと考える可能性はあった。


 それはどちらかというと海賊側のマッドサイエンティストが考えそうな事だが、それを間近で見てきた海賊なら生き延びた末の結果が絶望的な実験台であるなら命掛けの無茶をしてもおかしくはない。


「何にせよ、逃げるなら捕まえるしかないなっ」


 俺もまた加速を強めて海賊船を追う。

 加速力で言えばこちらの方が上で、最高速もこちらに分があるだろう。相手の利点はこちらよりも軽い分、機動力が高いかもという部分だが半分意識を飛ばしている。

 動きが単調になってるから追いつくのは容易だった。


 ドッグファイトの距離になってようやく逃げの一手では振り切れないと悟ったのか、ランダム機動でこちらを翻弄しようとし始めた。

 しかし、魔力感知で相手の動きを一歩先に知ることができる俺は、慌てることなくついていく。急な旋回というのは体力を奪う。さっきまで失神覚悟の加速に晒されていた海賊が、今度は縦横のGを受け続けるのだ。そう長くはもたないだろう。


「すまんがリリアは少し眠っててくれ」


 必死に旋回する遠心力や逆側に舵を切ると生じる慣性によるG耐えていたリリアだが、そろそろ限界だろう。俺は睡眠術式を起動してリリアを眠らせると、力の抜けた体が浮かばないようにシートベルトの拘束を一段高める。

 体に食い込み、骨折などを起こす可能性もあったが、踏ん張ろうとして力むのも良くない。あとは最新式のシートの性能に期待するとしよう。



 意外と粘った海賊船の動きを止められたのは、約10分後だった。

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