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14、習い事の思い出③(怖さレベル:低~中)

 そろそろ「またかよ」と突っ込まれそうで怖いが、今回も私が子供の頃に習っていた「あるお稽古事」で得た話である。


 正確な年度や季節はよく覚えてないが、私が小六かそこらの時の事だ。


 その日、私達は発表会本番を控えていた。

午前中にリハーサルをして、午後に公演開始というスケジュールだったように記憶している。


 リハーサルとはいえ、本番と同じように衣装を身に付けて通しで行われる本格的なものだ。

やがて全体の最終調整も終わり、私達は昼食と休憩を取るべくぞろぞろと楽屋へと戻った。


 楽屋は一席一席に鏡と白いライトが備え付けられたよくあるタイプのもので、壁にはシンプルなアナログ時計が掛けられている。

時計の横と出入り口の横の二ヶ所にはステージをリアルタイムで映し出すモニターが設置されていた。


 時計横のモニターには客席上部からの視点でステージが映っており、出入り口横のモニターには一階の客席視点からの映像が映っていた。


 リハ中は出番の遠い者がこのモニターを見ては「あ、○○ちゃん位置ズレてる」だの「□□ちゃん良い笑顔!」だのとテレビ感覚で眺める暇潰しアイテムだったのだが、今は全員楽屋に集結している為、舞台上には誰もいない。


 先生や保護者を含めた全員が、配られた海苔弁を食べながら(きた)る本番に向けて英気を養っている──


 そんな時に異変が起きた。

モニター付近で食事をしていた一部の者達がにわかにざわめき始めたのだ。


「あれ、誰?」


「何でステージにいるの?」


「あんな男の人、(関係者に)いないわよね?」


 私は一番離れた鏡台を使っていた&海苔が箸で切れず格闘していた為、気にせずスルー。

「何か騒いでるなぁ、どうせ掃除か警備か何かのおっちゃんだろ」と完全に他人事であった。


「えぇ、気持ち悪い。誰ぇ?」


「顔見えないねぇ」


「ちょっと誰か見に行ってきてよ」


 不審者だと困るという考えがあったのだろう──

保護者のお母さん三名が食事を中断して様子を見に楽屋を出て行った。


 ここまで来ても私は「気にしすぎじゃない? どうせ大したオチじゃないだろう」と海苔を引きちぎるのに必死でそれ所では無かったというマイペースぶりである。


 すぐにモニター前の人達がざわめきだす。


「あ、おばさん達(ステージ上に)来た」


「何て話してるんだろーね?」


「あ、おじさんと(一緒に)上手(かみて)にはけた」


 どうやら保護者三名と謎のおじさんは合流してステージ右側から出ていったらしい。

「誰だったんだろうねー?」と話す隣の席の友人をよそに、海苔を引きちぎるのを諦めて海苔を噛みちぎる私。


 やがて戻ってきた三名の保護者の話により、楽屋は俄に騒然となった。


「誰も居ませんでしたよ」


「「「え!?」」」


 モニター付近の一部の者達とはいえ、目撃者は多数。

しかも先生二人もモニター前で「誰か分からないけど部外者は困るわねぇ」と相談していた位だ。


 しかし見に行った三名は困惑した様子で「いや、本当に誰も居なかったですよ」と繰り返すばかりである。


 それどころか「裏の通路(上手(かみて)下手(しもて)が繋がっている所)も二手に別れてチェックした」と言うではないか。


 ここまで来ると流石の大人達も小声で話し始めてしまい、詳細を聞き取れなくなってしまった。

私は当然のように弁当を食べる手を止め、モニターまで一直線。

しかし映像には誰も居ないステージが、まるで静止画のように映るだけである。


 正直に言おう。

めちゃくちゃ後悔した。

海苔が何だってんだ、野次馬根性を見せろ、当時の自分。


 その後すぐ、先生の口から「管理者のおじさんが見に来ていた」と説明がなされたのだが、信じる者は少なかったように思う。

大人達の微妙な反応というか、ぎこちない空気感を子供達は何となく察していた。


 空気の読めない子がしつこく質問して怒られていた事もあり、この件はこれ以上追及する事は叶わずに終わる。


 もしかしたら本当に管理者のおじさんだったのかもしれないが、もしそうでは無かったのだとしたら──


 映像に映っていたのに肉眼では認識されなかった人物は何者だったのだろうか。

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