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第17話 激情

しばらく振りです!

ロキくんの闇お…(ネタバレ ⚠️)

とにかく、楽しんで貰えばと思います!


「…シェリ家は当分忙しくなるようです…」

「そうか」


ラパオの固い声が執務室に響く。結局、ラキの死体は見つからず生死不明として片付けられてしまった。そして、シェリ家はその後の処理に追われることになったのだ。事実上、私はシェリ家という後ろ盾を失ったと同義であった。それから、すぐに第2王子の婚約話が貴族界でも噂として流れるようになった。

…一気に第2王子派が勢力を伸ばしつつあった。

王位などそんな欲しければくれてやる、そんな言葉が喉まで出かかったものの…それは許されないとわかっている王子の自分が何とか押し止めた。


「少し外に出るぞ」

「かしこまりました」


作業していた書類を置き、王宮内にある庭園まで足を運んでいく。彼女が見つからないまま…3日過ぎた。仮にも第1王子の婚約者が亡くなったというのはタイミングといい何もかもが都合が悪いために彼女は少し体調を崩して療養という扱いに外聞ではそうなった。それはある意味では私にとっては救いとなった。彼女が死んだという事実から目を背くことができた。


「…君はどこにいるんだ」


空は皮肉なことに快晴であった。庭園の真ん中にはまだ彼女とよくお茶会をしたテーブルセットが残っている。そこまで行くと、椅子に座る。このときはラパオや周りは気を使ってか、遠巻きで私を見ている。それが酷く安心した。こんな情けない顔をあまり見せたくない。私が馬鹿だった。彼女に甘えて、色々なものをあやふやにし過ぎていた。もう何も望まないから…私に、俺に、彼女をもう一度返してくれ。涙が流れる前にと、座っていた場所から立とうとすると…声が聞こえてきた。その声に思わず…息を潜めた。


「あら?…ロキじゃないの」

「ご無沙汰しております…チェリー王妃」

「こんなところでって…いいたいところだけど。まぁ仕方ないわよね。本当に…可哀想に…」


悲しげな表情を浮かべているが、目は面白くて堪らないというように爛々に輝いていた。何か…重い…錘のようなものが胸に突っかかる。チェリー王妃を見ると思い出すのは、鞭を持った彼女の姿だ。体中の痛みともに心の芯まで冷えきる…あの感覚は覚えている。

早くここから逃げ出したくて堪らなかった。だが、突如として頭の中でラキが「しっかりして下さい!」と両手を上げて大袈裟に振る思い浮ぶ。何故だか笑ってしまう。あぁ、そうだな。しっかりしないとだな。君に置いていかれないように…私も君のように真っ直ぐと芯も持っていかなければならないよな。

いつも俯いて対応していたからか、私が顔を上げるとチェリー王妃の顔が一瞬歪んだように見えた。


「私は可哀想ではありません」

「あら?…そう…本当に?」

「はい、彼女はここにいますから」


心の中に。ロキは自分の左手を心臓あたりに置いた。満足気に頷くラキの姿が思い浮かぶ。


「…ふん。()()()娘を」


ロキの態度が気に食わなかったようで鼻を鳴らし、小馬鹿した顔をしながら後にした。ロキは少し目を細める。…チェリー王妃は妙に確信的な言い方をしているような気がした。ラキが死んで得するのは彼女だ。

まさか…しかし。彼女はどこでラキの予定を聞き出しんだ。ラキは見た目通りの箱入り娘ではないということはもう把握済みだ。用心深い彼女なら、チェリー王妃にそのような情報を流させないだろう。彼女の予定を聞いたのは…私と…その周辺の者。まさか、な。

信じたくない気持ちとそれなら筋が通ると納得する冷めた自分がいた。とにかく情報収集をしなければ。

もし、今考えていることなら真なら…私は。気付かぬ間に拳として握っていたようだ。


「…ラパオ」

「はい」

「至急、ラキの事件を調べてくれ」

「…かしこまりました」


ラパオが少し悲しそうな顔をする理由を私が知るのはほんのもう少し先のことである。


「これで全てか?」

「…はい」


ラパオが持ってきた調査の結果を見ながら、溜息を吐く。思ってた通りと言えるが…何とも苦い顔をしているのだろう。…ヘルト。声にならない呼び名を呼ぶ。チェリー王妃の影に隠れながらも、幼きながらに俺を守ろうとする姿には胸が打たれた。俺…私は…本当にお前とならいい国が出来ると思っていたのに。「兄上」と優しく呼ぶ声が耳にこだまする。気がついたら、グッと手に持っていた紙を握り潰していた。

そこには…チェリー王妃の考えた作戦ということが書かれていた。実行犯は彼女の雇った何者かだろう。勿論、そこも重要だがそこだけではない。誰がその情報を渡したのかというところだ。ヘルトが…王妃に情報を横流しした可能性が高いことが伺える。

そして…同時に私は目の前に立つラパオを見た。


「ラパオ、申し開きがあるなら、聞くが?」

「申し開きなどありません。俺が…ヘルト殿下に」

「…そうか」


土下座するような勢いで頭を下げるラパオを見る。ラキがヘルト直接を関わりを持つこと自体それなりに難しかった筈だ。俺にラキの情報を聞くのは…少し違和感を持たれることだってある。そしたら…ラパオに聞くのが一番手っ取り早いだろう。ヘルトが私を裏切っている場合は…情報を流したのはラパオであることは簡易に予想が立てられる。…お前までもか。ヘルトに巧みに言葉を引き出させれたのか、もしくは脅されたか。ラパオには一人の弟がいたはずだ。ラパオ自身もかなり可愛いがっていたし、弟もラパオにかなり懐いていたように思われる。ここ最近あまり体調がよくないというようか言葉をあったが…もしそれがヘルトやチェリー王妃の企みの1つだったら?…十分、ラパオが俺やラキの情報をヘルトに流すことになるのでは。


「…ラパオ…お前に1週間、暇を出そう」

「で、殿下…私は…」

「…私はお前を信じていいかわからない」


裏切り者か、騙させた者か。私の顔が余程痛ましかったのか。ラパオはグッと口を結び…「失礼します」と頭を下げ、私の執務室を後にした。クソッ、今まで出したことがないような怒りなどを含んだ低い声が部屋の中に響く。と、同時にバンと机を叩いたので拳が少しヒリヒリと痛む。…何故だ。何故だ。頭のなかで言葉を探したところで答えにもならない。


憎い。全てが憎い。


これは抱いてならぬ類の怒りだと、まだ幾許か残っていた己の理性が呼びかける。それでも私は…怒りや悲しみに飲み込まれそうになる。腹が煮えくり返るとは正しくこのことを言うのだろうか。

ロキの瞳には強い怒りようなものが浮かび上がった。

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