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鶴見と和狸  作者: きじとら
第0章
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第九話 お買い物と転売


 さて、どこから回るかな。

 とりあえず大量のマッチをポケットにしまうわけにもいかん。

 となるとバッグか。

 だが、金貨を使うべきか。いや価格を確定させた方がいい。

 使っちまおう。

 

「まずはカバンを買おう。金貨を使いたいが一見でぼられるのは困る。店主の紹介を受けよう」

「そうだね。サイズとかにもよるだろうけど、良いと思う」


 店主におすすめの雑貨屋を尋ね、第一目標だ。


「この辺のはずだな。確か『金物屋』と言ってたな」

「うん。今のところ文字らしいものを見てないんだけど、その辺はどうなんだろうね?」

「わからん。識字率が低いのかも知れんな」

「あ、あれじゃないかな?」


 どうやら目的地についたようだ。

 

「すまない」

「見ない顔だね」

「宿屋の店主の紹介で来た。カバンを求めている」

「ああ、あそこの。値引きはできんが、適正価格で売るさ。安心しな」

「ああ、よろしく頼む」


 さて、どれにするかな。

 

「手をふさぎたくない。旅の途中なんだが、荷物を失ってしまってな」

「そりゃあ災難だね。ん? お坊さんかい?」

「旅の者です。どうか気になさらずに」

「なるほど、従者さんが落としたか何かしたんだね」

「まあ、そんなところだ」


 ちきしょう。俺が間抜けみたいじゃないか。

 やっぱり、昨日の夜殴っておくべきだったか?

 

「そんなわけで小さくても大きすぎても困る。あと高すぎるのも手が出ない。路銀も落としたんでね」

「随分無茶な注文だな。いくらある?」

「とりあえず、今ここで使えるのはこれだけだな」


 金貨を見せる。

 

「まあ、それならそれなりのものは買えるが、宿泊も飯もいるだろう? 旅の道具だってないんだろう?」

「そうなんだ。だから一式で納められると助かる。まだ多少は使える金はあるが、どうしても心もとないからな」

「うーん、すべては難しいな。まあ宿屋の紹介なら仕方ない。少し待ってろ」


 さて、どれぐらいの金貨の価値を知りたいんだがな。

 聞くわけにもいかん。


「このままだと、金貨の目安がつかんな」

「そうかな? 大丈夫だと思うよ?」


 何か考えがあるのか?

 まあ、そっちは任せてみるか。


「お待たせ。カバンはこれぐらいでどうだい? さすがに寝具までは入らないが、最低限の必需品は入れられるだろう。勿論食い物もな」


 店主が出してきたのは、リュックよりも一回りぐらい大きいものだ。

 色々入りそうだな。

 

「サイズは申し分ない。だが、中身まではちょっと難しいかも知れん」

「全部ないって言っただろ? だからこれだ」


 そう言って、カバンの中身を見せる。


「まずは水筒だ。浄水の加護がついてる。次は防水布。こちらは保温の加護。まあ少し嵩張るが夜は必需品だからな。あとは小袋だな。おっと、これは防腐の加護がついてる。この袋にしかついてないから忘れるなよ?」


 加護?

 なんだそれ。

 

「加護付きなんて贅沢ではないですか?」

「ああ、お坊様にとってはそう見えるかもしれませんね。それに祝福もされるでしょうからね」

「私は旅のことはわかりませんが、あまり贅沢なものは避けたいのです」

「わかります。ですが従者さんは祝福されないでしょ? だったら加護付きの方が安心ですよ」

「そうなのですか? ヌタ?」

「そうですね。贅沢な旅はできませんが、あると安心です」


 加護ってなんだよ。

 まじで教えてくれ。

 

「不勉強で申し訳ないのですが、加護とは一体どのようにするのですか?」

「ああ、そうですよね。お坊様は祝福専門ですもんね」

「まだ学びの途中ですので至らない身ですがね」

「ご謙遜をなさいますな。見ればわかりますよ。さて加護ですね」


 そういって加護の説明を始める。


「宗教家の皆さんには祝福ですが、平民の中にも神に愛された者がいます」

「民は等しく愛されていますよ?」

「ああ、勿論です。建前はね。まあここは我慢して聞いてやってください」


 話が進まんから、設定を尊重するなよ。

 

「ごく稀に、職業や能力に加護を持った人間が生まれます。まあ、ほとんどいないのですがね」

「ほう」

「で、必ずしも全員がその加護を使いこなせるわけじゃあないんです。でも、その加護を物に付与することができる。たくさんはできないみたいですけどね」

「では、浄水とか防腐なんてのは、浄化の加護みたいなものですか?」


 ピカリン司祭の言葉に店主が目をみはる。


「よくご存知ですね? お坊様は学問もされているとか?」

「まあ、その辺は勘弁してください。あまり余計なことを言うと、ね?」

「ああ、そうですね。まあ、加護についてはその通りです。物に付与することで多少の小遣い稼ぎをしている。我々もそれで少し高く物が売れる。持ちつ持たれつです」

「店主、わかった。ありがとう」

「いえいえ」


 実際はわかっていないが、あまりよろしくないようだ。

 宗教家は宗教家、平民は平民と分けられ、常識も違うようだからな。


「で、店主全部でいくらだ?」

「そうですね。勝手なお願いで恐縮なんですが、祝福をいただけるなら250Dでいいですよ?」

「それでは損をなさるのでは?」

「いや、お坊様の祝福の方がよっぽど高価ですからね。足元をみるようで申し訳ないのですが、軽くでよいので、お願いできませんか?」


 祝福か。

 ピッカリーノ司祭頼んだぞ。

 

「勿論、良くしていただいてますから、祝福いたします。ですがそんなに簡単にはすべきことではありませんので、口外しないでくださいね?」

「本当ですか? いや、こちらこそありがたい。勿論誰にも言いません」

「では、この店主の計らいに、そしてこの店の更なる繁栄に……」


 なんだ? すこし光が増したようだぞ?

 後光か? そんなまさかな。


「ありがとうございます!」

「いえいえ。では精算してください」

「はい、250Dですので、750Dのお返しです。小金貨7枚、銀貨5枚、お確かめください」


 ふむ、金貨は1000Dか。

 十万円? すげえな。あの商人。

 

 見た目通り、太っ腹だったぜ。

 だが、銀貨と金貨の差が激しいな。

 小金貨もわかった。一万円か。

 

 さて、マッチを売りますかね。


「店主、こういったものは見たことがあるか? うちの地方のものなんだが」

「なんです? これ」

「火つけ棒だ。これをこうすると。ホラ」


 二度目の説明だ。さすがに慣れる。

 

「へえ、こりゃあ便利ですねえ。火の加護もありますが滅多に出ないですからね。それに高いですし」


 あるのか。

 ないと断定しなくて良かった。


「ちなみにこれっておいくらですか?」

「店主の目利きを知りたい。いくら値を付ける? ああ、この小さいのはサンプルとして店主に差し上げよう。売りたいのはこっちの大箱だ」


 まじまじとマッチを見る。

 自分でつけて試している。

 

「消耗品ですからねえ。でも便利だ。飯を出すところなら売れるでしょうね。普通の家でも使い勝手が良さそうだ」

「注意点もある。火のものだから、水は厳禁だ。十分に乾かせば再び使えるが、少しでも湿気てると使えん。また一度使ったものは当然再使用できん。火をつけるのは、箱の横のそこでしかできん」

「まあ、仕方ないですね。どれくらいお持ちですか?」


 さて、一気に売りさばくか。小分けして話を拾いにいくか。

 面倒だな。売ってしまおう。

 

「これだけある。さていくらで買う? 宿屋の店主は便利に使っている」

「ほう。なら間違いなさそうですね」


 高く買って欲しいね。

 

 

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