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鶴見と和狸  作者: きじとら
第0章
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第七話 あなたは私を知っている


「どういうことだ?」

「言葉の通り。僕は君を知っている。ああ誤解しないで。君が誰かを知っているんじゃなくて、この世界に来る直前を覚えているんだ」


 どういうことだ?


「正直に言う。だから怒らないで聞いてもらえると嬉しい」

「わからん。だが、話は最後まで聞こう」

「君はバイクにのって道路を走っていた。場所は覚えていない。ヘルメットをしていたが君の服装、そのままだった。だから君だと断定してる」

「続けろ」


「僕は歩いていた。歩行者用信号は赤だった。だが道路を横切ろうとした」

「それを俺がはねたのか?」

「いや、君はとっさに避けて、対向車線の車に轢かれた。僕もその車に轢かれた」

「それが本当なら、お前が原因ではあるな」


「だろ? だから黙っていたんだ」

「俺は全く覚えていない。まあ、あんまり覚えていたくない出来事だな」

「で、気づいたら森の中にいた」

「そうか。それが本当なら俺たちは死んだのかもな」


 絶対ではないが、今の状況を思えば、ここがあの世か別世界なんだろう。


「怒らないの?」

「どうだろうな。俺も覚えていて、同じ認識なら殴ったかも知れんが、お前しか覚えていない。それに特に未練っぽいのもないからな。今は保留だ」

「保留か。まあいいや。とりあえず謝る。ごめん」

「おう、受け取った」


 話が進まないからな。

 とりあえず受け取ってはおく。

 だが、貸し一つってとこだな。

 

「さて、ここへ来た原因っぽいのはわかった。だがそれ以外は説明がつかない」

「言葉の件かな?」

「それもある。それ以上にステータスなのか魔法なのか特技なのか、だ」

「そうだね。それがあった。レベルって言ってるんだから上がったり下がったりするんだろうね」


 下がることもあるか?

 まあ、なくはないか。

 

「いずれも今すぐ確認できるもんじゃなさそうだ」

「そうだね。スマイルはヌタさんには通用しないから、レベル上げにはならないかも知れないね」

「俺なんてバイクだぞ?」

「もう一つ、話してないことがある」

「奇遇だな。俺もだ」


 なるほど、こっちへ来た負い目で、俺に話しづらかったのか。

 可愛いじゃないか。

 男じゃなきゃ頭をなでてやるところだ。


「もう一つ魔法?特技、もう面倒だから魔法で統一しとこう。それが使える」

「ふむ。何ができる?」

「ちょっと、テーブルの上のロウソクを見てて」


 何をする気だ?

 

「ショット」


 ロウソクの火が消えた?


「風魔法か?」

「風魔法? 何それ?」


 属性魔法じゃないのか?

 

「あー風とか火とか水とか、そういった属性を操る魔法の一つだ。違うのか?」

「違うよ? エアガンっていうらしい」

「エアガン? 空気銃?」

「うん」


 どうしろって言うんだ?


「うん、便利だな。今日からお前がローソクの火を消す係な」

「そんな係はイヤだなあ。やれっていうならやるけど」

「他にどんな事ができるんだ?」

「いや、これだけ」


 うん。スマイルとか空気銃とか。

 こいつらしいと言えばその通りだ。

 期待するのが間違いだな。


「わかった。練習して強くなるといいな」

「そうだね。頑張るよ。で、ヌタさんは?」

「まあ、俺もよく使い方がわからん。名前は『アンティークショップ昭和屋』だ」

「アンティーク? 古物商かな?」


 どうなんだろうな。

 加工して古く見せてるものを扱っている場合もあるんじゃないか?

 行ったことないからわからんが。

 

「具体的には何ができるの?」

「商品を買えるっぽいんだが、今選べるのはマッチぐらいだな」

「へえ、通販なのかな? 誰が届けてくれるんだろう」

「知らん。買い方もわからん」


 買うってことは金か価値のあるものとの交換だろうしな。


「やってみてよ。気になる」

「あーお前日本円持ってるか? 俺はない」

「僕もないよ? 財布もなかったし」

「だよな。そうなると現地通貨、こいつを使わなきゃならんか?」


 手持ちは非常に少ない。

 金貨が残っているがこいつは虎の子だ。


「金貨はリスキーだけど、細かいので買えるなら試してみれば?」

「そうだな。金貨は一旦お前に預ける。ホレ」


 そういって金貨を投げた。

 奴はまじまじと金貨を見てる。

 

「じゃあ買うぞ」

「うん」


 どうやるんだ?

 とりあえず声に出してみるか。


「昭和屋」


 お、視界に商品一覧が表示されたぞ。

 

「今品物がリストになって表示されてる。お前見えるか?」

「どの辺? いや、どこにも見えないけど」

「そうか。じゃあ俺にしか見えないのか。まあバレないのはいいな」


「じゃあマッチを買うけど、円表示なんだよな。現地通貨にならんかな。言ってみればいいか」

「通貨単位、ドス」

「刃物みたいだね。ドス」

「あほう。お、変わったぞ。マッチは『小箱×10……1ドス』になってる」

「小さいの十箱で百円ってことなのかな?」

「まあ、1なら痛くはないな。買うぞ」

「お願い」


「購入。マッチ小」


 テーブルにマッチが十箱落ちて来た。

 そして手持ちの1Dが消えた。

 どういう原理だ?

 

挿絵(By みてみん)

 

「買えたね」

「そうだな」


 ふむ。どうなんだこれは?

 使えるのか?


「随分と古めかしいね。きちんと使えるのかな?」

「確かに。アンティークだから古い奴なのかも知れんな。使ってみろ」


 奴がマッチを手にとり、一つ擦る。

 

「使えるね」

「なるほど。しかし、売れるんかな? マッチ」

「どうなんだろうね」

「魔法が普通にあるなら要らんと思うし、例え魔法がなくても、これだけ部屋に明かりがあるんだ。火をつける道具なり、何かしらあるだろう」

「そうだね」


 うーん。

 これは現地人の意見を聞くしかないか。

 明日だな。

 

 

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