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鶴見と和狸  作者: きじとら
第0章
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第六話 勘違いしてる?


 随分と警戒されちゃったなあ。

 僕を疑ってるんだろうな。

 

 でも少し考えてみて欲しい。

 誰が好き好んで、こんなムサイ男を騙す必要があるっていうんだい?

 

 僕だっておそらくヌタさんと同じ被害者だと思うんだけどなあ。

 でも理屈が通らないって思うんだろうな。

 まあ、誤解が解けるまでは考えさせておこう。

 面倒だし。

 

「色々言いたい事もあるけどさ、そろそろご飯じゃないかな。店主が各部屋に声をかけてる」

「ん? 本当だ。よく聞こえたな。じゃあ、続きは飯の後にしよう。風呂はないと思うから店主に聞かない方がいいぞ?」

「どうして? 入れるなら入りたいじゃない」

「まあ、定番なんだ。聞いてもいいが、お前の設定を活かして沐浴とかにしといた方が無難だぞ」

「ふーん。わかったよ。でも沐浴ってお湯じゃないよね?」

「知らん。だからわからないのに尋ねない方が無難って言ってるんだ」


 疑われないようにするためか。

 まあ、適度にスマイル使って聞いてみよう。

 

「お客さん、晩の用意が出来ました。早い方が温かいものだせます。いつでもどうぞ」

「ありがとうございます。今行きますね」


 扉越しに答える。

 

「じゃあいこうか」


 階段を降り、いくつかあるテーブルに腰かける。


「今日は魚です。あとは野菜のスープ。パンは一人二つまで。それ以上は一つ2ドスかかりますから」

「ありがとう。パンは最初から二つください」

「へい」


 早速情報が手に入った。

 

「ドスだってさ」

「京都人が国を治めてるのか?」

「まあこの地域だけかも知れないしね」

「とりあえず、よくやった? 主人が勝手に話しただけだがな」


 食事はまあ、それなりと言っておこう。

 二人で一万円の宿、しかも二食も付くんだ。

 贅沢は言えない。まずくないし。

 食べられるし。


「ヌタさんはお酒飲む?」

「どちらでもいい。だが、僧侶(オマエ)は飲まん方がいいのでは?」

「どうなんだろう。まあ僕はお酒飲まなくても大丈夫だけど、情報収集ってことでワイン一杯ぐらい飲んでみたら?」

「良いのか?」


 さっきの料理の味を見れば予想がつくと思うんだけどな。

 まあ、少し酔わせてみたい気もする。

 変なことはしないと神に誓う。

 神なんていないけどね。多分。


「ご主人」

「なんでしょう」

「今日は従者にとって特別な日でね。普段なら決して飲ませないんだが、ワインを一杯飲ませてやりたいんだ」

「なるほど。20ですけどいいですか」


「勿論。ご主人も良かったら一杯どうだい?」

「いえ、仕事中ですからね。お気持ちだけ。今持ってきます。僧侶様はいかがしますか?」

「僕は飲まないよ。そう決めて旅に出たからね」

「そりゃあすごい。大抵のお坊さんはがぶがぶのみますけどね」


 一杯二千円のワイン?

 気にはなるが、遠慮したいね。

 いくらこの地域の宗教家が酒を浴びるほど飲むんであってもね。

 

「おい、残金を考えろよ?」

「まあ、いいじゃない。ついでに金貨を出してみなよ」

「そういう手か。わかった」


 店主がワインを持ってくる。


「店主、これで釣りはあるだろうか」

「ああ金貨ですかい。無くはないですがちょっと今すぐは用意できないんで、いいです。この一杯は私からのおごりってことで。他の客には内緒ですよ」


「ご主人、お気遣いありがとう。詳しくは言えないが、彼にとって今日は大切な日でもあったのでね。本当に助かります。あなたの商売に良い兆しがあらんことを」

「こりゃあいいや。ワイン一杯で祝福をいただいて、こちらこそありがとうございます」

「お互い様だよ」


 祝福?

 どういうことだ? これはここで確認しない方がよさそうだよね。

 

「さあ、従者ヌタよ、店主に感謝していただきなさい」

「店主、気遣い痛み入ります。ではいただきます」


 なるほど、吹き出すほどではないか。

 いや、吹き出したら叱責しなきゃならないから良かった。

 演技でも人を怒るなんて嫌だからね。

 

「ふう。久しぶりです。ありがとうございました」

「喜んでもらえてよかった。飯のあとはどうなさいます?」

「ああ、風呂なんて贅沢は言わないが、せめて足の汚れは落としたい。水かお湯かいただけるだろうか」


「すみません。水は無料なんですがご自身で汲んでください。お湯は桶一杯で5になります」

「いや、そうだろうね。ここのところ燃料もばかにならないものね」

「ご理解いただけて何よりです」


「水で済ますことにするよ。井戸かな?」

「へい、店の入り口から一度出ていただいて、裏に井戸がありますからそちらでお願いします」

「何から何までありがとう。では好きにやらせてもらうよ」

「ごゆっくり」


 さて、ワインはどうかな?

 

「おいしいかい?」

「ワインなんてほとんど飲まないからわからん。だがアルコールではある。普通はエールとか飲むんだろ?」

「それではわからないなあ。まあ機会があったら僕も試すよ」


「あとは足だけでも洗おう。大して歩いてはいないが、さすがにこのままはね」

「わかった。これ飲み干したらすぐに動こう」


 数人の客が話しているが、あまり情報は得られそうもない。

 商売の話なんだろう。

 分からない用語や地名が聞こえる。

 

 処理しきれないな。

 ヌタさんと話した方が建設的だね。

 

 さて、あの話をすべきか否か……

 


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