第五話 気づいてる?
店主が水の入った甕を持ってきた。
カップは木だ。
ガラス、陶器はないのか、高いのか。
銅でもよいと思ったが、それこそどうでもよい。
なんちゃって。
「とりあえず落ち着いたな」
「そうだね。井戸なのかな?」
「どうなんだろうな。まあすぐに腹を下すほどでもあるまい」
色々吐かせたいところだが、お疲れのようだ。
「夕飯まで時間あると言ってたな。とりあえず横になりながらでもいい、色々説明してもらおうか」
「うん、そうさせてもらう。で、ヌタさんが思っている通り、スマイルAを使ってた」
「やはりそうか。だがそれにしてもよく話を破綻させずにここまで持たせたな」
「僕も神経つかったよ。だが色々と情報もお金も手に入ってよかったね」
「それは正直に助かった。ありがとう」
まあ、人を騙している可能性もあるが、今は背に腹は代えられん。
祈ると言ったのはこいつなんだ。祈ってもらおう。
「ということは、その疲れはスマイルのせいか?」
「そうなんだと思う。疲れるね、これ」
「俺は変態をすぐ解いたからな。だが気を付けよう。逃げる段になっていきなり変態が解けたら最悪だからな」
「規則性がわからないんだよね。スマイルのかけ具合なのか、時間なのか」
「まあ、今度人のいないところでやってみよう。俺に通じないのは難点だがな」
日本人だからなのか、原理を知っているからなのか。
まあ、籠絡スマイルなんてので騙されるのは勘弁願いたい。
「まあ、疲れているなら聞く係に徹しても構わない。意見は飯を食ってからでも、休んでからでもいい」
「そんなにすごい疲労じゃないから、話し合いぐらいはできると思うよ」
「まあ、無理すんな。俺も考える時間が欲しい」
とは言え、何を考えるか、どこにポイントをおくかってのもある。
一人ならまだしも、こいつとどこまで一緒にいるか、それ次第ではやり方も変わるだろう。
「ここまででわかったことを話す。気になったら突っ込んでくれ」
「うん」
「まず通貨だな。俺たちが知っているのは、銀貨っぽいもの。これは単位が十なんだろう。それよりも小さい鉄?まあ合金っぽいのは単位が一だな」
「ふーん、どうしてもう一種類は出さなかったの?」
「勘だがこれはこの中では一番価値が高いと踏んだ。店主が最初に見せた額で文句を言ったら出すつもりだった」
「へえ、よく考えているね」
「お前の設定も僧侶だからな。多少ずれても文句を言うぐらいだろう」
それにこれを鶴見に渡した男は商人のようだった。最初に寄付を切り出した。余裕があるんだろうという読みもあるが、今はいいだろう。
「万が一、宿泊代よりもはるかに高い価値だと全く通貨を知らない異国人か世捨て人と見られるからな」
「なるほどねえ」
「なので、通貨の呼び方とか、価値を知るために、おそらく下位であろう二種で試した」
「それでわかるのは?」
色々わかるが、どう伝えようか。
絶対と言い切れる部分は少ない。
「物価としては百で一万円ぐらいと見た。一泊二食付きで八十だ。単純に百かければ八千円ぐらいになるだろう」
「なるほどね。計算しやすいのはいいけど、何が高いのか、安いのかはわからないね」
「そうなんだよ。まあ、大体の目安で覚えておこう」
旅行や移動が頻繁に行われているなら、宿屋の価値はそんなに高くない。
だが、商人や地域をまたいだ移動が必要な者、そんな奴がいるかどうかわからんが、数が少ないなら宿屋は元をとるために高く設定する必要がある。
とは言え、飯の用意は原価と手間がかかるが、宿屋自体は一度設備投資をすれば、あとは気長に回収できる。商売としては良いとは言えまい。
まあ、ホテル業界なんて知らんからもっと面倒だろうし、コストもかかるんだろう。
この地域がどうなのかはわからんがな。
「というのと、この金貨っぽいのは、少なくとも一万円以上なんだろう」
「でもそれだと高額な商品の取引は大変じゃない?」
「もっと上なり、紙幣とか手形なりあるんだろうな」
「そっか、そういうのもあるか」
まあ、こいつも気づいて受け答えしているな。
「さて、金の価値なんてのはいい。今後イヤって程知ることになる」
「だろうね。お金の苦労なんてしたくないけどね」
「じゃあ、肝心なところな。お前、このコインが通用する外国を知ってるか?」
「知らないね。僕も質問。僕らの話している言葉は日本語だよね? でもこれまで出会ったすべての人は違う言葉を話しているよね?」
ふむ。気づいていたか。
「よし、合格だ」
「お? 何か受かったみたいだ」
「あまりに阿呆だったら、この町でお前を置いて、俺は一人で旅をしようと思ってた」
「危ない、ギリギリのところだったね。でも良かった」
嘘つけ。
「というか、出会って一日も経っていないし、これから先の話を今すぐ決める必要はないんだが……」
「ないんだが?」
「お互い隠し事はなしにしないか?」
「なるほど。そうだね。僕もその意見に賛成だ」
「勿論、プライベートなことは言う必要はない。だが、協力していくにしても別れるにしても、判断が曖昧になるよりは、さらけ出した方が答えを得やすいと思う」
「たしかにね。賛成するよ。僕も言いたくないこと以外は正直に話す」
まあ、仕方あるまい。
普通の状態なら、俺一人の方が身軽だし、決断も早い。
だが、この状況。
俺たちは日本語を話しているのに、相手は違う言語。
魔法なんだか特技なんだか、今まで生きてきてこんなのにはお目にかかったことがない。
少なくともこの二点だけで、俺の頭がおかしくなったか、夢の中か、それ以外かってことになる。
そして、できるならそれ以外を願いたいところであるのだが、そうなると、俺以外の何かの意志を感じる。
何かの意志。意志で魔法を人に扱えるようにする。そんな事が出来る存在なんて、会ったこともないし、会いたいとも思わない。
というわけで、ツルピカ王子様がその意志の持ち主であるか否かも含めて、これから調べなきゃいけない。
面倒だなあ。
今日はここまでなのである。
明日からしばらくは毎日投稿する予定です。
一話のボリュームが少ないと思われる方は是非感想をお寄せください。
たまにイラストを混ぜることもありますが、ご不要という意見があらば取りやめます。
私は素直なとりやめあきらめまん。
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