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鶴見と和狸  作者: きじとら
第1章 目指せ楽隠居
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第三十四話 四次元という謎


 私はカスミのスキル。

 元堕天使。ナンバーは一桁。

 昭和屋の店主よりははるかに弱いけどね。

 

 カスミには天使と言ったが、アレはモノの例えだ。

 元天使だし、元堕天使だからね。

 今は天使みたいなものさ。

 

 どうして嘘をついたか?

 嘘はついていないさ。

 私は天使として降臨したんだ。

 その時は天使だった。

 

 それだけの話。

 

 カスミに与えたのは「四次元ポシェット」。

 勘のいい皆さんならおわかりのことと思う。

 アレはポケット。お腹についているものだ。

 私はポシェット。その形状から誰かに渡したり、盗まれたりするものと思われるが、残念でした。

 

 寝るときまでポシェットをつけるのはナンセンスだろう?

 故に体から外すこともできる。

 ああ、ポケットもできるよね。

 

 だが、私は盗まれない。

 カスミ以外は触れないという設定にしてある。

 

 取り出しも同様。

 カスミの意志が働かない限り、出し入れは出来ないんだな。

 

 それに間口よりも大きいものも入れられる。

 物理的に入れているわけじゃないからね。

 

 カスミが入れたいという意志を働かせ、ポシェットに近づければ自動で転移させることができる。

 

 どこに転移させるかって?

 

 私の家だよ。

 

 こう見えても私の家はかなり大きい。

 タワマンぐらいの容量がある。

 

 畑の中のタワマンじゃないよ?

 石油産出国に林立するようなアレだ。

 

 無限とは言わないが、カスミが望む限り、大抵のものは収容できる。

 

 なぜそんなにカスミを優遇するかって?

 だって可愛いじゃないか。

 

 あ、天使には性別はないんだが、私は女性型をしている。

 いわゆる女教師がつけるような、先が鋭いタイプのメガネもしているよ。

 

 さて、あまり話しすぎるのも何なので、カスミも知らない秘密を教えよう。

 実は四次元というだけあって、時間も操作できる。

 

 時を限りなく遅くしたり、めちゃくちゃ早くすることもできるんだ。

 今はカスミのいる世界と同じ速さにしているけどね。

 

 レベルアップの時に少しずつ解放していく予定。

 あまり、都合がよい設定だと、カスミが目立ってしまうからね。

 

 カスミのいる世界は本当にクソみたいな世界だから、気を付けないと。

 

 あんな神が支配者なのだから、碌なもんじゃない。

 

 まあ、私の行動もすべてお見通しなんだけどね。

 

 ああ、つまらない。

 

 * * *

 

「さて、もうだいぶ離れたよな。サスケさん、今どの辺だい?」

「そうだな。集落もすっ飛ばしてきたから、そう簡単には追ってこられまい。まあ追う気があるならだが」


 ほぼひと月近く移動に費やした。

 大きな変化はない。

 多少の獣には遭遇したし、食えそうな鳥は片っ端から狙っていた。

 

 獣は瞬殺だが、俺がやると食える状態にはならない。

 なので、レベリングを兼ねて俺は脚を狙い、移動できなくする。

 とは言っても、いたずらに痛みを与え続けるのはよろしくない。

 なので、できるだけ早く倒すようにさせているがな。

 

 その後は、カスミ、太郎、そしてリョウのチームで倒している。

 たまに鶴見も参加するが、奴のは何かを飛ばす必要があるからな。

 釘はもったいないし、石もあまり効き目はない。

 

 なんでエアガンなんてスキルなんだろうね。あいつ。

 

「カスミ、太郎。レベルはあがったか?」

「そうだね。パチンコは上がった。スリングに名前が変わってレベル3だよ」

「ぼくは分身が増えたぐらいかな。レベル2だね」

「あんまりあがらんなあ」


 リョウは黙っている。

 そりゃそうだ。今は加護がないんだ。

 そして加護が生えるかどうかはまだわからない。

 

「どうすれば加護がつくんだろう……」

「リョウ、お前はあせるな。基礎が出来上がってないのにそれだけ動けるだけでも十分だぞ」

「でもさ、役に立ってないから」

「そんなことはない。血抜きだって、解体だってお前が中心になってやってるだろう?」

「それはサスケさんもできるよ?」


 自信を失ってるのか?

 若いなあ。まだまだ子どもじゃないか。

 

「経験が違うだろ。それにまだサスケさんに教わってないんだろ? 親父さんの例の奴も」

「うん、落ち着かないと出来ないって。旅の傍らじゃあ基礎体力しかつけられないから、歩いたり、物を運べって」

「それでいいんだよ。一日一日が後で効いてくる」


 まだ、若さがあっていいよな。

 一方、こいつときたら。

 

「ねえ、ヌタさん。僕は役立たずだねえ」

「お前は慰めないからな」

「どうして?」

「良い大人だろうが。お前の役割はリーダーとして考えること、後は回復だろ?」

「そうだけどさ。移動している限りはサスケさんに任せっぱなしで暇なんだよね」


 こいつは拗ねてるだけだな。

 暇って何だよ。

 

「そのうち忙しくなるさ。今はリョウと一緒に基礎体力つけておけ」

「そうだね。歩くのはつまらないけど、色々発見があるからね」

「じゃあいいじゃねえか。俺は昼間はほとんど寝てるからな。夜は一人だし。暇なのは俺の方だ」


 まあ、言うほど暇じゃないんだがな。

 こっそり昭和屋を呼び出して色々話を聞いてるからな。

 

 おかげで無駄な知識が増える増える。

 ワカメぐらい増えたさ。

 

「サスケさんは流石に大人だねえ。僕も見習わないと」

「いや? めちゃくちゃつまらんぞ? 移動中は周囲に気を張らないとならんし、休みは馬たちの世話。夜は馬車の点検。時間があれば予備の部品を作らなきゃならん」

「そうか。大変なんだね」

「だが、リョウを守れるからな。独身の俺にとって、リョウは娘みたいなもんだ」


 色々複雑なんだろう。

 その辺はあえて口を挟まないようにしよう。

 

「というわけで、王子。今後の目標を決めてくれ」

「いきなりだね。まあ、サスケさんとも相談したんだけど、もう少しいくと川があるらしい。その先は湿原、山、そして海方面に分岐する」

「ほう、海か」

「そう。僕としては海も捨てがたいね」


 そうだな。塩が何とかできるのは大きい。やり方はわからんがな。

 

「なので、湿原と海の間を最初の目的地にしようと考えている」

「そんなうまい具合の場所があるのか?」

「いや、道がない方がいいじゃないか」

「あ、そうか。人がいないって可能性が高いからか」


 まあ、昭和屋の情報でこの世界がかなり歪な世界観だということは掴んだ。

 なので、その辺に勝手に住み着いても問題はないようだ。

 

 ただ、人が行き来しないので、商売が出来ないけどな。

 

「サスケさん。実際に候補地についてからにはなるだろうが、その辺から街は近いのかい?」

「どうだろうな。今進んでる道は人の行き来はあるが、少し外れると集落もないからな」

「商売をしなきゃならんからな。人が全く来ないのも考えもんだ」

「まあ、その辺は馬車があるんだ。あんたと俺で商売に回ってもいいし、俺が売りに歩いてもいい」


 サスケさんに任せるか?

 それは構わんが、一人で大丈夫なのか?

 

「まあ、その辺はついてから決めよう」

「そうだな。俺の知らない奴らが住み着いているかも知れん」

「なるほど、そういうこともあり得るのか」

「ないとは言えないだけだぞ? 期待しないでくれ」


 まあ、居たとしても話が通じないヒャッハーも困るからな。

 そん時はそん時だな。

 

 * * *

 

「シェフ。暇だな」

「ポシェット様も仕事ないですもんね」

「君もないじゃないか」

「私はたまに料理の指導してますよ?」

「それは知っているが」


「まあ、昭和屋はともかく、エアガンは何がしたいんだろうな?」

「エアガンっておもちゃですよね?」

「そうなんだろうな。殺傷能力はないからな」

「どうやって光の貴公子を成長させるつもりなのか……」


「光の貴公子って……見たまんまじゃないか。合ってはいるが」

「御者は低級天使の鍛冶屋か」

「彼の仕事が御者って、そんな馬鹿な話がありますか?」

「別にいいんじゃないか? 過去の自分は捨てたのだろうから」


「まあ天使の職を捨てて、堕ちていった私たちがどうこう言う話じゃないですけどね」

「私は今でも一桁ナンバーだからな? 堕ちたのも自分の意志だ」

「本当に? 神の計画じゃないんですか?」

「そんな暇ではないさ、あの方はな」


「だといいんですけどね」


 * * *

 

 暇だな。

 エアガンなんて設定しなければ良かった。


 だが、貴公子との相性の関係で選べるものが少なかった。

 蜃気楼か魅惑のダンス、エアガンの三つしかなかったからな。

 

 それなら一番攻撃力が高そうなエアガンがいい。

 

 ツルミもエアガンの仕組みを理解したのか、空気の代わりに色々な物を試した。

 だが、一番よかったのはワタヌキが出した釘。

 

 もっと殺傷力が高い物を売れと言うのだ。

 本当に使えんな。昭和屋は。

 

「何か文句でも?」

「ぬ、いつの間に背後に」

「それぐらい造作もないことでしょう。私に文句があるなら聞くけれど?」

「いや、別に文句はない。だが、もし聞き入れてもらえるなら、ツルミが成長できるような物をワタヌキに売って欲しい」


 まったく気づかなかった。

 さすがナンバー2。

 

「具体的には?」

「実弾とか?」

「それはもうエアガンじゃなく、銃でしょ?」

「そうだが……」


 俺は考えるのは得意じゃないからな。

 とにかく倒せればいい。


「思いつかん。だが、出来れば頼む。ツルミだけ成長が遅い」

「そんなこともないでしょうに。回復、ああ祝福でしたっけね。あれだけでもそこそこレベルアップしたでしょう」

「そこそこでは困る。それに街を出てから祝福は全く使っていないからほとんど成長せん」

「そんなのは私の知ったことじゃない」


 だめだ。こいつには頭も口も勝てない。

 ついでに言えば力でも勝てないんだがな。

 

「わかった。素直に頼むことにする。いいものを売ってやって欲しい」

「わかりました。ですが、商売しないことにはレベルがあがりませんからね」

「ぐう。まあ、それは仕方ないな。だが、頼んだぞ」

「はいはい。考えておきますよ」


 聞いてくれればいいんだが。

 

 ナンバー2なんて、ほとんど神じゃないか。

 それらしく振る舞って欲しいもんだ。

 

 下っ端をもっと大事にしやがれ。

 

 

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