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鶴見と和狸  作者: きじとら
第1章 目指せ楽隠居
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第三十二話 六人目?


「なるほど。これは聞き込みしてもわからないわけだ」

「マラミュート?」

「王子、良く知ってるな。アラスカンマラミュートだな」


 犬かい。

 確かにこっちでは犬は見かけなかったが。

 いや、どうして犬が飛ばされてきたんだ?

 

「ワフ、お前たちは何者だ?」

「話せるのか?」

「ワフ、お前たちこそ話せるのか?」


 不思議翻訳機能か!

 

「お前は人間? 変身してる?」

「私は犬様だ。見て分からんのか?」

「ああ、そういうことか。チェンジ!」


 獣化して見せてやる。

 

「きゃうーん。お前恐い、やめろください」

「ぐるるるぅ」


 獣化しているときって話せないの?

 不思議翻訳は?

 

「お前は犬だろう?」


 あ、話せた。

 

「はい、犬です。ちっぽけな犬でございます」

「俺はオオカミと……のハイブリッドだ」

「なんですか? 後半が聞こえないのですか?」

「オオカミとタヌキのハイブリッドだ! ギャウ!」


 タヌキと言うのが恥ずかしいのは何故だ?

 いいじゃないか! タヌキだって!

 

「一々吠えないでください……」

「チェンジ! すまんかった。俺は人間だがオオカミとのハイブリッドになれる」

「後半省略しないでください」


 ちきしょう。

 

「まあ、おそらく地球、日本から来たな?」

「うん、そうだよ。散歩の途中、事故に巻き込まれた」

「お前もあの場にいたのか」

「どの場だかわからないけどね。信号と歩道橋は覚えてる。気づいたらこの森にいた」


 俺、王子、犬。四人?中三人があの場にいた。

 となると、カスミもあの場にいた可能性があるな。

 言いたくないなら言わせる必要もないが。

 

「そうか。お前はお前なりに暮らしているようだが、このままここで暮らすか?」

「ううん。飽きた。お前たちはどこにいくの?」

「特には決まってない。だが飯をなんとかしたいとは思ってる」

「ご飯! ついていきます! お願いします!」


 犬め。キビ団子はないぞ?

 

「わかった。今日まで自立出来てたんだから、狩猟能力もあるんだろう」

「動物だけね。人間は襲ってないよ。まずそうだもん」

「お前さ、口調が変じゃない?」

「そう? ぼくは二歳だからね。仕方ないんだよ」


 二歳?

 え?

 

「随分でかいな。種族的なもんなのか?」

「そうじゃない? まあ、ここで無駄話しても仕方ないからさ、馬車に乗せてよ」

「え? 歩けよ」

「嫌だよ。疲れるじゃん」


 こいつ犬だよな?

 散歩大好きじゃないのか?

 

「あーわかった。だがたまには歩けよ?」

「うん、気が向いたらね。じゃあ御者さん出発しよう」

「え? ああ、うん。いいのか?」

「詳しくは次の休憩で話すよ」


 そりゃそうだよな。

 見たこともないでかい犬が言葉を話すんだ。

 普通の人ならびっくりどころの騒ぎじゃない。

 

 現にリョウはさっきから一言も話してない。

 だが、カスミはなぜ黙っている?

 

 * * *

 

 この犬、覚えてる。

 

 あそこで信号待ちをしていた犬だ。

 そして、私はこの犬を助けるために駆け出した。

 

 確実に死んだと思った。

 

 複雑な気持ち。

 

 犬も助からなかったんだ。

 でもまた会えて良かった。

 

 元気?でいいのかな。

 ここまで生きてこられたんだもんね。

 

 私無駄死にだったのか……

 

 まあいいか。

 別に。

 

 * * *

 

 でっかいオオカミだと思った。

 でも、犬というらしい。

 人間のために能力や姿を変えていったってワタヌキから教えてもらった。

 

「ねえねえ、キミは何て言う名前なの? あ、ボクはリョウね」

「クンクン。女の子ね。ぼくの名前は毛の魂の王と書いて『モウコン王』だよ」

「モウコン王? なんかすごい名前だね」

「そうかい? ぼくは嫌いなんだ。だから名前を変えて欲しいんだよねえ」


 え? 名前つけちゃっていいのかな?

 

「ワタヌキ、名前って勝手に変えてもいいの?」

「いいんじゃないか? 本人が嫌がってるなら。本犬か?」

「じゃあボクがつけてもいい?」

「そいつに聞いてみればいい」


 期待しちゃう。

 

「ボクがつけてもいい?」

「いいよー」

「じゃあねー、うーん」


 何がいいかなあ。

 

「あ、そうだ。タロウなんてどう?」

「太郎? 別にいいけど」

「気に入らない?」

「いや、モウコン王よりはだいぶマシ」


 いいのかな?

 

「ねえねえ、ワタヌキ、タロウって名前にしてもいい?」

「お前それアレだろう? この間、馬車で話した物語の奴だろう?」

「うんうん。強い人のことをタロウって言うんでしょ?」

「まあ、あながち間違いじゃあないが」


 この子強そうだもん。

 

「じゃあ、タロウでもいいかい?」

「強い人って意味でつけてくれるの? ならそれでいいよ。今日からぼくは太郎ね」


 やったー!

 

「ねえねえ、タロウも加護とか魔法とか使えるの?」

「ん? 何で知ってるの?」

「だって、ワタヌキもツルミ様もカスミも皆使えるよ?」

「そうか、君は聞いたんだね」


「うん」

「ぼくはね、見えているのは分身。見えないのはシェフだね」

「分身って?」

「ここじゃあできないけど、ぼくの姿がいくつもに分かれて見えるよ」


 すごい!

 

「場所がないとできないから、広い所で見せてあげるよ」

「うんうん、お願いね!」

「いや、お前、シェフって、お前が作るのか?」

「ぼくの前脚で作れるわけないだろう? 馬鹿なの和狸は?」


 口悪いなあ。

 でもワタヌキに強く出られるのもすごい。

 

「なんかさ、シェフを呼べるらしい。ただ対価がないと呼べないから試したことがないんだよ」

「お前……まじか?」

「なにがマジなの?」

「料理人を呼べるなら、完璧じゃねえか!」


 ワタヌキが興奮してる。

 

「そう? 使い方の説明もわかるんだけど、制限があるよ?」

「何だ? 何が必要なんだ?」

「材料、調味料は用意しなきゃいけないって」

「……」


 忙しいなあワタヌキは。

 あ、ツルミ様もカスミもめちゃくちゃ落ち込んでる。

 

「そうだよな。そんな甘い話はないよな」

「まあ、使ったことないから試してみれば?」

「今はいいよ。飯の時に試そう。少しなら金もあるし……」

「ぼくは犬用のおやつでお願いね」


 なんだろう。

 雰囲気が重くなっちゃった。

 

「まあいいじゃない。タロウは強そうだし。すごい味方になるよ!」

「うんうん。ぼくは強いよ。和狸の変身には負けるけどね」


 アレは反則だもん。

 ボクだって怖いもん。

 

 * * *

 

 どうすりゃいいんだ? この状況。

 ツルミとカスミはまあしょうがない。人の形してるからな。

 だがワタヌキは人ですら怪しい。

 

 今度はオオカミ、いや犬だと言う。

 確かに野生のオオカミを幼い頃から飼えば、人に懐くとは聞いたことがある。

 だが、実際に見たことはない。

 

 それにオオカミよりも図体がでかい。

 なのに顔は幼い。

 まったくわからん。

 

 極めつけはしゃべる。

 オオカミは普通話さん。

 

「なあ、別に構わないんだが、そろそろ俺にも事情を説明して欲しいんだが……」

「そうだよな。さすがに動物が話すまで来たらサスケさんだって知りたいと思うよな」


 まあ、話したくないなら別に構わんのだが。

 興味はある。ありすぎるぐらいにある。

 

「俺も加護のことを話す。その代わりと言ってはなんだが、そっちの事情も教えてくれないか?」

「サスケさんの加護? いいのかい聞いちまっても?」

「あんたらに比べりゃあ屁でもないことさ」


 俺の鍛冶なんて加護は別に自慢にもならん。

 ちょっと手先が器用で、鉄だのの加工が少しだけうまいだけだ。

 この人らに比べたらなんてことはない。

 普通、普通。

 

「わかった。実はな……」


 ワタヌキとツルミでかわるがわる説明してくれた。

 最初は意味が解らなかった。

 

 別の国と聞いていたが、別の世界?

 それは天国とか地獄じゃないのか?

 天使様とか堕天使まで出てくるし。

 

 何度も説明を聞いて、ようやく理解した気がした。

 

「うん、まあ、そういうことならわからんでもない」

「結構かかったな」

「すまんな」

「いや、あんたのせいじゃない。実際どうなんだ? 別の世界から人が来たなんて話は聞いた事ないか?」

「ないな。まあたまにすごい力を持った王や、盗賊なんかが出ることはあるが、それだって大昔の話だ」


 眉唾もんの話だ。

 何千人もの敵をいっぺんに倒したとか。

 目を見ただけで石になったとかな。

 

「そっか。まあいいか」

「事情はわかった。あんたらが飯にこだわるのも何となく理解した」

「うん、正直そろそろ限界だったんだよ」


 食い慣れないものを食い続けるのは辛かろう。

 俺だって野盗に食料を奪われた帰り道、命だけは助かったという安堵と、まともな飯が食えない辛さで厳しいこともあったからな。

 

 まあ、この四人?は悪い奴らじゃなさそうだ。

 

 それだけは、リョウにとって幸いだな。


 

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