第二十三話 JKのJOB
「で、連れて来たと」
「あんたの頭すごいな。天然?」
「ハゲに天然も人工もないだろ?」
「おばさん、ツルミ様を馬鹿にするな」
「ウチはおばさんじゃない!」
皆、好き放題話す。
「まあ、整理しよう。君名前は?」
「ウチは神宮寺。神宮寺カスミ。ピッカピカのJK!」
「なるほど。どうしてここにいるかは後で聞くね。これからどうしたいか教えて欲しい?」
「どうするもこうするも、とりあえず生きていかなきゃとは思ってる。だけどどうしたらいいかわからない」
ふむ。流れから行けば連れて行くべきなんだろうが……
「そっか。で、食事は作れるの?」
「こっちのヒゲのおっさんにも言ったけど、目玉焼きとおにぎりぐらいなら……」
「うんうん。家庭科はサボっちゃだめだよ?」
「わかりました……」
食事は期待できそうもないなあ。
となるとあとは職業だか、魔法、特技なんだけどなあ。
「とりあえず、こっちも自己紹介をしなきゃね。僕は鶴見、彼は和狸、この子はリョウ。これから遠くへ旅に出る。君はどうする? ついてくる?」
「男二人に女の子二人かあ。でもおっさんだからなあ」
「ん? 今何て言った?」
「おっさんだからなあ?」
「いや女の子が何人だって?」
「二人」
「誰と誰?」
「ウチとリョウちゃん?」
リョウ?
え?
「リョウ、お前、女だったのか?」
「何だよワタヌキ。ボクは男だよ!」
「いや、でも、だって」
「リョウちゃん。隠さなくてもいいよ。ウチはわかるから。大変だったね。こんなおっさんに囲まれて」
さて、どういうことかな?
「口入屋は男だって言ってたよね?」
「ああ、間違いない」
「服装も男の子のものだったよね」
「金物屋で引き取ったやつも全部な」
なるほど?
「リョウは女の子という自覚はあるんだね?」
「ツルミ様……ごめんなさい。でもボクお父さんから男の子として育てられてたので」
「そうか、確かにお母さんの手伝いをしてるとも言ってたな」
間違いない。洗濯とか手伝っていると言っていた。
「その方があの街では安全だからって言われて……」
そういうことか。
だったらサスケ氏も心配するのがよくわかる。
こんな男二人に連れて行かれるよりは、手元に置いた方が安心だからな。
「そうか、済まなかったなリョウ。気づいてやれなかった」
「いいえ、ボクこそ正直に言えなくて。ごめんなさい」
「それはいいんだ。君のお父さんの考えで間違いじゃない。立派な両親だったね」
リョウの頭を撫でてやる。
うれしそうに、そして悲しそうにしている。
「感動しているとこ申し訳ないんだけど、ウチもついて行っていいの?」
「うーん、どうすっかなあ。お前ジョブはなんだ?」
え? いきなりそれを聞くの?
リョウもいるのに?
「そ、それは」
「じゃあ、お前を売りに出すとするか。金貨一枚回収しなきゃならんからな。後は自力で頑張れ」
「そんなあ……」
鬼だな。ヌタさん。
「ウチのジョブは……パチンコ」
「なに? ジョブがパチンコ? 確変とかの?」
「確変は知らん。でも見えてるのはそれ……」
「魔法だか特技は言わなくていい。そうか。じゃあジャンジャンバリバリ出して頑張れよ」
カスミが衝撃の顔を見せている。
この子も面白い子だなあ。
「あんたらは?」
「俺たちは教えない。そんな義理もない。教えて欲しかったら金貨一枚返せ」
「そんなあ……」
さっきとは違う悲しい顔、でも愉快な顔。
僕たちのことは、リョウの前では言えないからね。
「まあ、いいよ。今日のところは泊まっていくと良い。ただし、ベッドはそこ。食事は多分大丈夫だと思うけど、後で確認する。別料金なら追加で請求するからね?」
「がびーん」
「口で言っても納得してもらえないかも知れないけど、さすがに子どもや女子高生に手を出すことはない」
「当たり前だ。俺たちにだって大人の矜持はある。それにその程度の胸部装甲じゃな」
「失敬な! これから成長するの!」
「はいはい。頑張れよ」
とりあえずは人数が増えることを宿の奥さんに言ってこないとな。
僕が行くか。
「カスミ、ついておいで。宿屋の奥さんに人数の事と食事の相談をする」
「面倒かける……です」
「ヌタさんは休んでて。リョウも少し休憩しておきなさい」
「オーケー」
「はい。ボクのベッドは今まで通りでいいですか?」
「当たり前だ。新入りは一番端な。荷物をどかさんといかんなあ。面倒くせえ」
と言いつつ、もう動き始めてる。
「さあ、行こう」
* * *
食事までどうするかな。
まだ結構時間はある。
まあ今後の予定だな。
カスミの分の都合もつけなきゃならん。
フラッシュ司祭とカスミが帰ってきた。
「宿の代金は変わらないって」
「そうか、助かったな。スマイルマン」
「うん。効き目が良くなってるね」
「あんた、一体何したんだ? あの奥さん態度が急に変わってびっくりしたよ」
スマイルHだからな。
目薬じゃないぞ。多分。
「そうだね。その説明はまだだ。先に馬車の件を話す。ヌタさん、御者と馬車はもしかしたら手配がつきそうだよ」
「お、良く決められたな。費用は?」
「まだ決まったわけじゃない。リョウの古い知り合い、正確にはリョウの両親の幼なじみっぽいんだけど、その人がリョウを案じてる」
「詳しく話せ」
事情を聞く。
「そういうことか。まあ半々よりも多少分はよさそうだな」
「そうだね。ということで、費用の件も含めて、そのサスケ氏待ちだね」
「明日の午前中ぐらいまでなんだろ? 決めるのは。なら慌てることはないな」
「うん。後は資金面とジョブの件をどうするかだね」
リョウには話してもいいか。
加護のことも知ってるしな。
カスミはよくわからん。
だが、こいつも子どもだ。
面倒を見てやらんとな。
「鶴見。話すけどいいか?」
「名前で呼ばれるのは久しぶりだね。あ、鶴見様って呼んでるか」
「ハゲにするぞ? 略称」
「何でも構わないけど、話してもいいんじゃないかな」
大体同じ考えか。
「カスミは事情がわかってるだろうから、とりあえず黙って聞いてろ」
「うん?」
「リョウ、俺たち、まあおそらくカスミもなんだが、別な国から来たんだ」
「はい、それは聞きました」
そうだな。確かにそこまでは何となく話してある。
「そこから来た奴は、多分、全員加護を持っている」
「生まれながら?」
「いや、ここに着いてからだと思う。まあその辺はいい」
「わからないけどわかりました」
「カスミはわけのわからない、『パチンコ』って加護がついてる」
「俺は『獣化』という加護、鶴見には『貴公子』という加護がついている」
「ツルミ様はお坊様じゃないのですか?」
「頭は坊主だが、ジョブは違う。貴公子なんだそうだ」
「え? ちょっとよくわからないです」
そうだよな。
職業=ジョブじゃない。
加護=ジョブでもない。
だが、それ以外に伝えようがない。
「まあ、本当の意味では俺たちは全員無職だ。だが、加護がついている。鶴見はその加護で祝福ができる」
「祝福ってお坊様が祈ってくださるものですよ? 普通の人にはできないですよ?」
「まあ、特別なんだ。鶴見は特にな」
眩しいぐらい輝いている男だからな。
俺は大丈夫。
爺さん連中はふさふさだった。
と思う。




