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鶴見と和狸  作者: きじとら
第0章
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第二話 和狸と鶴見


 俺は和狸。

 気づいたら森の中にいた。

 

 傍らには顔の整った男。頭髪はまったくない。

 はじめは宗教系の人物かと思ったが、どうやら違うらしい。

 遺伝なのか?

 まあ、そこはいいや。

 

 色々と情報交換をした。

 日本人であること。

 気づいたら俺と同じ場所にいたこと。

 詳しい記憶がないこと。

 

 職業なのか魔法なのかわからないが、変な特技を使えること。

 

 だが、俺はすべてを話したわけじゃない。

 

 奴が何者で、今どんな状況かわからないのに、すべてをさらけ出すのは阿呆のすることだ。

 生憎そんなお人よしではない。

 

 俺の秘密と言っていいかわからんが、言ってないことは……

 

 もう一つ魔法が使えるということ。

 

 日本での記憶があること。

 

 なんとなく予見めいたものを感じること。

 

 あえて鶴見に「俺は嘘をつかない」と断った。

 それは嘘をつかないだけで、すべてを話すとは言っていないということだ。

 

 それに、俺がそれだけ話していないことがあるんだ。

 奴だって似たようなもんだろう。

 

 ということは、お互い信頼しきっていない。

 まあ、見知らぬ奴にすべてをさらけ出すほど間抜けじゃないのは良い傾向だ。

 

 少なくとも奴も俺を警戒している。

 まあ、どこまで二人で居させられるのかわからんが、機会があれば話しても良いとは思う。

 

 それよりも、だ。

 まずはここが何処かを知らなきゃならない。

 

 おそらく現代日本じゃないんだろう。

 

 少なくとも俺は人口の多い都市にいたはずだ。

 よほど山奥でない限り、人の生活の痕跡がないというのはおかしい。

 

 いや、日本は狭いようで広い。

 割とあるかも知れんが、電線も、飛行機の類も、車の音もしないというのはない気がする。

 

 とにかく道さえあれば、魔法でバイクになって、奴を乗せればいい。

 さっき変態した時に自分の意志で動けることは確認済みだ。

 

 奴はバイクに乗ったことがないと言ったが、俺が動ければ問題なかろう。

 ガスもいらないようだし。

 理屈はわからんが、おそらく俺の腹具合と関係しているのかもな。

 

 それに今は意味をなさないが、魔法はまだ使える。

 人とさえ出会えれば、そっちも役立つだろう。

 

「鶴見」

「なんだい?」

「腹減らないか?」

「うーん、どうだろう。まだそんなでもないかな」


 俺も似たようなもんだな。

 トイレが必要な状況でもない。

 まあ、必要だとしても男同士だ。

 気にする必要もない。


「果物とかないかと思って、見てはいるんだけど、特になさそうだね」

「上を見ながら歩いていると思ったら、そんなもん探していたのか」

「うん。お腹は空かないけど、そろそろ喉が渇いたからね」

「たしかに」


 水音も聞こえてこない。

 小川もないのかも知れない。

 果物か。目の付け所としては悪くないな。

 

「そっちは見てなかった。俺は人か道を探す。お前は果物とか水の方に気を配ってくれ。手分けしよう」

「そうだね。道とかさっぱりわからないから、見える範囲で探してみるよ。季節的にはありそうだけどね」


 ほら、直前での記憶はないと言った。

 思い出せないハズの記憶。日本での季節。

 俺も覚えている。今は夏だ。

 冬や春先よりも果物を見つけやすい季節だろう。

 

「まあ、任せる」

「期待しないでね」


 ん、待てよ。俺が聞かなかったから答えなかったのか?

 あー面倒くせえ。

 俺にそんな難しい駆け引きとかさせるんじゃねえ。


 とにかく今は、敵じゃないことを期待したいね。

 俺は。

 

 * * *

 

 彼は気づいてないのかな?

 僕は彼を知っている。

 

 何も言ってこないというのは、しらばっくれているわけでもなさそう。

 本当に知らないのか、覚えていないのか。

 

 まあ、それならそれでありがたいけど。

 気づいたらどうなるか。まあいいか。

 

 さて、いきなり声をかけられて驚いたけど、果物なんて探していない。

 見つけたところで、安全なのかなんてわからないし。

 こんなところでお腹を下すのはイヤだ。

 

 トイレットペーパーもないのに。

 

 まあ、一応果物っぽいものを探すフリをして、考え続ける。

 

 彼には言わなかったが、僕はもう一つ魔法?を使えるようだ。

 「エアガン」というらしい。

 

 らしいというのは、頭の中で思い浮かぶだけで、貴公子 LV01のような視界の表示がないからだ。

 もし、そう思い込んでいるだけなら僕は痛い奴になっちゃうけど。

 

 どこかで試したいが、彼もどうやら隠し事をしているっぽい。

 

 まあ、嘘はつかない、とわざわざ断るぐらいだ。

 すべてを話すと言ったわけじゃない。

 

 僕だって全部話せと言ったら話したかも知れないけど、彼は隠しておきたかったようだし。

 無理やり聞くのも違う気がしたからね。

 

 さて、彼が僕を覚えていないのなら、これからどうすべきか。

 

 正直に話してお互いの立場を明確にすべきか。

 

 怒るかな?

 

 とりあえず今は人里に出ることだけに集中しよう。

 ついでに果物があればいい。

 

 本当に少し喉が渇いてきたしね。

 

 

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