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鶴見と和狸  作者: きじとら
第0章
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第十一話 案内人


「おはよう、ご主人」

「お二人とも、お早いですね」

「ああ、昨日紹介してもらった口入屋に顔を出してみる」

「なるほど。早い方がいいですね。食事は戻られてからにしますか?」

「それで頼む」


 昨晩、宿屋のご主人に紹介された口入屋へ向かう。

 僕はよくわからないが、ヌタさんによると人の斡旋をするところらしい。

 ギルドじゃないって怒っていたけど、僕にはさっぱりだ。

 

「お、あそこか?」

「ご主人の言ってた通りの店構えだね」


 人を模した看板が掲げられている。

 未だに文字をみない。

 気づいてないだけだろうけど、早めに確認しておきたいね。

 

「誰かいるか」

「あいよ。あんたらは?」

「旅の者だ。宿屋の店主の紹介で案内人を探している」


 顔の厳つい親父さん。


「ふむ。どこまでだい? 期間は?」

「とりあえず領主の街を目指している。そこから先も検討中だ」

「女がいいか? 荷物持ちや露払いが必要か?」

「どちらでも構わない。ただあまり金はかけられん」

「なるほどな。ちょっと待ってな」


 店の奥に引っ込む。

 

「今すぐなら、こいつしかいない。数日待つなら声をかけては見るが長期間は嫌がられる」


 そう言って連れて来たのは、一人の子ども。

 少女か? 少年か?

 髪で顔が隠れているのでわからない。

 体はやせ細っている。

 

「子どもじゃないか」

「そうだ。金はほとんどかからん。ウチの取り分だけでいい。こいつは飯を食わせてやってくれればいい」

「そりゃあ格安だが、事情があるんじゃないのか?」

「ある。二親とも死んだ。知り合いもいない。余所から最近ここに移り住んだからな」

「それは……だが案内できるのか?」

「問題ない。元々領主の街の近くに居たらしい。徒歩でも馬車でも一本道だ。領主の街ならこいつでも案内できる」


 痛ましい。

 だが、この子は何も言わない。

 

「この子にしましょう」

「いいんですか?」

「いいんです。君、名前は?」

「……」

「おい、聞かれてるんだ、答えろ」


 店主が子どもを責めたてる。


「店主、構わない。そうだ、いくら支払えばいい?」

「そうだな。うちも持て余していた。預かっているだけで食事も必要だからな」

「で、いくら払えばいいんだ?」

「そう睨みなさんな。500でいいよ。うちでは使い物にならんからな」

「ヌタ」

「これでいいか?」

「おう、丁度だな」


 少し怯えているのか?


「この子の衣服などは?」

「ああ、食事の費用の代わりに売り払った。金物屋にいけばまだ残っているかも知れん」

「そうか。わかった」

「店主さん、取引はこれで終わりかな?」

「ああ、もうそいつはあんたらのもんだよ」


 子どもを物扱いか。


「では、これで。ありがとう」

「こっちこそ助かったよ」


 なるべく早くここを立ち去りたい。

 気分が悪い。

 

 * * *

 

 子どもを引き取ってから、王子様の機嫌が悪い。

 宿屋に戻るまで一切口を開かなかった。

 

 子どもも口をきかない。

 話せないわけではないと思いたいが。

 それだと案内人にならんからな。

 

「ご主人、申し訳ないが今日からこの子も泊まることになった」

「おや、その子は?」

「ああ、口入屋さんで紹介され、私たちが引き取った」

「そうでしたか。あの野郎。あとで文句言っておきます」

「構わないで。あの店には祝福はしないから」


 こいつ平然と「祝福」を持ち出した。

 自分でわかってないものを使えるもんとして利用している。

 それとも気持ち的な何かなのか?


「それで申し訳ないんだが、料金はどれくらいかかる?」

「いや、そういった事情なら宿泊代は今のままで結構です。ただ食事だけは一回10だけもらいやす」

「勿論、たっぷり食べさせてあげたいからね。とりあえず彼の今朝の分は別で払う。宿泊代と合わせて130でいいかい?」

「ええ、確かに頂戴します」

「では済まないが、この子の分の食事も頼むよ」

「わかりました。ベッドは増やせませんが、布団はあとで部屋に持っていきやす」

「色々済まないね」


 そのまま食堂のテーブルにつく。

 

「今は聞いてくれるだけでいい。返事はしなくて構わない」


 ゆっくりと語りかけるように話す。


「食事が済んだら、部屋に戻って少し事情を聞きたい。悪いようにはしない。だから安心して」


 子どもの様子をうかがう。

 泣いているのか?

 

「大変だったね」

「お坊様。ありがとう」


 礼を言えるのか。

 偉いもんだ。

 

「これからは何も心配はいらないよ」

「……」


 こいつがどんな苦労してきたかわからん。

 だが、大変だったんだろうな。

 

 しかしハゲリンは感情移入しすぎてるな。

 情報を聞いたら捨てなきゃならんのだぞ?

 大丈夫か?

 

「おい、ハゲ司祭」

「わかってる。だが、今はこの子を優先させて欲しい」

「まあ、お前に任せるが、くれぐれも目的を忘れるなよ?」

「大丈夫」


 本当かよ?

 まあ、俺もこの子に思うところがあるが、まずは俺たちだろう?

 人の世話をしてる場合じゃない。

 

 * * *

 

 父さん母さんが死んで、いろんな人が家に来て、家財道具を持って行った。

 ボクはその日のうちに口入屋に連れて行かれた。

 借金の肩代わりをしろと言う。

 

 わけがわからなかった。

 

 泣く暇もなく毎日店の手伝いをさせられた。

 食事は一日にパン一つ。

 たまにスープが出る。

 

 夜寝るとき、二人の顔が浮かんでくる。

 

 悲しかった。

 でも泣けなかった。

 わからない。どうしてこんなことになっているのか。

 

 これからボクはどうなるのか。



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